桜峰学園 受験編2
さて、黙って成り行きを聞いていたがこちらに気を遣ってくれた二人の同性の受験生に声を掛けてみようか。
「ども、俺天道 廻理。お二人さんも受検かい?奇遇だねぇ。君たちの名前と聞いちゃったりしちゃったり?」
「あ、どうも。なんかやたらテンション高いですね…アハハ、僕は祐天寺雅人です。よろしくね。」
「海道潤也だ…宜しく。」
礼儀正しそうなのが祐天寺君にクール系のが海道君か…男子で桜峰を受験するならかなりの学力とそれなりの家格なんだろう。
「祐天寺君に海道君、宜しくぅ!二人はどうして桜峰に…って聞くのも野暮だよな、すまん!」
「大丈夫だよ!僕は理事長の息子なんで…コネで入ったとは言われたくないからちゃんと受験してるんだ。」
「ほへー、祐天寺君はしっかりしてるんだなー。」
「そ、そんなことないよ。僕は自分にあまり自信がないから度胸を付けたいって思って…少し女の子は怖いけど…」
「まぁ目標があるのは良いことさ!これから慣れていけばいい!海道君の方は?」
「目標に辿り着くには桜峰が一番近かったから。俺はランキングで一位を目指している。あとジュンヤでいい。」
「あ、僕もマサトって呼んでよ!」
「オッケー!ジュンヤは面白い奴だな!あ、俺もカイリでいいぞ!俺も同じ理由だ!世界に俺の姿を見せ付ける!お互い頑張ろうな!」
と、話しているといつの間にか葉倉先生が俺の背後に立っていた。
「あら~!男の子は打ち解けるのも早いですねぇ~!うんうん、良いことですよぉ~!あ、私の事はお気になさらずぅ~。」
「うわっ!びっくりした…!葉倉先生、脅かさないで下さいよ!」
「ふふぅ~!あと!ミナト先生って呼んでくださいね!じゃないと受検させません!何て冗談ですよーフフフゥ!先生は隠密が得意なんですよぉ~!それより予習はもう良いんですかぁ~?」
「家で全て頭に叩き込んできた。俺は何時でも大丈夫です!」
マサトとジュンヤも頷いている。
それを確認して先生に視線を送ると嬉しそうにニマニマしながら俺達の前に立った。
「それではこれより筆記試験を開始します。端末は電源を切り机の横にある箱へ。回答用紙を配ります。…問題用紙を配ります。……それでは試験開始!」
ついに試験が開始した。
簡単な問題から順番に潰していく。
簡単な文章問題、計算式、化学式、一般教養などを埋めていく。
問29 英雄連公式発表、今年二月時点のヒロイックランキングを正しい順番で一位から十位まで答えよ
簡単だろこんなの。
小学生でも答えられるんじゃないか?
まぁ小まめにチェックしてないと難しい…のか?
斬界、
氷月、
処刑者マリー、
グラビティ・ララ、
ルミオン、
シューティング・スター、
朱寝、
転燐、
サイバーダイバー、
百華の順だったか。
あれ?姉さんは五位に昇進するって聞いてたな…
けど、公式にはまだ情報が上がってなかったっけ?
でも二月付けと言っていたから姉さんは五位で正しい筈。
入れ換えておくか。
これで…よし、と。
問38 敵生体ヴィラルドの位階を高い順に正しい順番に並び替えよ。
7位階 傲慢
6位階 憤怒
5位階 強欲
4位階 嫉妬
3位階 怠惰
2位階 色欲
1位階 暴食
よし、楽勝。
問50 【原初の恩寵】を授かりし少女の名とその能力を答えよ
・・・分かるかァ!
今から百年以上前の人物の事なんか知りませんッ!
名前まで覚えてねえよ…さっきチラッと、見たけど…思い出せ~思い出せ~!
…確かフランス人の戦場看護士だったっけか。
フランスと言えばそろそろ妹の天羅がフランスから帰って来るって桜子母上が言っていたな…
思考が逸れた…試験に集中しなきゃ…!
…エ、エヴァなんちゃらだったっけ。
エヴァン…ジェリン?確かそうだ。
エヴァンジェリン・ヴァレンタイン
だったか。
能力は…祈りだっけ?
そうだ灰猫たんと一緒の〈癒し手の祈り〉と〈聖女〉だったか…
見といて良かった、ラッキー♪
最後にきちんと見直して…と。
ここでタイムアップだ。
「はい、時間切れです。最後に名前の部分だけ確認して先生に提出してください~。」
あー…間違えたかな?
最後の問題だけモヤったけど、合格ラインまでは達している筈。
この後は実技審査だっけ?
「は~い、回収が終わりましたので15分の休憩後にぃ~第三体育館へ移動しま~す。」
良かった休憩が有るのか。
今のうちにモヤモヤを消化しておこう。
まずはヒロイックランキングっと。
うん、しっかり二月付けで姉さんが五位に昇格してる。
原初の恩寵の歴史は…っと。
お、名前合ってた!
恩寵は…よし、大丈夫そうだな!
だぁ~…見落としあったか…?もう少し早く見直すべきだったな。
余計な思考で時間使いすぎたかも…
もう答案も回収されちゃったし、悩んでも仕方ないな。
切り替え切り替えっと。
「カイリはテストどうだった?」
マサトから話しかけられる。
「おう、まぁ合格ラインは突破出来たと思うぞ?少し不安は残るが八割は固い!」
「流石だねぇ…ジュンヤは?」
「抜かりない。だがカイリは終了後何かを確認していたよな?何が気になったんだ?」
「ヒロイックランキングと最終問題だよ。確か姉さ…シューティング・スターが五位に昇進したのって一月時点だからそれが反映されているのか気になってな。本人から聞いたんで公式に反映されているのか気になってさ。最終問題は殆ど勘。合っているか分からなかったけど落としたっぽい。」
「え、マジか?……あぁ、くっそ…一問外したわ俺。公式なんかあまりチェックしてねえからさ…てか本人から聞いたって…?」
「僕もだ…それよりやっぱりさっき居た教員って本物のシューティング・スターなんだね。カイリのお姉さんなんだ?」
「あぁ、強くて優しい自慢の姉さんだよ。サインは今度貰ってきてあげるよ、ハハハ!ちゃんとマサトの名前も入れて貰おう!」
「僕大ファンなんだよ!やったー!」
マサトは姉さんのファンなんだろうな、話の食い付きが凄い。
ジュンヤも耳がピクピクしてたから多分そうだろうな。
サービス精神旺盛な姉さんなら二人分のサインくらいパパッと出してくれる筈だ。
後で頼んでおこう。
そんな他愛ない話をしていたけど、移動の時間になった。




