刺青とフルーツ牛乳
書いていると行きたくなります。
「お〜、いさおちゃん。今日も早いね!」
「何言ってんの。シゲちゃんの方が早いだろうに」
今日は碁会所で過ごした後、銭湯へ。
家風呂じゃあなかなか疲れが取れんからのう。
それに、年寄りだと割引がきくんでな。
「あっ、シゲちゃん石鹸ちょこっとちょうだい」
「はいよ」
人懐っこい笑顔を浮かべるシゲちゃんに石鹸を渡すと、シゲちゃんは勢いよくタオルに石鹸をもみ込んでいく。
そんな身体をゴシゴシ磨いているシゲちゃんを尻目に、一足先に湯船へ。
「…………ふぅー。あー。生き返る〜」
「これぞ命の洗濯!ってやつですなぁ」
「……ちゃんと洗ったんかい?」
「相変わらず厳しいなぁ、いさおちゃんは」
痺れる熱さの湯船から、少しづつ体に馴染む温度になっていく。
ちょこんとタオルを頭に乗せてくつろぐシゲちゃんを見ていると、なんだか色々とどうでもよくなってしまった。ま、そんなもんじゃろうに。
「いさおちゃんいさおちゃん、聞いたよ! この前、でっけえの、釣り上げたんだって?!」
「……違うぞ。大物と思いきや、肩透かしを食らっただけじゃ」
「またまた〜隠さんでも」
「…………はぁ」
ニヤニヤしながらシゲちゃんが寄ってくる。
シゲちゃんの背中の刺青、達磨ーーーだるまも、な〜んか、笑っている気がするのう。特に目が。
「……ま、その話はおいおいでええじゃろ。そろそろ、サウナに行こうか」
「そりゃあないぜ、いさおちゃん。わしあんまり強くないんじゃって」
渋るシゲちゃんを連れてサウナへ。
ん? ああ、わしはきっちり3セット往復して整ったぞい。
シゲちゃんは、2セット目で逃げちゃったがな。
「……あれ、いさおちゃんは牛乳じゃあ?」
「悪いか。わしはフルーツ牛乳が好きなんじゃ」
元刑務官と元極道の不思議な取り合わせ。
出会い? ま、おいおいな。
話してたら湯冷めしちゃうわい。
私はフルーツ牛乳派です。




