ポエマーの妹に絡まれた件
「神崎先輩!」
放課後の廊下で見たことない可愛い子が俺を嬉しそうに呼び止めた。
「ん…誰?」
「初めまして! 私、後藤絵梨奈です。お兄ちゃんがいつもお世話になってます。」
ポエマーの妹さんか。俺に何の用だろう。
お兄ちゃんと一緒で変人なのは確定。
きっとブラコンだ。お兄ちゃんがお世話になってる礼を言いに来つつ、お兄ちゃんの話をするつまりに違いない。
関わりたくねー。
「そっか、こちらこそ後藤とはいつも仲良くしてもらってるよ。」
作り笑いをして、愛想良く対応して、彼女とそれに笑顔で答えた。
「はい、お兄ちゃんにとっ〜ても素敵な方と伺ってます。是非一度お会いしたくて!」
目をキラキラさせながら俺を見上げる。
さすが後藤の妹、後藤も容姿が半端ないが、妹はそれ以上!
…待てよ? 本当に妹だろうな? 実は妹じゃなくてヤンデレ美少女じゃ…
「あの、本当に妹さんかな? ほら、後藤容姿が整ってるだろ? ファンが妹装って近づくとかありそうじゃん。」
「ほー確かに! 聡明な方ですね、気が付きませんでした! これ学生証です、お納めください。」
いや、納めねーから。やっぱり変わってるぞ。言葉遣い丁寧だけど、おかしい。
学生証を確認する。確かに妹だな。ポエマーめ!
こんな可愛い妹がいるとは…だが待て、血の繋がりはないとかもあり得ない話ではない。ブラコンヤンデレ…ごくり。
血はちゃんと繋がってる? とは聞けないよな。
何言ってるんだこの人って軽蔑の目で見られるのは精神に深傷を負う。
「ありがとう、確認したよ。」
手に持った学生証を彼女に返して腰に手を当てた。
「はい! それでお兄ちゃん学校ではどんな様子なのか気になりまして。」
やはり、ブラコン! 君のお兄ちゃんはね、ポエマーだよ、うん。それ以外印象ゴトーゼロ!
「そうだな、正義感があるね。それで…ポエマーだね。」
プププ…駄目だ笑ってまう。はっ? ちょっと待てよ…俺もポエマーじゃなかったか? 人の事言えないよな?
俺は廊下の地面に視線を移して、首を傾げた。
「わぁー! お兄ちゃんの正義話し聞きたいです
ポエマーなのは知りませんでした。神崎先輩もポエマー仲間なんですね。」
いや、違う…いや、合ってる。どっちだよ!
この場合なんて言うんだ? 違うとも言うのも…な。
「ああ、鬼みたいな…怪物中学生に絡まれた女子がいて、その子が嫌がってるだろ! って注意したんだ。」
ポエマー仲間はスルーする。
「お兄ちゃんカッコいいです! 妹として誇りに思います。神崎先輩のポエム気になります! 聞きたいです!」
しっかりポエムの話戻すんかい! お兄ちゃんの活躍もっと深掘りしろよー。なんだよそれ!
「お兄ちゃんにポエム聞かせてもらいなさい。」
「はい! 後で! 先輩、お願いします!」
彼女の押しの強さに促されて、俺の口と脳が勝手にポエムをくちずさむ。
「君は僕が辛い時ずっと僕の隣にいてれくれたね。
僕はそれに甘えてたんだ。でも、君は嫌がりもせず何も言わずに微笑みをかけてくれた。」
「小さな幸せだけど、僕もそれをいつか返せる日が来ると信じて、君の側を離れない。」
「夜空の星に誓った、君の幸せ。」
恥ずかしい! 俺は目を瞑りながら頬が真っ赤に染まるのを感じた。
「素晴らしいポエムですね。神崎先輩のポエム、とても感動しました。2人の幸せなイメージが目に浮かびます。」
「俺は恥ずかしくて死にそうだけど?」
サービ精神旺盛だな俺。それとも押しに弱いのか? 七瀬に聞かれたゾッとする。今は用があるからここにはいない。
「ただ、韻は踏んでないのが惜しいですね!」
何それ? ポエム韻踏むの? ダメ出しされた。あっ、この子にじゃ見本を見せてって言おう。
「そうか。韻踏んだポエムの見本後輩ちゃん、俺に聞かせてくれないかな?」
「私は遠慮しておきます。黒歴史になっちゃいますから。」
なにぃ! 腹黒後輩! こいつ舐めてる!
クックック俺と同じ苦しみを味わうがいい!
「つまり俺は黒歴史作ったと?」
「違います! 神崎先輩がポエム作っても黒歴史にならないのですけど、絵梨奈だと、失敗してしまうんです。」
ふっ、なら議論ふっかけてやるわ。後輩に舐められたままでは示しがつかない。
「失敗しても良いよね?」
「失敗したら黒歴史です。先輩と私じゃ持って生まれた才能が、違い過ぎするのです。」
やられた! 後藤の洞察力に腹黒さが加わってる!
策士だ。褒められても全然嬉しくないし。
「神崎先輩、ここではなんですし図書室に行きましょう。もう少しお話ししたいです。」
俺はもうようないんだけど…って。
後輩ちゃんが俺の手を握って、返事も聞かずに歩き始めた。




