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桜峰学園 受験編6

『これより面談を開始します。部屋毎に声を掛けますので着席しそのまま御待ちください。』


ん?着席して待つ?

結局座ることになったか…

まぁ、良いとして。

とりあえず橘さんの隣が空いていたのでそこに座る。


A.B.C.と呼ばれていきしばらく待っていると俺達の部屋Sルームと表示される。



その瞬間、椅子の横から黒い帯が俺達を固定する。


突然の事で何も反応出来なかったが泣き出したりパニックになっている受験生も数名居た。


不安そうな表情を浮かべる橘さんが視線に入った。


少しでも気持ちを和らげる様に笑い掛けながら大丈夫だ、と励ます。


何らかの恩寵で俺達は固定されたのだろう。


そんな思案をしていると浮遊感…

椅子が落下していき固定された俺は身動きが取れない。


行動に移すべきか…?


いや、仮にも名門と名高い桜峰だ。


ヴィラルドの侵入などまず無いだろう。


元プロのヒロイックや現役の姉さんなど沢山の目が光っているこの学校に敵襲なんて有り得ない。


ならば…内側の人間。


つまり学長、生徒会長…

学園に連なる者の仕業、恩寵だろう。


じゃあ危害は無さそうだな。


落ち着いておこう。




俺の予想通り何事も無く椅子の移動は終わりとある空間に辿り着いた。


真っ白な世界…目の前には長テーブルが一つに二人の人物が腰かけている。


一人は…学長だろうか。

四十代くらいの女性だ。


もう一人は見覚えがある。

廿楽先輩だ。

俺の視線に気付いたのか小さく手を振っている。


どうして此処に?

もしかしてそういうこと?


「ようこそ、私が学園長の鈴見 恵加(けいか)です。」


「先程ぶりですね天道君。生徒会長の廿楽 美守です。早速ですが面談を始めますね。貴方のお名前と受験番号を教えて下さい。」


あー、予想が当たった廿楽先輩、生徒会長だったのか。


「はい。天道 廻理、受験番号は01234です。」


「確認しました。では問います。天道君、当校を受験した目的と志望動機、貴方の夢を聞かせて下さい。」


うおッ!いきなり聞くのか…

でも答えない訳にはいかないよな。


すぅ……よし。


「はい。俺…いえ私は英雄に憧れています。

弱気を助け、強気を挫く勧善懲悪。

そんな世界に興味があります。

私の姉、天道 流音は序列五位のヒロイックであり、私の誇りです。

強いものだけが得する世界ではなく弱きものに手を差しのべ肩を並べる。

先日私は街中を歩いてるとその町がヴィラルドに襲われました。

私は力を振るい二名の救助者を助けました、そのうちの一人に先程再会しました。

その時の事を思い出したんです。

彼女が震えながら支援者への報酬を口にしたのを…私はそれが辛かった。

はっきりと断りました。

そして支援者制度の愚かさに気付いたのです。

いつか私はヒロイックの頂点に立ち英雄連の掲げる支援者制度を打ち壊します。

本物のヒーローは見返りを求めない…

助けられ、家や家族を失った人が搾取されるような今の狂った日常を私は変えたいのです。

……だから俺はヒロイックを目指します。

ただ成るだけじゃなく頂点を極めて内側から変えたいんです。

…すみません長く話しすぎました。

以上です。」


「なるほど…英雄連に連なる私や連合の会長の娘である廿楽生徒を前にそこまで堂々と言い切るとは…流石はつかみどころの無い雲のようと例えられた天道の者ですね。」


雲のようと例えられた天道…か。

姉さんなんかもそんな感じだな確かに。

というか廿楽先輩って英雄連の会長の娘さんなの?


「え?あ…すみません…少し熱くなりすぎました。」


「誉めているんですよ、謝らなくて結構です。」


「え?あ、はい。光栄です。」


この学園長さんはいい人なんだろうな。

俺の一挙一動を見てニマニマ笑っているのが少し気に食わないが…。


「学園長、私は彼の考えに好感を持てます。彼の熱意はこの学園を、日本を、世界を席捲すると確信しています。筆記試験、実技試験共に満点を叩き出す優れた人物と言えるでしょう。少し世間知らずでお茶目な所は有りますけどね?フフッ!」


「廿楽先輩…!」


俺満点評価だったのか…!

後で麗愛さんに詳しく聞こうっと。


「宜しい、天道 廻理君。貴方桜峰大学附属桜峰女学園に相応しき人物と言えましょう。今此処で貴方の合格を言い渡します!」


「はぇ?ご、合格ですか?」


「ええ、四月にまた会える事を楽しみにしています。それではまた。」


学園長の最後の言葉を皮切りに椅子が唸りを上げる。


え、これ動く?

終わりなのか?

一言くらい言っておくべきだろうな。


「ちょ…え?えっと…あ、ありがとう御座いました!うおぉおああッ!ひぃん!」


俺は感謝を告げ遠くなる廿楽先輩に手を振られながらその場を去った。


学園長と廿楽先輩が何か言っていたかも知れないが俺の情けない悲鳴と移動速度が早すぎて何も聞こえねえ。


▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼



「今年は[三道]が揃い踏みですか…面白い事になりそうですね」


学長がポツリとそう溢す。

私は学長の話に同意した。


「そうですね、学園長。天道、海道、陸道。華族界の風雲児達…でしたか。確かに流音先輩も想定外の行動をしていました。私の同級生の陸道さんも風紀委員長ですし…」


流音先輩…凄く頼りになるし、気付いたらランキング五位だし…


あの人の弟なら何かやらかしそう。


学生のうちにプロになっちゃったりして…

なんてね?



「天道 流音さんね。今年から生徒会担当になったから仲良くしてやりなさい。陸道さんは少し思い込みが激しいけど根は真面目ですからね。」


おぉ…流音先輩生徒会担当になったんだ?

と、言う事は麗愛先輩は…風紀委員担当かな?


結構精力的に活動してたし…

よく流音先輩、風紀委員会とトラブってたっけ…フフ、懐かしいなぁ!


「ええ。何事も無く私は卒業出来るでしょうか…少し不安ですね…」


「ウフフ…」


学長…怖いよ、その笑い…

せめて何か言って欲しい…!うわぁーん!



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