告白寸前の、恋人未満な二人の距離
緑色の廊下の地面に、窓の陽射しが七瀬を照らして、神秘的な美しさを醸し出していた。
生徒たちが時折り俺の隣を邪魔そうに通り過ぎる。
それを見た七瀬が、俺の腕に触れて、もう少しハジに寄ろうと、提案してきた。
彼女の真面目な行動に、俺は心で感動してその通りにした。
それを見た男子が、嫉妬混じりの視線を俺に向けたのを逃さなかった。邪魔なだけじゃなかったと、俺は軽蔑に似た失笑をした。
俺はわざと彼の視線を意識しながら、七瀬との会話を再開した。
「分かったけど…何故一緒の高校に行こうって誘うのか理由が知りたい。」
俺は勇気を振り絞って、彼女と目を合わせず聞いた。彼女はクラスで1番の人気者…劣等感からか、それとも振られる恐怖感のせいだろうか?
俺の勇気なんてそんなもんだ。一歩前進だろうか? しっかりと目を合わせて、彼女にきちんと向き合って聞くべきだろ。
この根性なし…って自分を1人で責めて…なんだろう。この情けなさは。
お兄様自分を責めないで。悪いのは自業自得なのです。
ユイが人差し指を立てて、目を半目にしながら、ため息を吐いていう。
それどいうこと? 何を言ってんだよ!
お兄様は、自分が可愛いばかりに、心を大事にしてるのです。
そう……まるでシャーペンの芯が折れないことに、無駄に神経使ってる人と同じです。
なるほど、折れやすいから仕方ないから責めるな。けど、折れやすくなってるのは、俺の責任ってこと?
お兄様、深く考えないで…私、慰めてあげてます。
普通の慰め方はないのかと思ったが、七瀬の声で、ユイとの会話を終えた。
「私モテるから、ボディーガード欲しい。神崎君、松岡君とちゃんと対峙してくれたよね。
ああ、この人って勇気ある人なんだなって。」
彼女が頬を赤らめ手を自分自身に向けて、自信満々に言ったあと、その手を俺に向けた。
勇気ないです、はい。告白する勇気を持ち合わせてない…それに対峙したのは、君に追い込まれたからだよ。
「ボディーガードか。それにしても、モテるって自分で言っちゃうのか?」
「言っちゃいますよ。カップルクラッシャーってあだ名つけられたの、神崎君も知ってるでしょ?」
君の魅力で彼女がいても、好きにさせるんだね。
でも…エピソード聞きたいね。説得力あるけど、そこまでモテるか、まだ疑問だ。
「どうしてそんなあだ名つけられたか、身に覚えあるのか? あとボディーガードってなら、女子高で良いじゃないか。」
「むむ、鋭いね、神崎君。はっきり言うと、身に覚えない、あは。でも告白される回数の多さで、なんとなく察っしってやつだよ。」
七瀬が両手を広げて顔を横に振りながら、目をつぶって眉間に皺をよせて、可愛く口を開けて白い息を吐いた。
「なら、女子高には何故行かないんだ?」
俺は一緒の高校に行きたいが、それより彼女の真意を聞きたかった。好きだからと、返されるのを期待している自分がいる。
七瀬は一瞬沈黙し、腕を組んで目を閉じた。
女子に告白させようとし向けるなんて、お兄様の情け無さは、ここに極みの極致に達しましたね。
ユイ、良いところなんだ。黙っててくれ…情け無いのは、自覚してる。
七瀬が目を開けたのを見て、俺は言葉を待った。だけど、俺は彼女の唇に目がいった。
魅力的だな、いつかキス、出来るのだろうか?
そんなエロティックなことを一瞬考えると、彼女の言葉が耳に入って、慌てて緩んだ表情を真剣な顔つきにした。
「そうだね、神崎君をほっとけないからかな。危なっかしいから。」
「なんだよ、それ逆だと思うぞ。天然な七瀬の方がほっとけない。」
「じゃ、お互い様だね!」
彼女が頬に手を当てて、満面の笑みで言う。
思わず俺も口が緩む。
期待した返事とは違ったけど、彼女の小悪魔的な魅力を見せられて、俺は満足した。
少し笑えてくるな…似たもの同士…に勝手にされたことに。
「なぁに? ニヤニヤして〜。そんなに嬉しかったのかな、かな? 」
肘で俺を何度もこずいた。
彼女の肌の温もりが伝わり、顔が真っ赤に燃え上がるのを感じて、彼女から目を逸らす。
自分の魅力自覚してるな…なんて自信満々な態度なんだろう。
それとも俺、そんなに分かりやすいか?
態度があからさますぎたか? 七瀬だって笑顔だったのに…自己中だこれは! 俺だけ責められてる。
「おおっと、返事がない。これは嬉しかったんだね〜。高校一緒が良いって言われたのがかな?
ほっとけないって言われたのが嬉しいの? 両方だったりして?」
「観念して俺は、嬉しいよ両方と答えた。」
これってもう告白じゃないのか? 違う? これで付き合えないのおかしいよな?
「神崎君……それって…勘違いしちゃうからね。」
勘違いじゃないんだ、気づいてくれ。
俺は心臓の鼓動が聞こえるほど、ドキドキして胸を抑えた。
「勘違いって?」
唾を呑んで俺は、緊張してよく言ったと自分を褒めた。
いよいよ、付き合うのか…でも付き合ったらら、何が変わるのだろう…デートを沢山したりか? 俺は彼女が出来たら、どう変化が起きるか、真剣に考えた。
七瀬の甘い声が聞こえて、俺は彼女の目を見つめた。
「うん、ボディーガードしたくなったか、勘違いしちゃうからねってこと。」
おい! それ違うだろ。
クスクス、お兄様残念でした〜。
うるさい…七瀬は、普通じゃなかった。
普通じゃないってより、はぐらかされたのではないですか、お兄様。
そうなのか!
私に聞かれても、本人に聞いてくださいよ。
聞けたら苦労はしないよ、ユイ。
恋愛に臆病な男性増えてるみたいです。
なんだその情報! 俺がまるで…恋愛に臆病な子羊って言うのか?
言ってません。残念なマイナスガイって言いました。
辛辣なユイはほっとこう。今は七瀬と話すのに忙しいんだ。
「七瀬、ボディーガードはするって。あと、冬休み入ると正月まで会えなくなるな。」
「会おうと思えば会えるよね? 勉強会とか。」
「そうだな、するか。」
「お正月まで会わないのも、新鮮で良いかも。神崎君は、その髪型変えよう? そろそろ切ってカッコいいお顔を拝ませてね。」
七瀬が微笑んで、それじゃまたねと、手を振り俺に別れを告げた。
彼女は不思議な子だな…急にまたねって。
お兄様、七瀬様は、気恥ずかしいのかもしれません。もしかしたら、煮え切らない態度にブチ切れたのかもフフ。
どっちだよ! いや、前者に決まってるな…髪そうだな、切るか。
そうだ、締めにイマジナリー神崎と久しぶりに話するか。七瀬俺のこと好きだよね、これ告白したら、成功するよな?
いえ、そうとも言えません。フレンドリーな方かもしれません。えっ、ごめん友達だと思ってた。とか、温度差があるかもしれませんよ。
それに好きな人と女子は毎日でも会いたがるはず。それをお正月まで会わないでもいいは、心理的に怪しいかと。
聞くんじゃなかった。イエスマンを置く経営者の人達の気持ちが分かる…うん。
彼女の背中が小さくなっていくのを見つめ、俺は嬉しいはずなのに胸が締め付けられるような、そんな寂しさが込み上げ、その場にただ立ち尽くした。




