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【書籍化&コミカライズ】怠惰な悪辱貴族に転生した俺、シナリオをぶっ壊したら規格外の魔力で最凶になった  作者: 菊池 快晴@書籍化決定


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167 スターチス

「うおおおお、肉肉、肉肉ぅ! アレンそれ、もらっていいか?」

「試験が終わっても何も変わらないね。後、あげないよ」

「二人とも全然変わらないね」


 パートナー試験が終わり、食堂はいつもの面子で賑わいを見せていた。

 もちろん継続して二人の関係性が強く続いているやつもいる。


 退学者は六人だった。


 敗北した奴らはポイントが大幅に減り、次の試験により気合を入れることだろう。


 俺もかろうじて勝利はできたが、それが大きな差だとは思えない。

 次の試験も抜かりなく勝つ為、研鑽を積んでいこう。


「ヴァイス様、これ美味しいですねえっ!」


 俺の前では、口にタレをつけながらチキン南蛮を頬張っているリリスがいた。

 昔から今でも頼りになる彼女は、精神面だけでなく、戦闘面でも一流になっている。


「ああ、新作メニューも増えたしな。そういえば……シンティアはまだ帰ってこないのか?」

「見たいですね。連絡は来てないんですか?」

「一度だけきたが、それっきりだな」


 シンティアのところだけが、空席になっていた。

 試験が終わって彼女は、すぐに休みを取った。


 理由はわからず、気づけばいなかった、という感じだ。


 一度だけ魔法鳥で連絡は来たがそれっきり。

 すぐ戻りますので、ご心配なさらず程度だった。


 原作で彼女は、このパートナー試験を経て更にアレンとの仲が良くなる。

 

 もしかすると、何か心境の変化があったのではないのだろうかと、ふと考えた。


 そんな俺の表情に気づいたのか、リリスが声をかけてくれる。


「ヴァイス様、シンティアさんの事、大好きですね」

「あ、ああ。かもな」


 ふと言われて、やはりそうだなと確信する。


 恋愛にきっかけは大事じゃない。

 それだけ育んだか、それが大切だ。


 俺とシンティア、そしてリリスもだが、色々なことを乗り越えてきた。


 普通なら心配なんてしないだろう。

 だが原作を知っているからこそ――。


「ヴァイス様! フルーツ取ってきました!」

「……ありがとな。食べるか」

「はい!」


 いや、考えるのはよそう。



 それからまた少しだけ日が経過、ようやくシンティアが戻ってきた。

 早朝、いつのまにか部屋の扉に書き置きがあった。


 ――大切な話があります、と。


 不安な一方で、仕方ないとも思える。


 結局、変わらないものはある。


 だが俺の想いは変わらないし、もしそうであってもやるべきことは変わらない。


 一生懸命に、ただやるべきことを真っ直ぐに突き進む。

 それが大切だ。


 呼ばれた先は、予約制の個室だった。

 

 とんとんとノックしてはいると、誰もいない。

 だがそこには、たくさんのフルーツやお菓子、そして、花が沢山置かれていた。


「ヴァイス!」

「ん、シンティア」

「遅くなってすみません。ちょっと時間がかかってしまいまして」

「時間?」


 突然、シンティアが抱き着いてきた。

 その横ではリリスが微笑んでいる。


 見たこともないフルーツが並んでいて、気づく。


 そうか、俺の為に買ってきてくれたのか……。


「ありがとな。嬉しいよ」

「ヴァイス。――私はあなたを愛しています。それを言葉だけではなく、誠意として伝えたかったのです。それで……ヴァイスは――」

「シンティア、俺は君を愛してる。気持ちは絶対に変わらない」

「……嬉しいです」


 シンティアの悲し気な表情で、俺は自分がバカだったと打ちのめされた。

 不安だったのは俺だけじゃなく、彼女もだ。


 なぜそれに気づかなかったのか。


 ……ったく、この世界は確かにゲームだが、現実なんだ。


 何もかもゲームに置き換え、目の前の真実に気づかなかった。


 これほど一途なシンティアが変わるわけがないというのに。


 するとリリスが、「いま、いまです」と口パクした。

 俺は、ポケットから取り出す。


「シンティア、これを」

「……こ、これは」

「つけていいか?」


 そして俺は片膝をついた。

 正式な言葉を言うのはまだ早い。それは、全てが終わった後だ。


 だが揺るがない気持ちを伝えたかった。


「これは、とある国の風習でな。婚約者に、変わらない愛を伝える為にするんだ」


 そう言いながら俺は、シンティアに婚約指輪を付けた。

 リリスが調べておいてくれたのでピッタリだ。


 ノブレスにそんな風習はない。だが、俺なりに伝えたかった。


「――嬉しいです。ヴァイス」

「俺もだ。ありがとな」

「えへへ、えへへ! 食べましょう! いっぱいお話もしましょう! 今日は、幸せいっぱいです!」


 リリスが笑顔で俺たちの背中を押す。

 そして俺は、彼女にもプレゼントをした。


 それはネックレスだ。

 変わらぬ感謝をという意味で。


 だが驚いた事に、シンティアもだった。

 リリスが好きな花の形をした指輪、それをもらったリリスは、涙を流した。


「うでじいです……」

「はっ、ありがとなリリス」

「ありがとうですわ、リリス」


 そしてその日、俺はノブレスで決して変わらないものを知った。


 部屋に戻るとき、シンティアが花を瓶に入れて渡してくれた。


 普段あまりこういったものは置かないが、ピンク色で綺麗だ。


 テーブルに置いてふと考える。


 この花はノブレスのだが、現実世界のものをモチーフにしている。


 もしかしたら……。


 俺はそのまま図書室に向かい、花のことを調べた。

 すると、まったく同じ花を見つけた。


 それには「スターチス」と書かれている。


「……そういうことか」


 ノブレスではとても希少な花で、今いる場所から考えると、かなり遠いところにしかない。

 だから休みを取ったのだろう。


「はっ、まったく。――ますます負けられないな」


 本を閉じると、俺はそのまま訓練へ向かった。


 これからもっと過酷な事が待っている。

 彼女を守り切れるように、悲しい結末にさせないように。


 俺は、ただ走り続ける。



 スターチス。

 花言葉、「変わらぬ心」「永久不変」

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