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黒猫ツバキと夏休みの宿題(1200字の作文×4)  作者: 東郷しのぶ


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黒猫ツバキ、ご主人様が男性にデートに誘われるという奇跡の瞬間に立ち会ってしまう(イラストあり)

 作品④視点移動をスムーズにしつつ書いてみる

※ページ途中に、コンデッサのイメージイラストがあります(話の流れにおいて、かなり重要なイラストなので、ぜひご覧ください)。

 天空に輝く、真夏の太陽!

 青い海!

 白い砂浜!


 ここは、ボロノナーレ王国の海水浴場。20代の魔女コンデッサは、ビキニ水着にパレオを腰に巻き、波打ち際を闊歩(かっぽ)していた。お供は、使い魔の黒猫ツバキのみ。当然ながら、連れの異性など存在しない。


 だが、彼女の目に飛び込んでくる景色は……。


 あっちも、いちゃいちゃカップル。こっちも、いちゃいちゃカップル。

 すごい、ムカつく。


(カップルばかりだな、オイ! ふざけんな。ただでさえ暑いのに、海辺の温度がもっと上がるだろうが! 北の氷の海にでも行って、頭も身体も、2人の関係も冷やしてこい!)


 冷やすべきなのは、魔女自身の頭であろう。



 プンプンしているコンデッサへ、ツバキが声を掛ける。


「ご主人様は孤高の天才魔女にゃんだから、釣り合いが取れる男性にゃんて、なかなか居ないのニャ」

「そうだな。ハッハッハ!」

「真実は〝単なるボッチ〟でも、モノには言いようがあるのニャン」


 そんな主従の前に、水着姿の男性が現れる。


「お願いです! そこの美女さん。俺と付き合ってください!」

「え!」「ニャ!」


「俺と一緒に海で泳いでください!」

「ええ!」「ニャニャ!」


「俺と一緒に浜辺を走ってください!」

「えええ!」「ニャニャニャ!」


「俺と一緒にボートに乗ってください!」

「ええええ!」「ニャニャニャニャ!」


 うろたえる魔女と猫。日頃、大言壮語している割には不甲斐ない。


「し、しかし、突然に告白されても、私にも都合が……」

「ご主人様! このチャンスを逃しちゃダメにゃん!」

「頼みます! 今日1日だけ! 1日だけで、良いんです!」


 必死になる男の様子を見て、コンデッサが考え込む。


「1日だけ? 〝お試し期間〟というヤツか。そこまで言うのなら、まぁ……」

「ありがとうございます!」

「良かったニャ。これで、ご主人様にも〝春〟が来たのかニャン? もう夏だけど」



 こうして、その日――


 コンデッサと男は一緒に海で泳いだ。全力で。

 コンデッサと男は一緒に浜辺を走った。全力で。

 コンデッサと男は一緒にボートに乗った。交互に全力でオールを()ぎながら。



「おい! なんで、どれも全力なんだ!? デートとは、こんなに体力を全開にして、やるものなのか?」

 汗だくで荒い息を吐きつつ、コンデッサは男へ尋ねる。


「デート? 何を仰っているのですか? 美女さん。これはトライアスロンですよ」

「にゃ? トライアスロン?」

「ハイ、猫さん。〝泳ぎ・走り・ボート漕ぎ〟の3種目混合レースですね。男女がペアになって挑戦するのが、出場条件になっていまして。一緒に参加するはずだった俺の彼女が、急に来られなくなって、困っていたんです」


「…………」とコンデッサ。

「……ニャ」とツバキ。


「美女さんを一目見て、分かったんです! 〝この女性は意味不明ながら、謎のパワーに満ち溢れている!〟――と。おかげさまで優勝できました。賞金は山分けですね。では、サヨウナラ」


 そのあと、浜辺で見られた光景は……。



 挿絵(By みてみん) 


♢以下、後書きです。


 トライアスロンのレースが終わった後。

 意気揚々(ようよう)と去ろうとする男を、コンデッサが呼び止める。


「ちょっと待て」

「ハイ? なんでしょう、美女さん」

「そこに正座しろ」

「あの、砂が熱いんですが」

「しろ」

「ハイ」

「両手を、地面につけろ」

「砂が熱いんですが」

「しろ」

「ハイ」

「頭を下げろ」

「ハイ……って、美女さん! どうして、俺の後頭部を踏んづけているんですか!?」


 グリグリグリ。


「ああ! 美女さんの足の裏の感触が! 痛いけど、少しだけ気持ち良いかも? しかし、何故、こんな事態に!?」

「教えてあげるニャン」

「あ、猫さん」

「アナタは、ご主人様のプライドを踏みつけてしまったのニャ」

「なるほど! だから俺は、頭を踏みつけられているんですね!」

「ご主人様のハートは、ブレイクしちゃったのニャ」

「なるほど! だから俺は、ハードなプレイを身体に刻み込まれるハメに……っ!」

「あと、ご主人様の体面も泥まみれにしてしまったのニャ」

「なるほど! だから俺の顔面は今、泥まみれ……もとい、砂まみれになっているんですね!」


「ツバキもお前も、取りあえず黙れ」


 しばらく経って、コンデッサは男を解放した。

 その日の夜、コンデッサとツバキは豪華な海鮮料理を食べた。


「わ~い。とっても美味しいニャン」

「くそ! トライアスロンで得た賞金なんて、今日のうちに使い切ってやる!」

「ご主人様も、早く恋のレースに出場できるようになると良いにゃんネ」

「当分の間は、レースはこりごりだよ……」


 ボロノナーレ王国は、今日も平和である。


~おしまい~

 コンデッサのイラストは、ファル様より頂きました! ありがとうございます! 実は今回の話は、頂いたこのFAをもとに考えまして……。

 あと「視点移動」って、ややこして、よく分かりません(汗)。一応、「客観視点」→「キャラ視点」→「著者視点(ツッコミ)」でやってみました。


※トライアスロンとは、ギリシャ語由来で「3つの競技」を意味します。種目内容は基本的に「水泳・自転車・長距離走」ですが、ここでは「泳ぎ・走り・ボート漕ぎ」となっています。



「ご主人様。アタシは、やったニャン! 4つの作品を仕上げて、宿題を全て提出したのニャ」

「おお、偉いぞ! ツバキ」

「夏休みの宿題、コンクリートにゃん」

「コンクリート……? 宿題を固めて、ど~するんだ」

「間違えたニャン。夏休みの宿題、コンプリートにゃ」


「ご褒美に、ツバキには金メダルをあげよう」

「ニャ~」

「……ご褒美に、ツバキには金目鯛(きんめだい)の煮付けを夕食に出そう」

「わ~い。やったニャン~!!!」

「ツバキは〝キンメダル〟より〝キンメダイ〟を貰ったほうが喜ぶのか……。『猫に小判』『花より団子』という言葉は、やっぱり本当のことだったんだな」



 ご覧いただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
視点移動、なるほど、物語に動きが出ますね。 話が単調になりがちだったり、だれてきたなーっていうときに意識するとよさそう……めちゃくちゃ勉強になります!!! それにしても >だから俺は、頭を踏みつけ…
[良い点] ほのぼのと可愛らしいボケツッコミ&言葉遊びが楽しかったです。 [一言] ツバキはもちろんかわいいけど、コンデッサもかわいいとこありますね!
[一言] 面白い試みですね! いろいろ参考になりました( ˘ω˘ )
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