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初勝利…からの

暫く走ると少し広い場所に出た。


暫くすると棍棒を持ったカブトムシの顔に二足歩行の羊の身体を持った異形がドシンドシンと近づいて来るのが見えた。


こいつが強欲級って奴か。


所謂上から三番目。


順に出すとーー

傲慢

憤怒

強欲

嫉妬

怠惰

色欲

暴食

となっている。


七つの大罪に準えられていて、今回のボスって事だ。


これは死んだ…かな?ただの受験生が挑んで良い相手では無いことは分かった。


右左と棍棒を振るうのを身体強化ゴリ押しで跳び跳ね、地を転がりひたすら避ける。


これは喰らったらマズい。


向こうが格上。俺の能力が何処まで通じるのかは分かり切っている。


だが、それでもーー


絶対に負けたくない!


否、負けられない!!


『命を燃やせ。自分の信念を貫き通し、志した気持ちを忘れるな。自惚れるな、いついかなる時も己が生きる道を模索せよ!』


俺の大好きだったヒーロー、【偉大なる究極】と呼ばれた存在。


アルテマ・グランディアの言葉だ。


だがこの世界にはアルテマは居ない。ならば俺がアルテマになるだけだ!



「ふぅ…行くぞ!〈変身(メタモルフォーゼ)〉ッッ!!【モードアルテマ】ァア!!」


俺の身を白の戦闘スーツが包み込む。


太いベルトには竜の紋章。


輝く五芒星が左胸(しんぞう)に煌めいている。


顔を包むは竜の仮面。


腰には炎の剣アグニがぶら下がっている。


「行くぞッッ!」


強欲級…羊カブトに肉薄し拳を握り振りかぶる。〈身体強化(エンハンスドボディ)〉全開で殴り付ける!


「うおおぉぉおらぁー!!」


俺のパンチは顔面を狙ったが、咄嗟にガードをした羊カブトの左腕に命中。


相手の左腕を殴り砕いた。




「クソッ、ガードくらいするよな…何ッ?!」 



グルルルァラゥアー!!


ごちて気抜けしていた瞬間凄まじい程の大音声(だいおんじょう)が鼓膜を突ん裂く。


その瞬間敵の身体がどんどんと赤黒く染まっていく。


「な…なんだよこれ…さっきと別物じゃねえか!舐めやがって!」


その姿は激変していた羊の毛は触手のようにうねり、顔はクワガタの顎が追加され更に前足はカマキリの鎌を象っている。鞭のようにしならせた触手と鎌で俺を左右に激しく攻め立ててくる


「ふざ…けるな!なんだよそれ!絶対ぇ負けねえ!」


身体強化を全力で使い距離を稼ぐ。


熱くなるな、そんなの相手の思う壺だ。


オーケイ、クールに行こうぜ。


「い…のちを、もや、せぇ!自身の信念をォ!貫き通しィ!志した気持ちを、わす、れるなァッ!」


アルテマの言葉を叫びながらアグニを引き抜く。


言葉は熱く、気持ちは冷静に。


原作でも数えられるくらいしか抜かれなかったが、コイツはそれくらいの強敵だろう。


「これでも喰らえ!【炎竜光波斬(えんりゅうこうはざん)】ッッ!!」


アルテマの限りある遠距離攻撃技の一つ、【炎竜光波斬】。


天高く構えたアグニを真下に振り抜き、炎の斬撃を飛ばす技だ。

相手は死ぬ。(公式説明文)


グロォオアァァアー!


変則羊カブトの体毛が燃え盛り、やがて肉、骨、内臓、血が消し炭となって消える。


本当に死んだわ。


「はぁ…はぁ…勝て、た」


変身が解け、頭がふらつく。


あ、これダメなヤツだわ。


俺、死ぬのか…?…


あれ?誰か来…た…


「少年よ、よくぞ戦い抜いた。ワタシが来たからにはもう安心して良い。今は休み給え、我が名はーー」





目が覚めると俺は避難所に居た。


目覚めるまでもしもあの体験が夢ならば…


と思っていたが、俺が有志者に預けたお婆さんが俺の顔を覗き込んだのを見てこれが現実なんだ、と思い知った。


「坊や、目が覚めたのかい?丸一日寝てたんだよ?坊やのお陰であたしゃ生き延びちまったよ!ありがとね!」


「一日?…いえ、無事で良かったです。ーーお婆さん、俺は何故此処に?」


お婆さんの言葉が引っ掛かりホロフォの時間を確かめると翌日の昼過ぎだった。


「覚えてないのも仕方ないねぇ、あんた気絶してたからしょうがないさ。坊やが助けたっていうお嬢ちゃんもさっきまで居たんだけどねぇ。英雄連の人に連れてかれちまったよ。」


英雄連…知らない単語だ。


「すみません…まだ記憶が混濁してて…差し支えなければ英雄連とは何か教えてくれませんか?」


お婆さんによるとこの国ヒノモトで活動するヒロイックの統括団体だという。


活動目的は全てのヴィラルの根絶と国の平定。


膨大な思想では有るが、俺が桜峰に所属し無事試験に合格すれば所属する事になるかもしれない団体の一つーーということらしい。


他にも活動する中小規模の団体もあるが、覇権は英雄連が握っている。


俺の目的には不要な団体、つまり仮想敵だ。


「そうなんですね、教えてくれてありがとうございます。ーーそろそろ行かなくちゃ。ヨネさん、お話聞かせてくれて有り難うございます!」


「カイちゃんも頑張ってね!応援してるよ!」


お互いの名前を知り話を交わせば気安い言葉の一つや二つ出てくるもの。


お婆さん改めヨネさんと別れを終えると俺は屋敷に向かった。


「ここまで酷い事になるなんて…」


避難所から近くも遠い距離にある戦場となった赤碕通りを見ると元の面影もない瓦礫の山だった。


あの時点で羊カブトを何とか倒せて良かった。そう一人ごちると俺の目の前に高級車が止まる。


「坊ちゃまお迎えに上がりました。お屋敷に戻るまで小言の一つや二つ、お覚悟下さいね?」


ホロフォの位置情報で俺の居場所を特定した灰猫が颯爽と高級車から飛び出すと、俺の姿を視認した瞬間そう告げた。


まぁ…心配掛けたし、そのくらいは甘んじて受けよう。


だが、走る車の中で正座は勘弁してくれませんかね?


そうですね、ごもっともです。ーー誰か助けてぇぇええ!


「やっと終わったーーこれが…自由!!」


「何言っとんねん、このド阿保ォ!自由になりたいならウチが止めさしたろか?あの世に送ったろか、あん?」


やだ、怖い。


灰猫の言う自由ってこの世からの永遠の解放ですよね?


俺、人生を謳歌するって決めたばかりなんですけど。


「ははは、()い奴め。ちこう寄れ。その(こうべ)を撫ぜてやろうぞ。」


「うへへ、良い子良い子してくれるん?なんや、昔に戻っーーはっ、失礼しました、坊ちゃま!失言を御許しください。」


コンコン、とノックの音が響く。


「すまんな、邪魔するぞ。廻理、調子はどうだ?」


「えぇ、父上。大分回復しました。記憶は戻りませんが…」


灰音には母さんが当主と聞いていた。

だから父上とお坊ちゃんらしく言ったのだが何か微妙な顔をしている。


「父上…か。嬉しいんだか悲しいんだか…これでも女なんだが…そうか、女には見えないんだな。」



衝撃の事実、ダディだと思ってた人は女性だった。


名を旧姓 《西園寺 桜子》という今の出で立ちには全く掠りもしないお嬢様っぽい名前をしている。


確かに体つきは女性のもので髭もなく若々しく凛々しい。


というか見れば見るほど女性的な仕草や体つきだった。何故気付かない、俺の鈍感め。


言動に騙されたがそういや男女比1:5だったわ。


言動に騙されないように気を付けなきゃな。


ダディ改め我が母桜子は改名し、今は天道 桜嬭(おうじ) (御歳《34》歳)と名乗っているが立派な女性だった。


そしてマミー《天道 雨音(アマネ)》が現当主だということが分かった瞬間だった。


ちょっと一人にしてくれないかな?衝撃で押し潰されそうだ。


これからは桜嬭母さん、雨音母さんと呼ぶことにした。


尚、俺には姉と妹が一人ずつ居るという。


姉は英雄連に所属する一流のヒロイックで現在は北海道に遠征しているが遠征が終わり次第、折を見て俺の顔を見ることが桜嬭母さんから伝えられた。


何やら溺愛されてるという怖い情報も聞いている。


姉さんか…前世?(で正しいのか分からないのだが)では一人っ子だったから少し楽しみだが…どう対応していいのか不安でもある。


名を流音(るね)19歳と言い、《破壊者(ブレイカー)》の二つ名で呼ばれ活動しているらしい。


破天荒で怒りやすいという追加の情報(ダメージ)も得た。



そして妹の天羅(てんら)13歳はフランスに留学中とのこと。


前当主の天音母さんの祖母母?がそっちにいて間もなく留学を終え帰ってくるとのこと。


とんでもなく優秀であっちの大学を卒業したんだとか。


性格はわがままで俺に時折キツく当たっていたがシスコン気味な対応が原因だという。


だが姉の前では大人しかったという。


多分…流音→廻理→天羅の順に無限ループでお互いを可愛がっていたんだろうな。


両者共にとんでもなく地雷の匂いがぷんぷんするが向き合わなければならない存在なのは確かだ。


まぁその時の俺に丸投げしよう。



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