074 ウォーターダンジョン
ダンジョンの入場方法は様々だ。
シンプルな奴は地下室に続く階段があって、そこから入っていく。
他には地面に転移魔法が施されていて、足を踏み入れた瞬間、飛ばされることもある。
森、火山、山、数えきれないダンジョンがこの世界にはある。
そして俺たちはその一つ、水の神殿に足を踏み入れようとしていたのだが――。
「……本当にここで合ってるのか?」
「みたいだね。もしかしてヴァイス、泳げないとか?」
「バカが、そんなわけないだろ」
俺たちの前にあるのは、小さな湖だった。
森の中にポツンと存在している。
指定された地図にはこの中だと書いてある。
俺たちは全速力でここへ来た。
間違いなく一番乗りだろう。
「どうやって入るんだろう? 入水するのかな?」
……深い記憶を呼び起こす。
そういえば、こんな感じだった気もする。
サイドストーリーの細かいことなんざいちいち覚えていないが、実際に目のあたりにするとは思わなかった。
「アレン、そこの前に立て」
「え? なんで?」
「いいから、立て」
「わ、わかった。押さないでよ!?」
「ああ、押さない」
アレンは、バカ正直に立つ。
こいつ、フリか? いや、バカか。
「――じゃあな」
「え、えええ!?」
するとアレンは、湖に突き落とされる。まあ、俺にだが。
そして――。
「……出てこないな」
「もしかして、溺れたとか!?」
「それでもいいが、おそらくここで合ってるってことだ。いくぞ、カルタ」
「え、わ、わかった」
「……何してる、行かないのか」
「え、ええ!? ヴァイスくんどうぞ!?」
「俺はレディーファースト主義者だ」
とは言ったが、さすがにこれはダサいな。
俺は勇気を振り絞っ――いや、気軽に飛び込んだ。
もちろん、鼻はつまんだ状態で。
「……なるほど、ここがダンジョンか」
景色が切り替わるかのように、地下室のような場所に飛んだ。
かなり広いが、柱のようなものが立っている。そのどれもが……水?
「ねえ、押さないはずだったんじゃないの!?」
ああ、そういえば主人公忘れていた。
「肘が当たっただけだ」
「……ならいいけど」
デュークもそうだが、こいつらはなんでこんなにバカ正直なんだ?
あやうくツッコミそうなのを抑えるのが大変だ。
そしてすぐにカルタがやってくる。
もちろん、鼻をつまんでいた。
「溺れるううううううう」
「なわけねえだろ」
「……ふえ? あ、良かった……」
「でもヴァイス、君も鼻をつまんでいた――」
「黙ってろ、準優勝」
「はい……」
このワードは効くのか。いいことを知ったな。
てか、それどころじゃない。
「無駄口を叩くのは終わりだ。頭を切り替えろ。カルタ、お前の飛行魔法は今のところ無理そうだ。後方で支援しろ」
「わかった!」
「アレン、お前は俺と同じ前衛だ。先に一つ言っておくが、ダンジョン内は物資の取り合いだ。他の連中と争いになる可能性がある。その時はどうするかわかってるな?」
これは遊びじゃない。試験といっても、学園内のテストとは違う。
一つ間違えれば死ぬ。それも魔物にじゃなく、他人に殺される可能性だってある。
それをアレンがわかっているのかどうか――。
「もちろん戦う。僕だって、綺麗ごとだけじゃ生き延びられないことは知ってる」
と、思っていたが、いつものニヤケ面はそこになかった。
「そうか、なら言うことはない」
そして俺たちの、ダンジョン攻略がはじまった。
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