三道家
「ならば、家族総出で行くとしようか。使用人も含め親族も集めて貸し切るか?…もしもし、陽佳か?私だーー」
桜子母上も何故か行く気満々だ。
天音母上は…あ、予定を確認している。
行く気だわ、これ。
桜子母上、誰に電話してるんだろ?
と、そんな疑問に姉さんが答えてくれた。
「ん?あぁ、母さんはジョイクリエイト社の日本支社CEOの、岸村 陽佳氏と大学の友人でな。その縁も有って株を購入したり、たまにあぁやって岸村氏に電話してミミックランドを貸し切って接待なり身内の祝い事なりを催してるんだよ。最後に廻理が参加したのは一才の御披露目の時だったから知らないか。」
「へぇー。桜子母上の言ってた親族ってどの辺りまでなんだ?」
「陸、海、天の三道家と主筋に当たる善道もだろうな。まぁ流石に善道は分家辺りが代理で来るだろうが廻理の桜峰入学や天羅の大学卒業、様々な慶事が重なった今がアピールの時だと判断したんだろう。」
ん?三道…?俺はそんな名前初めて聞いたが
いや、待て。最近聞いた覚えが…
海道…あ、潤也のことか!
ってことは潤也って俺の遠い親戚なのか。
あの時声を掛けて正解だった、仲良くなれそうだしな。
「姉さん、そもそも三道ってなんだ?俺初めて聞いたんだが。」
「まぁ、知らないのも無理はない。当主になる嫡子に色々と語り継がれているからな。元は世界大戦時代、国を平和に導いた陸海空の三部門の総帥やそれに近しい役職の者、その子達が立ち上げた家だ。名の通り陸海空を表していて私はその14代目ということになるかな。まぁその未来も廻理と天羅に脅かされそうだが…な。フッ…弟妹が優秀すぎるのも考え物だな。」
俺の将来の目標か…
うん、先ず家を継ぐのはないな。
俺はヒーローになって成り上がりたい。
けど俺に生活能力は皆無だし。
かと言って実家の世話になるのは違うだろう。
英雄連を越える組織を作る…
うん、それが一番しっくり来るな。
「いやいや、俺は姉さんの未来を脅かすつもりはないし、家は出ていくつもりだぞ?もちろん縁を切るなんて考えてないし、遊びに来るつもりだ。天羅はどうか分からないけど直接本人に聞いたらどうだ?」
「あたし、そーゆーの無理!実家で自堕落な生活をしていたい!」
「流石に自堕落な生活は感化出来ないな。だがそうか。お前達がそういうのであれば要らぬ心配だったな。」
姉さんは少し嬉しそうに微笑んだ。
何かしらの葛藤やら重圧が有ったのかも知れない。
「もうこんな時間か。そろそろ私は寝るか。お前達も夜更かしせずきちんと寝るんだぞ?まぁ仕事もないだろうがな。」
「頑張れ、社畜ー」
「よっ!桜峰の期待の星!」
「茶化すな、全く…おやすみ。」
嬉しそうな笑みをほんのり浮かべた姉さんは自室へと戻っていった。
「そんじゃ、俺も一風呂浴びて寝るかねー」
「えー、お兄ちゃんも一緒にベガの動画見ようよ?」
「何が楽しくて自分の動画を見なきゃ行けないんだ。勘弁してくれ…姉さんの話聞いてなかったのか?天羅も早く寝なさい。」
「うー…仕方ないなぁ…じゃあさ、明日アカリちゃん連れて買い物行こうよ!清奈と灰猫さん連れて五人で!」
「んー?まぁそんくらいなら別にいいか。11時に出るからちゃんと寝とけよー?」
「やったー!お兄ちゃんの奢りだよね?」
「まぁ、そうだな…それで良いから今日は寝てこい。」
「はーい!」
少し厳しいが…何とかなるだろう。
そんな風に考えていると話を聞いていたのか桜子母上が近付いてくる。
「廻理、明日出かけるのか?」
「まぁ、聞いての通りです。アカリの必要品なら俺とハイネだけで賄えるとは思うんですが、天羅も行きたいということなので。」
「そうか。天羅はあぁ見えて兄思いの寂しがりだからなるべく時間を作ってやって欲しい。それと小遣いを出そう。あまり無駄遣いをするんじゃないぞ?」
「分かりました、ありがとうございます!」
んー、桜子母上は話が判る人だな。
この人の期待だけは裏切らないようにしないと。




