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そのアルカナは、死神。〜共感不可だらけのデスゲーム〜  作者: 宵月玲


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10/50

失われたこだま

人混みをかき分けて。

土砂降りの中、ずぶ濡れで帰宅した。

イライラしながら服を脱ぎ捨てる。

黒のチノパンが中々脱げなくて余計イライラする。

部屋の中は何も変わっちゃあいない。

タンスの上にあった物をぶちまけちまったそのままだ。


あー、タオルどこだよ。

タオルで髪を乱暴に拭き、そのまま冷蔵庫から麦茶を出して、飲み干す。

イベント会社もケチだなぁ、マジで。

弁当もしょぼいし、お茶もペットボトルじゃなくて紙パックだし。

冷遇してんじゃねえっつーの。

どうせ出演者とか関係者の弁当は豪華なんだろ? ケータリングも凄いんだろ?

あー、うぜえ。

大体芸能人とかイベント関係者はな、ファンの声なんざどーでもいいんだよ。

欲しいのは、ちやほやじゃねぇの。

仕事だよ。し、ご、と。

それも、次に繋がる、でっかい仕事だよ。

だからファンが集まる日程には来ないで、業界関係者が来る日程にしか来ないんだよなぁ?


あー、打算。打算。はいはい打算。 

気持ち悪いなぁ。うぜえなぁ。

所詮、ファンは素人。お客様。お財布。

お偉いさんに尻尾振ってんじゃねえっつーの!

今日のことを振り返るたびにイライラしっぱなし。


……ふと、死神のタロットカードに目がとまった。

朝、タンスから落ちたタロット。

正位置ではなく、逆位置で落ちてきたタロット。


「今日一日、別に特別なことはなかったぜえ? 死神さんよ」


そう、何もなかった。

あるのは、精々雨になったくらい。

異世界にもいかない。

ギルドで荒くれ者に足を引っ掛けられて因縁をつけられたりもしない。


そんなもんだよ。

現実なんてのは、さ。


麦茶の味は、もうしない。

休憩室までの往復、10分。

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