クリスマス vs. 正月!? イベント争奪戦勃発!
「神崎先輩も、七瀬先輩宥めるの大変ですね。」
絵梨奈ちゃんが苦笑いをして、肩を撫で下ろした。
「だから、棘があるのよ!」
横に座っていた七瀬が、苛立ちを募るように彼女に、指すように手を伸ばした。
「でも神崎先輩に私も宥められたいです。七瀬先輩が、少し羨ましいです。」
そう呟くと、絵梨奈ちゃんがノートの端をぎゅと握りしめ、小さく伏目がちになった。
ちらりと俺たちを見て、またノートの影に隠れる。
彼女の仕草に素直に言うと、可愛いと感じる。
こういうところ、ずるいな。
良く表情を隠すんだ。恥ずかしがり屋なんだろう。それなのに、態度は強気なのに、ギャップに惹かれる。
「もう、変なところ羨ましがるね。私なんか、子供みたいじゃん。まぁ…少しは神崎君の優しさに甘えられて良いなとは思ったり、思わなかったり。」
どっちだよ? 素直じゃないなこいつ。でも…その不器用さが、どうしようもなく愛おしくなる。
七瀬が素直にはいって感じに接してたら、俺は物足りないだろうな。
「仲良しで良いですね。私も神崎先輩と仲良しになりたいです。今は、まだ距離が七瀬先輩より通りですけど、いつか追い抜きますから。」
絵梨奈ちゃんがウインクして、微笑む。俺たちもその笑みにつられて、口が緩む。
私と神崎君は、友達だよ。そんな絵梨奈ちゃんと距離変わらないよ。
表情は真実を表してますけど? 七瀬先輩。ずっと神崎先輩と友達でいて下さいね。
絵梨奈ちゃんが、クスッと笑った。冗談なような、でも少しだけ本気の笑みで。
「うん、そうだね。ずっと友達ね、神崎君。」
七瀬は肩をすくめて、すぐに目を逸らした。
その表情は、特に何かを気にしている様には見えない。
えー? 何だよそれ。やきもち妬いて大変なのも嫌だけど、素っ気ない態度も嫌だ。イマジナリー妹も頼れないし、何かむんむんとする。
あ〜なんでこうイライラするんだ。
俺は深くため息を吐いた。なんか、胸が苦しい。
返事はどうするか…これそうだねも嫌だ。恋仲になりたいのに、ずっと友達でって…それはないよ。
くっそ…言葉が出てこない。助けてくれよ、誰か…イマジナリー神崎、助けて。
ここは、そうだね、ずっと仲良くいたいと答えるのはどうでしょう?
ああ、ナイスだ、イマジナリー神崎!
ちょっと待って下さい、お兄様。ここはずっと友達か、それ以上望んだら駄目かな? と言って下さい。
イマジナリー妹! 遅いよ! 先に言えば採用したよ…もう…俺は最初の提案呑むから。
俺はイマジナリー神崎の言う通りに言った。
「だね。ずっと仲良しだ。」
七瀬が頷いて言う。
正直イマジナリー妹の意見の方が正しいと理屈では理解している。彼女の意見はこと、恋愛に関しては、上だ。
でも…リスクもある…本当か? 最初に言われても…その言葉、選んだのか?
思考していると、絵梨奈ちゃんの声が聞こえた。
「神崎先輩、クリスマスの予定って空いてますか?」
俺はふと顔を上げる。
「ああ、特に決まってないけど。」
「もし空いていれば、お兄ちゃんと私でクリスマス楽しく話しませんか?」
絵梨奈ちゃんは、少しだけ意味ありげに微笑んだ。
後藤悟と一緒か。それもどうなんだろう。でも、せっかくの誘いだ…というより、俺は押しに弱い。
「神崎君、行くの?」
「ああ、そうだな。七瀬はクリスマスどう過ごすの?」
「友達と寂しくクリスマス過ごすよ。クリぼっち友達と。」
七瀬の言葉に、俺は軽く肩をすくめる。
それなら良いか。でもその友達女子だろうな? 嫌だぜ、男子となんか。
「そうだな、行くよ。」
お兄様、さすが汚い。でもお兄様らしくて素敵。
なにが?
なんでもありません。
「良かった、神崎先輩ありがとうございます。楽しいクリスマス過ごしましょう。」
絵梨奈ちゃんが両手を合わせて微笑んだから、俺も笑顔で返して親指を立てて返事をした。
「おう。」
お兄様、別の話になりますが、二枚舌の男子って好きですか?
悪戯ぽい笑みを浮かべ、イマジナリー妹が突然会話に割って入る。
いや、なんの話だよ? 急に。
いえ、楽しいクリスマス、私はその日は黙ってますね。
あっそう。でも明日は、相手してやるよ。
わ〜嬉しいです、お兄様。嘘ついたら、嘘アドバイス付きますからね。
辞めろ、それだけは絶対…駄目だからな。
はい。
「神崎君、正月の予定空けといてね。一応予約済みって事で。」
七瀬が目を逸らしながら、少し頬を赤くしている。
えー? 何だよその奇襲予約! 心臓止まるかと思った。
「お、おう。空けとく。」
「うん、ありがと。」
七瀬の頬が薄く赤く染まっていた。
「ああ、お正月…七瀬先輩に先を越されました。
でもクリスマスあるんで!」
絵梨奈ちゃんがやられたと感じさせるように、片目をつぶって口を開けて、気が付いたように両手で半を押す。
何々、俺の争奪戦? いやそんなこと‥あるか。
勉強再開しようと俺は2人に声を掛けて、彼女達が頷いて答えた。




