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七瀬は、まだ好きって言わない

七瀬の視点。


廊下を足取り重くトントンと蹴って音を鳴らした。その音に気が紛れる訳もなく、更に背後から同級生達が私を追い抜くほど急いで、下校していた。


そんなに走ると内申に響きそう。そこは無視してくれるだろうか? 彼らの背中を見つめて心配してあげた。


それより自分の心配しないとね。


ああ…テストの答案用紙に神崎君の名前書いたなんて…ヤバい…脳が破壊される。


ジワジワくるやつだこれ…もう顔が熱くて冷やしタオルが今すぐ欲しい。


ハンカチでも良いなと制服のポケットから、赤いハンカチを取り出した。


手のひらの汗を拭いて、裏返し部分で顔を軽く叩いてハンカチの濡れた部分を見つめ、こんなに動揺してるのかと、胸がざわめいた。


赤いハンカチが私の火照った頬を表す…小さな鏡のようにさえ見え、ますます胸が騒ぎ立てた。


だって助けられたもん…抱擁されたらさ、書くじゃん普通…いや…書かないよね…バカか私は。


何故書いたか、必死に理由を探る私は…思考を張り巡らせた。すると…お腹が空いてきた。


コッペパンが食べたい。今はそんなこと考えてる場合? でも…お腹空いたら、アレだよ。


何も良い案が浮かばない…それ。


友達と相談すればと一瞬考えたが、なんで恥ずかしい事を相談しようとしたのかと、そのイメージを手で振り払った。


お腹が空いたことを忘れるように私は別の事を考えようと思いついた。


悪口と言えば…スマホで私の悪口書かれてたのを思い出した。


何がカップルクラッシャーよ。魅力ないから捨てられただけで、私関係ないじゃん…って書き込んで反論したい。


自分で書き込んでも、逆効果だし。

神崎君に頼もうかな? でもそれって巻き込んでしまう…友達だからいっか。


やってくれなそう…そもそも頼むのもだるい。


でも何もしない事を選んだの…自分にも腹立ってくる!


導火線に火が付いた、今まさに着火した。


何考えてんだろ…神崎君かよ…あっ…自分ってさっきから神崎君連呼してる…ヤバっ。


……落ち着こ、自分。


ここは…人間観察よ。

それが趣味って嫌だ…ああ…自己嫌悪って今の私の為にあるような言葉。


ふと、視線の先にぼんやりと窓ガラスを見つめる友達がいた。


心ここに在らずといった感じで、遠くを眺めながら、口をモゾモゾと動かしていた。


何を考えてるのだろう? 手にはお菓子の袋を握りしめていた。


ねだろう。さすれば与えられん!



「ねぇ〜明日香〜お菓子ちょーだい。」


右手を出そうと思っていたのに…もう出してる…自分どれだけお腹空いてるのかな。


厚かましいというか…もっとも、目の前に上がいる。学校で飲食するなんて…さすがギャル。学校の廊下で平然と食べてる様子は、偉大にすら見える

それにしても美味しそうに食べるな…。


「いいよ〜ほれ。」


彼女が袋から軽く出して私に渡す。



でも…さすがに廊下で食べるのは…待てよ?


校則破りは友とすれば責任半減ともいうではないか…周りを確認して、お菓子を受け取る。


ポテトチップスのようであり、おせんべいであるスナック菓子を、口にほうばる。


塩味が効いて上手い。

「ウマー!」思わず口からお菓子への賛美の声が漏れた。そして案の定むせた。違うところに入った。


お菓子を褒めるんじゃなかったよ、とほほ。


「大丈夫か?」

彼女がむせかえる私を心配して背中をさする。



「大丈夫。むせさせたお詫びにもう一個ちょうだい。」

私は笑顔で人差し指を立てた。


自分でむせたんやん。どうぞ。勝手にくえし。

彼女の呆れ声を無視するように、私は袋に手を伸ばした。


「いただき!」


私に遠慮の二文字は存在しない。でなければ…神崎君を同じ高校に誘うはずがないのだ。


そのことも相談しようかな? …バカにされそう。


……好きでもない人を高校一緒に行こうって誘うかな?


と私が聞けば明日香ちゃんは…頭おかしい子ならするんじゃない? 言われるのが目に見えてる。


ええ、分かってますよ…頭おかしいんで!


「なにわろてん?」


関西人じゃないのに…明日香ちゃんがツッコミを披露した。


「わろてます。ちょっと気になることあったんで。」


京都弁で返す私。まさか男子のこと考えてるって…図星コメントはしないだろうね? 

警戒しながら彼女の言葉を待った。


すると明日香ちゃんが急に真剣な表情に変わった。


まるで夢から覚めたお伽話の主人公のように。…

そして穏やかな空気が、一瞬にして張り詰める。彼女は、何かを決断したように私に語った。


「私さ…好きな人が出来た。」



なに突然…でも待って…窓の外を見てたけど、あれって…恋する瞳だったのかも。


まさか…神崎君狙いで付き合ってる噂を気にして私に伝えた?


策略家? とりあえずジョブを打つか…バシッと。


どうして急にそんなこと言うの?


私初恋で…七瀬に前から相談したいと思って…お菓子代代わりに相談乗ってよ。


…ただより安い物はないを自然に実行するなんて…やり手だよ。将来大物になるよ。


彼女が手を頬に当てる。その仕草はまさに恋する乙女……それは良いんだけど…彼氏いたことない私に相談する? 普通…しないと思うんだけどな。


もっと相応しい人に相談した方が良いとアドバイスを送る。恋バナは気になるけど…自分の話はしたくない…だって根掘り葉掘り聞かれるの嫌じゃん?


「そっか…じゃ神崎に相談する。」


彼女が目を伏せて、残念さを顔から滲ませてくる。でも…それより…なんて?


私は耳を疑った。何故……私は慌てて彼女に神崎君が好きな相手か確認すると、明日香ちゃんは焦ったように手を振って否定した。


……では一体…神崎君も彼女いたことないと思うんだけど…相談相手ズレてる…クスッ。


「笑うな…ちゃんと考えてる。七瀬と絵梨奈両方を惚れさせるテクニックの持ち主だって、私は知ってるんだから。隠しても無駄。」


明日香ちゃんが私の胸を小突いて、得意げに笑みを浮かべた。



えっ? 天然…でも…絵梨奈ちゃんが神崎君好きなのは…間違いない…だとすると…私は…お邪魔の魔女? 


私は神崎君に惚れてないと説明したが、彼女は聞く耳を持たなかった…最悪!


「逆に否定するのが怪しい…でも良いよ、ノート貸してくれれば。」


しかも、さっきまで恋バナしたのに話を変えた。良いんだけど…ノート貸せよは笑う。

 


それは良いけど、勉強ちゃんとするんだね。


するよ、失礼な。でも、貸してくれてありがとう。さすが私の嫁だ。


嫁扱いされたよ…どれだけ私の事好きなんだろう、この子。そこまで言われたら、相談…して良いよね?


深呼吸をして気を落ち着かせ、全てのエネルギーを口に集中させた…あれ? こんなこと考えるの…神崎君みたいじゃん! 恥ずかしいこと言う前に、テンパるじゃないか。


咳払いして、何事もなかったように、さりげなく明日香ちゃんに伝える。


「私さ、テストに神崎君の名前書いたんだよ…これって意識してるって事かな?」


…身を曝け出す思いで、言ってしまった。


「そうでしょ…でも…絶対そうとも言えない…ような?」


明日香ちゃんが言葉を詰まらせながら、自分の事のように深く考え込むように目をつぶった。


「…そうだよね…明日香ちゃん。笑わないんだね、ちゃんと真面目に聞いてくれてありがとう。」


「うん、私だって…小学生の頃、親とか先生の名前書いた。


先生や親の名前…書いたんだ。さすが私と同じ  で、初日に違うクラス行った子なだけあって天然だ。


笑っちゃ駄目…でも…ああ…我慢が出来ない。自分だって間違えたくせに…私は酷いやつだ。


なんで笑うんだよ? そっちだけ!


笑って…あは…ないよ?


無理があるよね? なんとか誤魔化さないと。そうだ共感したって言おう。

安心したって…うん、嘘はついてない…?


ついてる気もする…だって親とか先生ってなんでだよって思っちゃうよ。


明日香ちゃん、どうして親や、先生の名前書いたの?


そこが気になるよ…それが分かれば神崎君の名前書いた原因に行き当たるはず。


先生のは…名前の横に落書き書いててさ、それで名前に書いて遊んでたら、直すの忘れてた。親のはなんでかしらん。


参考にならない…聞いた意味なし!



私は廊下の足音がキュと聞こえ、先生かと一瞬肩がビクッと反応した。


恐る恐る振り向くと、生徒2人…いやカップルが互いに目配せして、イチャイチャしていた。


女子は本を持って、男子は手で女子を軽く頭をポンと軽く叩いていた。


もう…という声が聞こえたが、顔は満面の笑みで嬉しそうに男子を見つめていた。


……羨ましく…ないんだからね! いや…腹立つのは、なんていうか…見せびらかすなよってことだから。


私は頭を振った…多分渋い顔をしているのが分かる。


羨ましい…な。


明日香ちゃんがポツリと、口を尖らせて言った。


正直だな、この子と思った。

私は…彼氏を作るのは明日でも出来る。でも作らないのは……理想が高いのかもしれない。


そもそも好きな人が出来たら、自然と付き合って……でも理想通りの人って彼女が出来たりするんだろうな…怖いな…嫌だな。


だから…かな? 心のフィルター作って、好きな人作らないように考えてるのかも。振られたら傷つく……私…なんてプライド高いんだろ。


…中学生…だもん。恋愛は早いよ…それって言い訳かな? 分からない。


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