28回振られても懲りない男、そして彼女は泣いていた。
「僕が…この僕が…振られた…くっ。」
なんだ、ユイと話そうと1人になれるとこと探したら、変なやつが眼鏡を片手に持って、泣いてる。
ですね、お兄様…でもいきなり変な人は言い過ぎですよ。
ジト目でイマジナリー妹が注意するように俺を見つめる。しかし、彼女のジト目は、可愛すぎるので、思わず目を下に伏せる。
たまに真面目なやつだ。
「うぅ、僕は冴えないやつだ…振られた回数中学生で28回…もうすぐ30回…だ。」
「ぶふぅー! 振られすぎー!」
思わず俺は吹き出した。胸を叩いて、落ち着かせる。
お兄様…駄目ですよ…笑ったら…お兄様なんて告った回数0なのに。
振られた回数0だぜ。あいつよりマシだろ。
笑っていると、大きな声が俺の耳に届いた。
「誰だ! 僕の事を笑ったやつ! 出てこい。」
「俺です…30回まで後少し頑張って。」
お兄様、喧嘩売るなんて…面白い事しますね。
「なんだよ、煽りやがって。そういう君は振られた事ないのか?」
「ないよ。一緒にするなよ。」
最低お兄様…告った事ないのに…開き直り勇者ですね。
ほっとけ。振られた回数なんて低い方がいいよ。
「くっそ…振られた僕の痛みなんか分からないさ。」
「いや…ごめん…言われると…振られるのは俺怖くて…告った事ない…んだ。」
急にお兄様の態度変わった。変わり身の術使いました?
いちいち煽るなよ。振られる怖さと痛み同じだと思ったら、辛くなった。
「そうか…ふふ、僕の方が勇気あるんだ。」
謎の笑みで、俺をバカにするように口角を上げる。
こいつ、調子に乗りやがって。人が下手に出たら!
お兄様、やっぱり精神的にやられました? あまりの変わり映えに私、心配で夜しか寝れなくなります。
睡眠時間君、ゼロだよね? だって、俺の方が上みたいにあいつが言うから。
まぁまぁ、お子ちゃまになっちゃうお兄様も可愛いですけど、ちょっとウザいかも。
デレるのか、貶すのか、君の方が変幻自在に変わり過ぎだろ。
「話した事ない子もいるけど、ちゃんと話した子はいるさ。」
「でも28人だろ…学年200人も女子いないよな…超有名人だよな…俺は知らないけど。」
「あのさ、ちょっと勘違いしてるよ君。この学校で28人も告る訳ないだろ。」
「なんだよ。つまり…28回振られて…実は同じ人ってことか。」
少し苦笑いして、彼を見ると、顔の前で手を振る。
「違う! 色々な他校の文化祭で18人、この学校で10人だ。」
「もっとやべー! 関わったら駄目な人じゃん。」
思わず、妄想で言った言葉が口から出た。
「話すだろ! 文化祭なら! そこでぇ!」
彼が両手を握りしめ、唾を飛ばして、俺に奇声を上げる。
急にキレ出した。おい、イマジナリー妹助けろ。
お兄様とこの人は天と地ほど違います。お兄様は勉強頑張ってますが…この人は自分磨きせずに、ただひたすら迷惑告りをしています。なので話し半分で終わらせましょう。
そうね、ちょっと説教してやりたくもなるな。告ってるより、自分磨きして告られ待ちしろって。
お兄様、それもどうかと。お兄様は磨いても行動しないので。
「なぁ、君よく見たらぐふふ。神崎だよね? 美少女2人と勉強会してるって噂の。」
いつの間に眼鏡をかけて、縁を弄りながら、不気味な笑みを浮かべている。
なにぃ! そんな噂が…噂じゃねー! 本当だぞ。
「もし良かったらさ、女子紹介してよ。こうして話してるのも何かの縁じゃないか。」
こいつ、なんて図々しい…まず名前を名乗りもせずに厚かましい。
ここはしっかりお断りするべきです。
悪いけど、俺彼女すらいない。恋愛経験なしなだから、紹介するほど遊んでない。こう言って、きっぱり断りましょ、お兄様。
「…じゃあ、僕の名前は五味拓也だ。連絡先交換しよう。もしモテたら、その時はよろしく。」
えー。なんなんこいつ。厚かましいやつランキング俺の中で、1番更新だ。2位は誰だろ…まぁ良いか、後藤悟だろうな。
お兄様、ここは連絡先も交換したら駄目です。
分かってるけど、どうやって断る?
申し訳ないけど、交換は出来ません。俺からしたくなった人しかしないポリシーって言って断りましょう。
やれやれ素晴らしい妹持って幸せだけど、頼りになり過ぎて、俺もこいつも寄生してるみたい。
お兄様、その自覚があるならその五味拓也とは、雲泥の差です。彼はそんなもの持ってないと思います。
どうしたの今日…優しすぎるし、優秀。
本当に危ないです…こう言う人は。
俺は、イマジナリー妹の言う通りにした。
「じゃあしたくなるには、どうすればいいのかな? 」
粘るなこいつ。したくなることはないんだけど。
したくなる理由を聞かれてるので、理由を作って言えば大丈夫です。
例えば学年10位内の学力成績出すとか…でもそれより…女子の連絡先10人作れとか、本人の為になる提案もありますが…
ありますが?
その女子達が可哀想ですし、お兄様の名前語られると…やはり…したくなる理由は、今は答えられない。これで逃げましょう。
「悪いな、今は答えられない。したくなる理由いきなり聞かれても…困る。」
両手を胸の前で組んで、険しそうな表情を彼に見せた。
「なら、いつ…その理由聞かせてくれる?」
しつこい…何か策は…よしこれだ。
「ごめん、先生に俺呼び出しくらってたの思い出した。悪いけど、またな。」
「そうか…それじゃ仕方ない。」
「じゃあな。」
俺は全力でここから逃げ出した。
はぁはぁ…なんだったんだ…ちょっと大袈裟な気もするが。
大袈裟に考えた方が安全ですよ、お兄様。さて、頑張ったご褒美…甘えさせて。
…仕方ないな、ありがとうの撫で撫で。
みゃー嬉しい。
猫かよ!
でも振られた回数28回は多かったな。
もしかしたら、好きです、付き合って下さいじゃなくて、遠回しの告白で28回かもしれないですよ。さすがに…28回中全部失敗なんてあり得なくないですか?
あー、だよな…実際そんなに告ってたら、有名人だよな。
ん…? あれは、七瀬…泣いてる?




