平原 愛留 4
「あぁ。鍵付きの引き出しの中にあった日記にも書いてありましたね。ふふっ、あれは読んでて中々面白かったですよ?」
「ふぇ?愛留さん読んだの?!」
「えぇ、じっくりと事細かに…軽く諳じて見せましょうか?おほん!『8月14日水曜日晴れ 今日から日記を付けることにした。今日はハイネとお庭でヒロイックごっこをした。ハイネがヴィラルド役を嫌がるので仕方なく僕がヴィラルド役をやった。ハイネがはしゃいで転んで怪我をしたからおんぶしてーー』」
「わーわーわー!ちょっ、本当に勘弁してくださいよ、愛留さん…それどこまで覚えてるんですか?というか鍵はどこで?」
鍵はいつも肌身離さず首から下げていた、と日記には書かれていた。
「坊ちゃまがお風呂に入った時や寝ている時ですね?天音様や桜子様、琉音お嬢様、麗愛と…後は当時から勤めていたメイドは皆読んでますよ?全十二巻、全て十六回ほど回し読みしました。」
「ンノォォオオオー!!!」
廻理少年…すまない。君の赤裸々な日記は家族、使用人に至るまで回し読みされていた。
「ふふふ、まぁ弄るのはこれくらいにしておきまして…本題ですね。先ず明日、坊ちゃまが足を運ばれる異能研究所。わたくしの方でお調べしましたが報告上問題ないと天音様には伝えましたが、ご用心下さい。〈異能略奪者〉と呼ばれる危険人物が紛れ込んでいる可能性が高いです。」
「〈異能略奪者〉?どんな人物なんですか?」
「某国にて無差別テロ、都市破壊を行った指名手配犯です。異能を奪い姿を変え各国を転々としテロ行為を行う危険人物なのですが…その出自に問題が有りまして。」
「出自…?もしかして異世界人か希少種とか…ですか?」
「ご名答です。彼奴の招待は魔人…それも魔王の生まれ変わり…もしくは魔王種本人と目されています。」
魔王の生まれ変わり…?
「それは危険なんですか?」
「今は能力に制限が掛けられており未覚醒なのですが、他者から異能を奪い、力を溜め込み、二年後には完全覚醒する目算です。奴は狡猾で、七つの大罪強欲を冠しています。」
「七つの大罪…ヴィラルドの階級がもしかして関係しているのですか?」
「そうです…少し長くなりますがお聞き下さい。わたくしの世界の話となりますが、七つの大陸にそれぞれを治める魔王が居ました。人族と亜人、魔物と魔族は争いを繰り返し、わたくしは仲裁する立場でした。人族は神の使いであるわたくしの言葉を真剣に考え、魔族は話し半分で聞き流し、その多くは同胞に手を上げる様な短絡的な者が多くを占めていました。」




