桜峰学園 受験編7
「うおっしゃあぁぁア!合・格・だァ!!そして…気持ち悪ぃ…」
あの椅子どうなってんだ…
行きはそこまで速度出てなかったのに帰り道だと速度六十キロに加え左右回転し出したし…
どこのジェットコースターだよ…
誰も乗んねえよこんなの…
制作費の無駄だ、こんな遊園地…
潰れちまえ!
勘弁してくれマジで…
嬉しいのと気持ち悪いのとでぐっちゃぐちゃだよ、俺の心は…
絶対悪意有るだろ…
「ん?何だこれ?」
四つん這いの状態から立ち上がると椅子の背凭れの裏部分に紙が貼ってあった。
『連絡してね♡美守』
廿楽先輩の連絡先…か?いつの間にこんなもの…まぁ、折角だし取っておこう。
「んん?おぉ、橘さんも戻ってきたんだ?」
「はい。天道君は…大丈夫ですか?気分が優れなそうですけど…?」
「あぁ…ごめん!唐突にジェットコースター乗せられたみたいにすごい挙動されたから…でも、入学は確定らしい。学園長直々に告げられた。」
優しく背中を擦ってくれる橘さん…あったけぇ…あったけぇよお…!
「ジェットコースター?私は別に普通だったけど…おめでとうございます!」
「解せぬ…!けど、ありがとうな。あ、そうだ!話の続きもしたいし、少しお茶しない?そこなら他の受験生も絡んで来ないでしょ?」
ちょっとチャラかったか?
…でも話したいし、このくらい良いよな?
命の恩人なんて言えた柄じゃ無いけどこうして新しい人生で初めて俺が役に立てた…
助けた人間なんだ。
是非とも仲良くしたい。
「私は大丈夫ですけど、あまりそういうのは止した方が良いですよ?勘違いされますから…!」
「ん?勘違い?何のだろ?…まぁ、いいや。次の受験生が来る前に行こう!」
俺は少し強引に橘さんの手を取る。
此処に居ると椅子の悪夢がまた俺を襲うかも…なんて考えてしまい吐きそうだ。
この場からさっさと離れよう。
「きゃ…!えと、はい。ごめんなさい、驚いちゃって。なんか…助けてくれた日の事を思い出します…!」
「あれから約一ヶ月か…早いね!」
ん?一ヶ月…何か大事なことを忘れてる様な。
ホロフォを確認する。
今日は2/14…バレンタイン…じゃなくて…
…あ、完全に忘れてた!
それから一時間くらい駅近くの喫茶店で軽食を取りながら話し込み、連絡先を交換し、俺は少し買い出しをして家に帰った。




