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そのアルカナは、死神。〜共感不可だらけのデスゲーム〜  作者: 宵月玲


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38/50

またたく灯

まぶたを開けた。

劇場から帰宅した後、観劇の準備を進めることに。

観劇用の双眼鏡じゃろ、のど飴じゃろ、目薬じゃろ、はてさて、……他にもあったかの?


日が進むにつれ、期待と不安は増すばかり。

ああ? わしが出演するのではないのに? 

はっ! そうじゃよ。娘の失敗した時の映像ばっかりが夢に出てくる。怖いんじゃ。何があるか、わからんから。

だからのう。……本番の日は怖いんじゃよ。

こればっかりはわかるまいて。


酒の力を借りて、不安を紛らわす。

もう、明日が本番の日。

今日はまさしく、運命の夜じゃな。

ホッピーをかき混ぜるマドラーにも力が入るわい。


ふと、手に取る。

今まで避けていた台本を。

先日、読み漁った台本達の中で1冊だけ、避けていた台本を。


作者、泉鏡花。

タイトル、『天守物語』


何度も、何度も、そらんじた。 

そして、涙割りのビールを飲み干した。

それが、役者としてもがいていたわしの証だった。


ゆっくりと、読み返す。

あの時、もっとこうしていれば……

もっと、相手の台詞をしっかりと受けることが出来ていれば……

後悔ばかりが浮かんでくる。

それをするのが怖かった。

振り返るのが、わしは怖かったんじゃ。


最後まで読み終えて、ため息ひとつ。

何度読み返しても、本当に深い。

台本を閉じて、棚にしまおうと立ち上がった時。


ーーー1枚のカードが。

台本から零れ落ちた。


拾い上げると、それはタロットカード。

木の上? いや、下か?

英語が書かれているカード。

一瞬、考え込んだ。

たしか、これは首吊りの絵ではなく。  


カードを逆さにしてみた。

記憶が蘇る。

ああ、これは。逆さ吊りされている絵。

ハングドマン。

吊るされた男のアルカナ……


わしは、思い出していた。

たしか、劇団の仲間と一緒にタロット占いを……いや、タロットカードが小道具で出てくる戯曲だったか? ……わからん。どっちかだったと思うが……


尽きない疑問。

だが、それよりも。

何故、このカードがこの台本に?

誰かが挟んだのか? 

いや、何の為に?!


知るか! わかるかそんなもん! 

多分、あ、あれじゃ! わしが酔っ払ってか、若い頃にいたずらでタロットカードを劇団の仲間の台本に挟んだんじゃ、1枚づつ!


……有り得なくはないが、無理がありすぎるわい。

昔のわしが、あまりにも荒唐無稽すぎる。

しかし、これも、何かの縁じゃな。


わしは『天守物語』の台本にこの吊るされた男のカードを改めて挟んで、入れた。

そして観劇用のバッグには双眼鏡などの他に台本も入れた。


なあに、これも何かのゲン担ぎじゃな。

タロットカードには不思議な力があるじゃろ?

一種のお守りじゃ。

おっと、そうそう!

忘れるところだったわい!


しっかりと、舞台のチケットを取り出し、日付など確認し懐にしまう。

これがないと、入らんからのう。


だからのう。

夜に準備を終え、さあ寝るかといったところで。



ーーー急に、ブレーカーが落ちた。



あとは、わかるじゃろ?


わしは、娘の舞台を観ることは、叶わなくなったんじゃ。



まぶたを閉じた。

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