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桜峰学園 受検編5

数名の受験生達に合流し誘導員と書かれた腕章をしたSの旗を掲げた先輩らしき人の案内に従い後を付いていく。


ひぃふぅみぃ…全員で二十名か?


一行はSルームと書かれた部屋に到着した。


「此方で待機していてください。二時に最終工程の面談があります。」


待機場所に到着し、各々話したり緊張して俯いたりと時間を過ごし始める。


手持無沙汰になった俺は案内してくれた誘導員の人に声を掛けてみることにした。


薄青い肩に掛かったくらいの長さの髪に優しそうな黒い瞳。


胸元には〈調律〉の文字が刻まれたブローチをしている。


「すみません。ちょっと話し相手が欲しかったのでお話させて頂いても良いですか?」


「えぇ、構いませんよ?私もこの後予定までの待ち時間が少しあるので是非お話しましょう!」


優しい人でよかった。


「ありがとうございます、まずは案内していただきありがとうございます!あの、学園の先輩…ですよね?今日は先輩方は休日と聞いてるんですが、受験生の対応をしてるんでしょうか?」


「ええ、私は二年の廿楽(つづら) 美守(みもり)と申します。教員方が多いと言っても二千人近くの受験生に対応することは出来ないので私達、生徒会や風紀委員会、部活動連合の百名近くで各々対応しているんですよ。」


「私達、ということは廿楽先輩は生徒会の方なんですね!まだ気が早いかも知れませんが入学出来たらその際は宜しくお願いします!」


「この〈調律〉の文字のブローチが生徒会の証なんです!天道君ならきっと入学出来ますよ!その時は是非生徒会に入って頂けたら嬉しく思います!というかこよSルームに案内された子達は未来の生徒会候補で…あ!いけない、そろそろ時間だわ…?面談頑張ってね!」


「あ…俺の名前…えと、はい、考えておきます。廿楽先輩、重ね重ねありがとうございます!またお会いしましょう!」


「天道君とっても目立ってましたからねー。はい、また会いましょう!まぁ…すぐに会えるでしょうけど、フフ…!」


すぐに会える…とはどういう意味だろうか?廿楽先輩の背を見る目を離して時計を見る。


面談は二時からだから…


よし、あと十分だな。

座ろうかと思ったがこの際立っておこうか。

壁際に寄り背を預け立っていると一人の少女が熱烈な視線を送ってくる。


「えっと…何か?」


「あ、やっぱり気付いてないや!まぁ仕方ないか…あの時は助けて戴いてありがとう御座いました。今こうして生きていられます。」


「え…?助けた…もしかしてあの時の?」


助けたというワードで一つ思い当たる節がある。


俺がこっちの世界で目覚めたその日、町がヴィラルドの襲撃に遇った。


お婆さんを助けたその後、救援信号を辿った先にいたあの少女だろうか。


「あの時はボロボロだったし、生きるのに必死でした。名乗らずに姿を消してごめんなさい…私は橘 夕海です!」


「橘さんか、俺は名乗ったのか忘れたけど、天道 廻理だ!宜しくな?」


「はい、カイさんって名乗ってました!」


思い出してきた。確か(ども)っていた筈だけど、極度の緊張と疲労があったのだろう。彼女の名誉を護るために何も言うべきではないな。


「あの後俺が目覚めたら英雄連に連れていかれたって聞いたけど家族は大丈夫だった?」


「はい、町もあの状態だったので避難所で仮設住居を申請したんです。家族は皆あの時に…」


「辛い事を思い出させてごめん…そろそろ時間か。もう少し話がしたいから連絡先を聞いても良いかな?」


無神経に辛い事を思い出させてしまった。これはお詫びをしないとな。


まだまだ話したいし連絡先を聞くくらいなら大丈夫だよな?


「あ…気にしないで下さい。お母さん達、英雄連所属で働いてたし、いつかはそうなるって予め覚悟はしてましたから!あ…私の連絡先を渡すのは良いんですけど、少し周りを見た方が…かなり誤解されてますよ?」


「ん?」


橘さんに言われて周囲を見るとキャーキャー言ったり、他の受験生が紙とペンを用意し始めている。うわ…マジか!


「ナンパよ!ナンパ!ドラマでしか見たこと無い!」


「彼なら私の連絡先受け取ってくれるかしら?きっと受け取ってくれるわよね…あ、あの!」


「すみません…そういうのは困ります。俺は彼女の今後の事を軽く聞きたかっただけなので受け取れません。」


軽率過ぎた…反省しないと。


何とか分かってくれた受験生に対応を終え橘さんに謝る。


「ごめん、配慮が足りなかった。とりあえず面談が終わってからその件は話そう。もうすぐ始まる!」



「分かりました。」


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