涙を抱きしめて…SNS悪口なんかに負けない
うあぅぅ。
七瀬が両手でスマホを掲げて、うずくまるように体を丸めていた。
「どうした? お腹痛いのか?」
「違うよぉ〜! 私SNSで凄い悪口言われてた。見てよ!」
スマホを突き出されて、その画面を食い入るように見ると、文字が見え俺は、その文字を口に出して読んだ。
「悪口? 七瀬、男子に媚び売りすぎ。調子に乗ってる。あだ名がカップルクラッシャー。」
「見た? 酷すぎる!」
どうやら女子軍団の2人が書き込んだようだが、他のやつもいそうだ…な。
彼女を慰める言葉を、イマジナリー妹に聞こうとしたが、俺は踏みとどまった。
なんでもかんでも、彼女に頼っていたら、俺はイマジナリー妹の、操り人形になる。
ここは自分の力で、彼女を勇気づける覚悟をして、手に力を込めて明るく俺は、七瀬に接した。
「なんだよ、悪口じゃなくて本当の事じゃないか。」
「えっ? そうかな? なんだ本当のことか!」
泣き腫らした目が充血してる。それでも俺の声に笑み…溢れてくれた。
「あはは、そう考えると笑い話だね。神崎君、ポジティブ!」
でもよく見ると、悪口も書いてあった。すげーブ…言わない方がいいかな。もう言えないよな。
これ全部見てないよな?
一応確認を彼女にした。全部読んでたら、本当のことがって違う意味になると思ったからだ。
「見てないよ? 途中で辛くて見るの辞めた。神崎君の言いたい事分かってるから。私そこまで単純じゃないからさ。」
「男子に媚び過ぎ。」
スマホを見ながら彼女が呟く。
「これは男子に配慮出来る素敵な女子ってことで、調子に乗ってるように見えるほど輝いてるって事で、カップルクラッシャーが魅力的過ぎてそうなるって事。言いたかったんだよね?」
「そこまで言ってないが。捉え方次第ってことならそうだが。」
俺は頷き、親指を立てた。
「よく分かってるね。」
「でしょ! 神崎君って端折るからさ。分かりやすく丁寧に説明しないんだもん。読み解く力も上がるよ。」
彼女が手で俺の太ももを軽く叩いて、笑った…だけど…七瀬が顔を伏せたあと、体が震えていた。
「でも、捉え方次第でもやっぱりつらいよー。涙が止まらないの。」
七瀬…手で涙拭いてる姿が俺には、痛々しくて見てられない。俺まで泣きそうになる。
そうだよな…ポジティブになった。
はい終わりーって…ならんよな。
「やっぱり悪口をポジティブに捉えようと、良い意味で言ってないのはニュアンスで分かるからね。」
普段の俺だったら見てるだけだったろう。でもきっと慰めたいって感情のせいだ。
俺はそっと彼女を胸に抱き寄せてしまった。けれど嫌だろうと、離れようとすると彼女がありがとう、そう言われて離れるのを辞めた。
七瀬はいつも強がって明るく振る舞ってるけど、本当は心の優しい、繊細な子なんだ。普通に傷つく。友達も慕ってる筈だけど、一部にこんな裏切られる事書かれたら…辛いよな。
俺は自分の事の様に、涙がとめどなく流れた。
「神崎君、いつまで私の事抱きしめてるのかな?」
「ごめん、弱みに漬け込んで。」
「別にそう言うわけじゃなくて、私と噂になるの不味いんじゃない? 誰かに見られたらまずいかなって。」
彼女の言葉に一瞬誰か見てないかと、周りを見回した…五味拓也と目が合った…嫌な奴に見られた。
でもそんなの今は、どうでも良かった。
「こんな時にそんなこと考えなくて良いよ。バカだな。」
思わず彼女の頭を撫でていた。イマジナリー妹に…撫でるように。
「泣いてる…私の為に。本当優しいね、もぅ〜ばか。」
甘い声で叱られた。それが心地良かったのは、彼女があまりに可愛い天使のようだったからだ。
「はは、2人してバカって言い合いしてる。」
俺と七瀬はグラウンドのベンチに腰掛けた。
「ねぇ、神崎君。今日だけ甘えて良いかな?」
「ふぅ。今日だけじゃなくていつでも甘えろよ。」
「なぁに? イケメンじゃん。じゃあ甘える。」
そう言って七瀬が俺の肩に寄りかかる。
「私ってそんな風に思われてたのかな?」
「嫉妬だろ。七瀬が可愛いくてモテるから、思われてるんじゃなくて、その…やっかみというか、出る杭は打たれる的な批判というかさ。」
「ありがとう。神崎君らしい慰め方だね。少し元気出た。」
俺は七瀬の肩に手をやり、肩を叩いて、自分の側に寄せた。




