皮肉屋、恋愛相談を受ける
「神崎君。なんで後藤君もついてくるの?」
七瀬が嫌そうに言う。確かに空気読めないやつだよな。一体何故?
七瀬に用でもあるのか? いや、俺になんか言いたい事があるとかないとかトイレで言ってたな。
興味が皆無だったからつい忘れるぜ。
「相談が俺にあるらしい。」
「なら先のって上げなよ。私あそこのメイドカフェのとこで座って待ってるから。」
彼女が指をさして言う。
「分かった、行ってくる。忘れてなければ戻ってくるから。」
「いや、忘れないでよ。」
苦笑いした七瀬に謝り、俺もメイドカフェに行こうとしたが、後藤に何処に行くのと呼び止められた。
「後藤。相談の前に俺の相談のってくれ。」
「なんだ?」
「俺の苗字だが、生徒全員知ってる。友達いないはずなのに何故だ? 恐怖心が沸いている。」
「そりゃ学年順位1位だからだ。それで俺の相談なんだが。」
「フフフ、今のは相談のきっかけだ。本当の相談はここからだ!」
「まだあるのか? 良いぜ話してくれ。」
後藤は笑顔で親指を立てて言う。
「この学校変なやつが多くないか? 例えば、男4人なのにデートしようぜとか言う不良がいるんだ。」
「1番頭おかしいお前が言うのかよ。変なやつには変な奴が集まるんだろうよ。」
「じゃあ後藤も変なやつと言うことになる。つまり関わってはいけない人物。」
「いや、なんでだよ! 飛躍し過ぎ!」
頭を抱えて後藤が嘆くように言う。
「ふぅ。俺の相談は終わったし、戻るか。」
「いや、俺の相談聞けよ! なんでだよ!」
「なら話してくれ。」
「ああ、察しの通り恋愛の話だ。実はつい先日、告白されてな。しかし、俺は好きな人がいるんだ。」
「それでどうするべきかと思ってな。告白してくれた人にそれでも付き合うべきか?」
重い! 想定してた! 重っ!
なんで俺なんだよ! そんなのっ!
俺がそのどうすべきか決めたら、お前の人生に大きく関わるじゃないか!
例えばその子と付き合えって言って結婚まで行ったら、俺はお前の人生背負う事になるんだぞ! 嫌だ〜なんで相談したの?
生きた年齢=恋愛歴なしの俺にそんなの相談って…そうだ、丸投げ…いやいや間違ってるって言うか。
「その相談ならさ、俺より先生の方がいいと思う。恋愛経験豊富だろうし。」
「いや、俺はお前が良い。神崎の意見が聞きたい。」
はっ? まさかの坂道発進で暴走して脳がまともに機能しなくなってるだろこいつ!
それともなんだ…その好きな奴ってまさか俺か? それなら納得いくし、そうであって欲しい。断って終わりだからな!
「お前が良いって俺に告白してるみたいだろ。俺の意見なら、好きなやつにさっさと告白して、振られてそいつと付き合う。」
「成功したらその子は振る、これだろ!」
「そうなんだけどな、それって卑怯と言うか、ちょっと悪くないか?」
「おいおい、恋愛ってのはきったねぇんだよ。勝者になるには、汚い真似出来ないと勝てないんだ。」
「両思いだったらどうする? その子を振ったあと気になったら?」
俺なんでこんな真面目に語ってるんだ?
それはこいつの人生背負うからか。好きな子に振られて、その子と付き合おうと思ったら、罰ゲームってなると面白い。
この後藤の泣き叫ぶ顔…見たい! 見たいが、こいつは泣かずに落ち込むだけだろう。つまらんやつ。
「好きな子に告白しろってのはそうだが、それを知った子はどう思うか、考えてないだろ?」
「滑り止めじゃないんだぞ?
ちょっと合理的と言うか冷酷じゃないか?」
「はぁ? 好きな子に告白したのバレて後藤のこと嫌いになるならその程度。」
「つまり問題はない。滑り止めで付き合って見て好きになれば良し。ならないなら、振れ。」
「いや、女の子の気持ち考えてるか? 俺の事大事なのは分かるし、嬉しいが。」
愚痴愚痴とうるさい男だ。
後藤も好きな女子いる癖に、告白してきた女子に好きな人いるって振らない、優柔不断な悪い男じゃないか。
まるでこいつ見てると、鏡を見てるようだ。
ふふ、こいつとは美味い…かに味噌が飲めそうだ。あんまり好きではないが。
だとすると上手いフカヒレスープか?
飲んだ事ないが。良い直そう。
お前とは美味い海水が飲めそうだ。
「さて、俺は七瀬待たせるから行くわ。またな。」
「いや、待ってくれ。まだ結論出てない。」
後藤の呼び掛けに俺は、深呼吸を一度して、彼の肩に手を置いた。
「そんなのお前が決断しろよ! 人生の選択肢、全部人に選んでもらうつもりか?」
「そんな大人になって社会出て、指示待ち人間にでもなるつもりかよ! そんな男に女性が惚れると思ってるのか?」
「目を覚ませ。お前には、そうなって欲しくない。アドバイスはした。最後は自分で結論だせ!」
後藤が目を瞑り、そして息を吐いた。
「分かった…そうだよな。俺が選ばないといけないよな。」
当たり前だろ。俺に選ばせんなよ。はぁ、助かった〜。俺そんな重荷背負いたくないよ。
詭弁も雄弁になるのだ。回避成功、これよりゴトーゼロから脱出する!