文化祭の始まり
「神崎君、見て文化祭のコスプレ可愛い?」
メイド服か、ヤバい! これは、胸が唸ってる。口から何か出そう。
「ああ、可愛過ぎてロックオン! ロケットランチャー発射!」
「ええとその褒め方、凄い引くんですけど? 普通に褒めよっか?」
しまった口から妄想の言語が出たのか。
「ああ、済まないな。あまりに現実離れしてるからさ七瀬が。」
「ふむふむ、なるほど。現実離れしてる私の可愛さに、現実離れした褒め言葉使ったのね?」
「それはご想像に任せるよ」
何故だと? 俺の脳に聞いてくれる? 俺も意味は分からん。
しかし、こいつ自画自賛だな。確かに可愛いが性格は無しだな。そう、かなり変わったタイプ。俺がまともに思えるほどに。
いや、彼女が変人だとすると、俺は常識王になるな。
フフフ。
「もうニヤけるほど、私が可愛いんだね? ふふ〜ん。」
彼女がターンをして俺にメイド姿を見せつける。
いや合ってるけど、間違ってるね。ニヤけるほど、君が天然で俺がまともだからさ。
ここは乗ってやるか。褒めまくったら何処まで行くのだろう? 失神するかな,こいつ?
「凄い超が付くほどメイド服似合ってるよ!」
「うーん? なんか台詞が棒で心がこもってない!」
ジト目で俺を睨んできた。なんだ? この不思議生物?
そんな小さい事にこだわるなよ。適当で良いだろ? だが洞察力が高いな。要注意人物、要チェックリスト入りだ。
「やり直し!」
はっ? 指図された! この俺が…ふん、生意気。話題逸らしするか。
「七瀬あれからどう? 松岡に嫌がらせとかされてない?」
「うん、その話はやり直した後でしよ。誤魔化されないからね!」
えっ、なに。そっちのが大事だろ? 俺、そもそもさっきなんて言ってたか覚えてすらいないから、やり直せないよ?
「メイド服が、素晴らしい!」
「うん、メイド服は良いんだ。私は?」
私は? なんだよ? ふむ。
「七瀬はヒゲの女王だ。」
「うーん? ヒゲいらない。滑ってるからね? そもそもヒゲ生えてないからね。むっ〜怒るよ?」
「そうではないヒゲは神聖なのだ。神聖の女王だって意味。じゃないかな?」
「なんで本人がかな? なんなの?」
うむ…褒めたくない! 人に言われて従うなど、俺のプライドが許さない。
「神崎君…宇宙人かな? 言葉通じない? はい、やりなお〜し。ちゃ〜んと、私のこと褒めて、ネ?」
ちっくしょぉ! 無限ループ! この子には何も通じない! 松岡以上の怪物!
俺を絶望の淵に追い込んだ。プライドはズタズタに切り裂かれた。
観念しよう…よく考えたら〜別に指図されて褒めたからって、失うものなくね?
ふぅ〜すぅ〜。
「七瀬可愛い! めっちゃ可愛い!」
俺は大声で叫んだ。これで、満足だろ? ここを込めて言った。
あら〜。告白しちゃってるよ。
文化祭だからね、盛り上がってるね。
周りの野次馬が俺を茶化す。
違う! これは罠だ…罠なんだぁー!
「神崎君…嬉しい…そのありがと。神崎君もカッコいいよ。これからもよろしくお願いします。」
よろしくお願いします? なんの! ってか褒められた俺も! この子めっちゃ良い子だ。性格ゼロから5%上昇!
「さて、神崎君、松岡君の話だよね。彼、彼女出来たみたいだから大丈夫になった。」
何? まさか献上が成功した?
ふ、ふははは。俺って意外に策士?
「そうか、良かったな。七瀬も安心したでしょ。」
「うん! でもでも、神崎君が助けてくれるから、そんなに怖くなかったよ、えへ。」
なんだよ、その天使の笑顔は?
助ける…俺は何故か助けてた。のか?
とりあえず…何か言うか。
でもまた、無限ループは嫌だ。ここはゴマスリ男になってやる!
「ああ、また何かあったら助けてやる、絶対に!」
「うん、頼りにしてます。じゃ今日は文化祭連れ回すからね。覚悟しろぉー!」
「おーう! 望むところだ!」
あれ? あれあれ? 俺何言ってるんだ?