予言
選ばれた運命
アルマのお見舞いから数日。
すっかり元気になったアルマは、風邪でダウンした時間を取り戻そうと、教室ではいつもよりテンション高い。いや、落ち着いて。
そんなこんなで、修学旅行に不平不満を爆発させていたアルマはもういない。
少しだけホッとする。
いやいや、京都に着いたら着いたでまた何かやらかしそうな気もするけど……お願い。杞憂に終わって。
下校時間になり、アルマと途中まで一緒に帰って、うん。ようやく一人きり。
家まであともう少しというところまで。
そんな、街角。
「あのぅ、いいかしら」
呼び止められた。
「ごめんなさい、落ちてないかしら? まわりに」
白杖を握った、おばあさんに。
「えっと、何を探していますか?」
「ポーチよ。紫色の。見当たらない?」
困り顔で白杖を地面にコツコツ当てている。
「えっと、……どこだろう」
道路にはないし、ひょっとしたら……道端?
うーんと。…………これかな?
「これですか?」
「ああ、これよ! ありがとうねぇ。助かるわぁ。おばさんの商売道具なのよぉ」
探したポーチを渡してほっと一息。
「見つかって良かったです。それでは」
「ちょっと待ってちょうだい! ねぇ、これを見て?」
おばあさんが慌てて呼び止めて、ポーチから白いハンカチを取り出す。
え、なに? ……何が始まるの?
「おばさんね、こう見えてちょっとした占い師なのよ。今、あなたは何に悩んでいるのかしら?」
「え? べ、別に……何も」
「嘘おっしゃい。いいこと? あなたの悩み……それは、何?」
「いや、本当にないんですけど……」
え? なんで?
私、困っているおばあさんを助けたら、なんで、問い詰められてるの?
「……あなた、どこか旅に行く予定はあるの?」
「あっ、はい。学校で、えっと、京都に。修学旅行に」
「あらそう! じゃあ旅先でのことについてがいいわね!」
白杖を持っていないもう片方の手で、器用にもハンカチが手の中で踊り出す。
そのハンカチの舞はやがて止まり、呆然としている私の手のひらにハンカチが舞い降りた。
「ハンカチを持ち上げてみてちょうだいな。あっ!そっとね。そおっと」
言われた通りに、ハンカチをそおっと、持ち上げた。
するとそこには、1枚のタロットカード。
うん? なんの模様だろう……?
「魔術師。それも逆位置ね。ふふふ。これはこれは」
タロットを指でなぞりながら、おばあさんがカラカラと笑う。
え? ……魔術師? それに逆位置? えっと、なにそれ……こわい。
そもそも、おばあさん、目が見えていないんじゃあ?
「修学旅行は、京都だったかしら?」
「は、はい」
「そう……これも因果かしら……」
丁寧にハンカチを畳むおばあさん。
手のひらにある魔術師のカードを返そうとするも、止められた。
「それは記念にあげるわ。今までね……色々な人達の想いを背負ってきたタロット。お守り代わりだと思って大事にしてちょうだい」
「ま、待ってください! あの、このカードの意味は?」
それには答えず、白杖でゆっくり、ゆっくり歩いていくおばあさん。
私はしばらく、呆然としていた。が、ふと我に帰り、道路を渡るも、いない。
おばあさんは、もういない。
アルカナの運命




