170 二回目の|夏休み《エスターム》
「――なるほど、魔眼とやらは随分とおそろしいですね」
「はっ、そんな顔には見えないがな。――ゼビス」
ファンセント屋敷、中庭。
俺は、この世界に来て初めてゼビスと手合わせしていた。
騎士団長だったこと、アレンの元師匠だったことは知っている。
だがまさかこれほどまでとは。
「――一撃必殺」
鋭く放つ視えない斬撃。――のはずだ。
だがゼビスは、易々と回避する。
魔法の適正は殆どないという。
だがそれを覆すほどの圧倒な剣技、セシルが俺に見せた速度を超える反射神経で動く。
「遠くから攻撃するだけでは、私に勝てませんよ」
「――ああ、わかってるさ!」
不自然な壁に高速移動の術式を付与し、瞬間、駆ける。
そのまま魔眼を発動させた。
«右に攻撃――回避。左に攻撃――回避»
視えている。だがどれも当たらない。
俺は、ギリギリで正面から刺殺しようとした。
だがそれも、頬をかすめるだけで回避される。
返しの木刀は、俺のみぞおちにクリーンヒット。
驚くべきことだが、ゼビスの攻撃は不可侵領域で防げない。
なぜなら、早すぎるからだ。
俺の防御は常に展開しているわけではなく、攻撃に対して自動で発動する。
つまり魔法が構築される以上の速度で繰り出されている場合、反応しない。
それを、初めて知った。
つうか、それよりもいてえ……。
「なんだヴァイス、それで終わりか?」
「はは、これでも頑張ってるんですけど」
「ゼビスなどただの早いだけの雑魚だ。一発の重みもない」
そのとき、ゼビスの後ろにいたミルク先生が叫んだ。
気のせいだろうか、ゼビスの眉がピクピクと震えている。
手合わせたは交代制でしてもらっていた。
スパルタもスパルタだが、今の俺にとってはありがたい。
「私の番です。ミルク、あなたは黙っていてください」
「はっ、そんな腑抜けた剣技でよく吠えるな」
「……すぞ」
後、ゼビスが結構怖いということもわかったが。






