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閑話 灰猫

下手くそ関西弁一人称となります

色々突っ込みたい所はあるかと思いますがそういうキャラなんだとご容赦下さい。


ウチは灰猫。孤児だった。この髪が灰色の猫みたいだからって周りにそう呼ばれた。


ウチみたいな子はぎょうさん居ってその日暮らしのいつ死んでもおかしくない毎日やった。オカン達は娼婦と客の関係。


娼婦のオカンがウチを五歳まで育てたんやけど、流行り病でぽっくり逝ってしもうた。


当時は悲しかったけどそれが今の時代では当たり前なんやと天堂家に拾われて知った。


廻理と出会ったのは七歳になる夏の事や。


あの日はごっつう暑うて今でも忘れられへん。


華族様の乗る(えろ)う高級そうな車がウチの暮らすスラムの真横を通った。


『はよ行けや』

そう自分で呟いてたのをよう覚えとる。


やけどウチの呟きは見事に的を大きく外された。


『こんにちは、こんなところで何してるの?綺麗な尻尾だね!良かったらこの町の事を案内してくれないかな?君の事も教えてよ?』


天使のようなふわふわした髪にお仕着せられたような高級の服に身を包み、屈託のない優しい笑顔に包まれた子供の顔を見て、そう喋るとウチの下らない価値観が音を立てて崩れ去った。


そして、その日ウチの猫の額ほど狭い世界には到底考え付きもしない様な、広い世界が目の前に現れた。


それがウチと生涯の主君と定めた廻理との出会いだ。 


廻理は好奇心旺盛でやんちゃな子やった。


〈身体強化〉の異能に目覚めていた廻理は大人相手にチャンバラごっこをしたり走り回ったりするのが好きな子やった。


でもウチには優しかったんや。

廻理にちょこっとでも恩返しできるって。


ウチもお役所で異能を検査してもらってそれが〈癒し手の祈り〉だったことをとても喜んだ。


廻理はいつも怪我だらけであっちこっちに行くものだからお風呂に入る前に治してあげて異能をどんどん成長させた。


ウチは闇森人(ダークエルフ)と人、鼬獣人(ウイーゼリアン)の血を引いていた。


耳と肌色は闇森人、身体と顔、鼬獣人(ウイーゼリアン)の尻尾と身体能力を引き継いどる。


幼い頃は尻尾を引っ込めることは出来へんのやったけど、毎日毎日似たような境遇のハーフ獣人の先輩に言葉遣いや礼儀作法、夜に寝所に呼ばれたらどうするのか等何でも教わって何とか隠せる様にはなった。


三年も掛かったんやけどね。


でも他にも良い事がある。


努力した甲斐あって、それなりの教養と作法、仕事の腕を見込んでくれた平原のおばちゃん…筆頭執事の養子にまで貰われた。


そんな日々を廻理と面白おかしく過ごしていた日々に突如変化が起きよった。


廻理が突然記憶喪失になった。


前日まで山籠りをしていて帰ってきた翌日に何もかもを忘れとった。


普通に帰ってきて、普通にご飯を食べて、お風呂に入ってお茶をして、明日はいっぱいお話しようって決めとったのに…!



何より廻理が行きたいと願っていた桜峰学園を諦めなければいけない可能性も浮上してきよった。


これだけは絶対に回避しなくちゃアカン…!


忘れちゃったんやな、ウチとの思い出も全部…でもウチは諦めない。


ご飯を食べて、ジョギングがてら町を散策したいって言われたから付き合った。


デートみたいで、なんや、ごっつうええ感じやと思うたけどそれもあまり長く続かんかった。


ヴィラルドアラームが起動し、ウチを置いて廻理は行ってしまった。


やっぱり記憶を失っても根元は変わらないのかも知れへん。


でもウチの廻理は一人で突っ走るなんてことはしなかった…ただただ心配だった。それだけが気掛かりやった。


帰ってきたのは翌日の昼過ぎだった。


というか避難所にヒロイックに届けられたのをホロフォの位置情報で確認して迎えに行ったんや。


あれや…誤解を産まない様に言うけど、天堂家に限らず華族の子はお付きの執事やメイドの世話係、そして当主と奥様には位置情報が知られる。


これは過去に強い異能に目覚めた子供が誘拐された事もあり、国の法律で定められたからや。特に男の子には必需品や。


一般市民からすればそんなしょうもない法律より、もっとやるべき政策の一つや二つ有るんやろうけど、しゃーないんやと思う。政治家や華族はお金沢山持ってるし、一般市民には態度が横柄な華族を恨んだり嫌ったりと色々理由はあるやろうな…


話が逸れてもうたわ。まぁウチが言いたいんは何処にいても何をしていてもウチのカッコええ主様の位置は筒抜けっちゅうことや。


頭もナデナデされたし、奥様に堪忍してやってと言われたんなら身分の低いのウチからすれば畏れ多いこと。


今日はなるべく髪を洗わずこの余韻に浸らせてもらおかな?でも匂うと嫌やしやっぱりちゃんと洗お。


廻理、またウチの頭撫でてくれへんかな?


そんな物思いに耽っているとウチのホロフォに連絡が。筆頭執事の平原のおばちゃん…ウチの義母が言うには今夜にでも流音様が帰ってくるという。


これは急いで準備せな。


失態を見せたら麗愛(れいあ)お姉さんにグチグチ言われたあと玩具にされて弄れてしまう。

ウチ、あの人苦手なんやけどなぁ…


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