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039 デューク・ビリリアン

ノブレス学園の入学を決めたのは、退屈だったからだ。


 オレは自分で言うのもなんだが、そこそこ優秀だと思う。


 身体を鍛えることは嫌いじゃないし、勉学だって苦労せずできる。

 けど……つまらなかった。


 ビリリアン家は騎士の家系で、武功のおかげで爵位を頂いた。


 オレは長男だし、ちゃんとしなくちゃいけないなってことで、まあ面倒な貴族の集まりとかにも参加してた。

 ダンスは嫌いだが、苦手じゃない。


 それに……幼馴染のシャリーと会えるのは楽しかった。


 好きとかそんなのはあんまり考えたことがない。


 一緒にいて楽しいし、あいつは貴族だけどなんか楽なんだよな、俺もよくわかんねえけど。


「デュークって将来何がしたいの?」

「……なんだろうな」


 人付き合いは得意だ。俺自身、誰かと話すのも好きだし、コミュニケーションも高いほうだとわかってる。

 けど、俺にはやりたいことがなかった。


 何でもできるからっていうとウザイだろうが、あえて言うならそうだ。


 でも身体を鍛えてる時は余計なことを考えずに済むし、拳闘の試合をしているときが一番興奮してるかも。ただ将来それ一本でやるか? つうと違う。


 それでもまあ楽しく過ごしてたが、ある日シャリーが平民のアレンってやつと仲良くなった。

 別に嫉妬なんて感じない。どんな奴かなあって思って会いにいったら、こいつがまた面白い奴だった。


 バカにしてるわけじゃないが、大層な夢を恥ずかし気もなく語る。


 貴族の撤廃とか言われても俺は別に気にならないし、まあ理想は大事だよなって感じだった。

 事実、この世界が腐ってることは知ってる。


 気づけば俺たちはよく3人で遊ぶようになった。学園の入学を決めたのは二人がきっかけじゃない、俺もなんか面白いのが見つかったらいいなって感じだったからだ。


 入学式は寝坊したが、流石ノブレス学園、なんとか頼んだら試験は受けさせてくれた。厳しいって聞いていたが、融通は利くらしい。

 まあ俺がビリリアン家だからか? 知らんけど。


「負けた……」


 試験が終わって、アレンが落ち込んでいた。

 こいつがこんなに凹むなんて初めて見た。

 いつも元気で明るいのに。まあ、俺ほどじゃねーけど。

 

「相手はどんな奴だった?」

「ヴァイス・ファンセントよ。デュークも聞いたことあるでしょ?」

「ヴァイスかよ」


 シャリーから名前を教えてもらって、正直かなりびびった。


 ファンセント家の長男、ヴァイス・ファンセント。


 悪名高くて誰でも知ってるやつだ。まあ噂については俺は目で見るタイプだから信じてないが、あそこまで広がってるなら大して間違ってはないだろうなくらいだった。


 それより驚いたのはアレンが負けたこと。

 

 平民、つったらまたあれだが、アレンは英才教育を受けたわけでもないのにすげえ速度で強くなっていった。

 入学するって決めてからの成長速度は、正直笑っちまうぐらい。

 何度も戦って、何度も互いに気絶して、俺たちは親友になった。


 そのアレンが負けた? ……気に食わない。

 それがヴァイスに抱いた初めての印象だった。


 実際会ってみたら、目つきは悪いし偉そうだし、なるほどこいつがヴァイスかって感じだった。

 けどテストで戦ったり、生活態度を見てすぐにわかった。ああ、噂ってやっぱあてになんねーなって。


 俺は努力が好きだ。汗水たらして、食事を自制して、できることを毎日やって、それを反復する。

 

 で、ヴァイスは俺と同じことをしてるんだろうなってわかった。

 シャリーは全然納得してなかったが、あいつも心の底で分かってると思う。


 色々家庭のこともあるから強くは言わねえが、シャリーも頭がいいからな。


 タッグトーナメントでは、あいつはカルタと共闘して首位を取った。


 正直……すげえ悔しかった。


 今までこんなに感情が高ぶったことはない。

 アレンに負けて悔しいと思うことは当然あったが、あいつは天才だなってどこかで感じてて、そんなに悔しいとかはなかった。まあ、ちょっとはあるけど、いや、けっこうか?


 けど、ヴァイスは違う。


 こいつは俺なんかよりも……努力してる。

 それがわかったから余計に悔しかったんだと思う。


 人間にはもって生まれた才能ってもんがある。

 もちろんヴァイスにそれがないわけじゃない。


 ただ、それを超えるぐらいこいつは汗を流して、血を流して、前を見てる。


 確信したのは、ある夜の訓練室だ。

 

 日課の筋肉でも育てようかと思ってたら、あいつは一人で剣を振っていた。

 別にそんなのはこの学園でめずらしい光景わけじゃない。

 気になったのはその追い込み方だ。


 何かを、誰かを、抗うように必死で戦っていた。

 あいつには俺の知らない目標がある。

 

 それを強く感じた。


 そこから俺はヴァイスを密かにライバルだと思ってる。あいつは眼中にないだろうが、まあそれはいい。


 サバイバルで一緒になった時は、正直嫌だった。

 あいつを間近で見れるのはいいが、俺はヴァイスを超えたかった。


 でもあいつはやっぱすげえ。頭もいいし、何よりまっすぐだ。

 シャリーはアレンと正反対だと言っているが、俺はそうは思わない。


 あいつらは一緒だ。正反対に見えるだけで、根本は変わらない。


 ああ、俺は……こいつらに勝ちてぇ。

 気づいたら俺は、俺の目標は決まっていた。


 未来? 将来? そんなのどうでもいい。


 俺は何でもできる、あいつらより人付き合いも上手い。


 でも、そんなのはくだらねえ。


 勝ちたい。学園を卒業するまでに、あいつらに勝ちたい。


 難しいことはわかってる、あいつらを見てると俺は脇役なんだろうなって思う。


 けど俺は、俺なりにあいつらをいつも見てる。


 超えてやる。絶対に。



 俺はビリリアン家の長男、デュークだ。


 筋肉だってあるし、頭だっていい、喋りも上手。


 でもそんなのは毛ほどの意味もねえ。


 俺は絶対、あの二人を超えてやる。


 そんでもって、認めさせてやるよ。


 俺が一番だってな。

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