クッキーに宿る想い
学校帰りの夕方、スーパーでクッキーの材料を買って、意気揚々と自宅に鼻歌混じりに帰宅する。
自宅のドアを開き、ただいまと一人呟く。
靴を脱いで、早速冷蔵庫に向かう。
ビニール袋から、小麦粉を取り出し冷蔵庫を開ける。
神崎先輩の事が頭に浮かび、胸がドクンと音が鳴り、顔が熱くなった。
冷蔵庫がそれを冷やすように、私を包むように、ひんやりとした風で私の顔を癒す。
はぁ〜幸せ…ありがとう神崎先輩。
私は彼の事を考えるだけで、別世界にいるかのよう。
仲良く二人で手を繋いで、草原や浜辺を駆け足で進む光景が目に浮かぶ。
ああ…これが恋なんだ。思わず笑みが溢れてキャと、誰もいないにも関わらず、思わず顔を隠す。
ああ、いけない…冷蔵庫開けっぱなし。私は胸のドキドキを抑えながら、小麦を中に入れた。
落ち着きを抑えようと胸に手を置く。
するとさっきまでの、恋心をかき消すように、嫌なことも浮かんできた。
信じたくない噂を聞いた。神崎先輩とかりん先輩が、抱き合って、同じベンチに座ってラブラブだったと。
私は首を横に振り、その噂話を必死に振り払う。
でも…その噂本当だったら…実は2人は付き合ってて、もう私の入る幕もないかもしれない。
ううん…神崎先輩はそんな人じゃない。付き合っててクリスマス私と過ごしてくれる訳がない。
だけど…腕を持ち上げ私は振り下ろして、ツラくて…泣きそうになった。
私の事みんなは、賢くて何も悩みがないでしょって、よく言うけど、そんな事ない。
いじめに遭って、誰も相談できなかった…それを先輩は、会ったばかりの私を庇ってくれた。
好きになるなっていうのが無理ですよ、先輩。
良いんだ、振られても…もしそうなっても…側にいられたら…嘘つき。自分は嘘つきだ。そんなはずない。
神崎先輩といっぱいデートしたい、思い出作りたいよ。
私は、涙が堪えきれず、頬に涙が伝わる。
私が泣いていると、足音が聞こえて影が見えた。
「おーい、何冷蔵庫の前で泣いて座り込んでるんだ?」
この声は、お兄ちゃんだ。嫌なところを見られてしまった。
「なんでもないよ。私が暗い顔してるのいつものことじゃん。」
「喜怒哀楽が激しいな。それはそうと、神崎との仲はどうなんだ?」
「うん、順調そのものだよ。」
声がうわずって発した。思ってもないことは、やっぱり喉が正直だ。
それは良かったと、お兄ちゃんが笑顔で応えた。
嬉しくてまた泣きそうになったけれど、私は揶揄れないよう我慢した。
人に恋を応援されると、こんなに嬉しくなるものなのだろうか。
私はお兄ちゃんにお礼を言った。
それから台所に向かい、明日のクッキーをスムーズに作れるように、道具を用意した。
食事とお風呂を済ませて、私は寝床に入った。
胸の鼓動が止まない…興奮して寝れなそう。
明日のことを考えると、目が冴えてしまう。
…それでも眠くなってきた。お布団の心地よさと枕の温もりが私を温めて、眠りに誘うのだ。
おやすみ、今日の自分にさようなら…明日はまた新しい自分に初めましてだ。
ふふ、私は強いのか、弱いのか分からないな。
多分両方かな? へへへ…すぅ…すぅ。
私は、目覚ましをセットし忘れているのに気がついた…ああ…私何やってるんだろう。
急いで目覚ましの方向に目を向ける。
5時だ。ふぅ…安心した私は、右手で布団を持ち上げ、ベットから身を起こす。
さて、クッキー作りますか。
オーブンを180℃に予熱セット完了。
私は天坂にクッキングシートを敷く。
先輩が美味しそうに私の、手作りクッキーを頬張る光景が浮かび、心の中でガッツポーズを決める。
中ボウルに小麦粉、ベーキングソーダ、塩を入れ、ふるいながら混ぜ合わせた。
さらさらと舞う白い粉は、まるで雪の結晶が静かに降り積もるよう。
うんうん。我ながら上手くいきそう。
ふぅ〜…焼き上がったクッキーを冷まして完成…美味しそう。
私は寒がりながら、学校に行く準備を始める。
よし行こう。袋にクッキーを入れて、神崎先輩に渡すのだ。
意気揚々と学校に行き、授業には身が入らず…心の中で先生に謝る。
待ちに待った放課後。クッキーを手に取り、神崎先輩をハラハラしながら待つ。
ちょっと、あんた…何持ってんのよ?
近くで、私を呼ぶ声が聞こえた。
私をいじめていた子の1人に、私は絡まれた。




