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162 信念と覚悟

 敵はオリンとカルタ、更にトゥーラとセシルだ。

 どっちも一度、ヴァイスたちにやられている。


 だが復帰後、何人か狩っているアナウンスを聞いた。


 倒しても退学にはならない。


 俺たちの点数もある程度把握しているだろう。


 だからこそ、四人で同時に攻撃を仕掛けて来た。


 相手にとって不足はない! 俺は――必ず勝つ。


「リリス! バラけるぞ!」

「はい!」


 俺とリリスが他のペアより優れているところは、単独での行動ができることだ。

 パートナーでありながらも、個々の戦闘に長けている。

  

 それを――生かす。


「逃がさぬよ」


 俺に着いてきたのは、トゥーラだった。

 だが空から気配を感じる。

 

 カルタが上空で俺を狙っているんだろう。


 また、セシルが単独でリリスを狙うとは思えない。


 つまり、どこかに隠れているはず。


「――一撃必殺(ワンヒットキル)


 俺はあえてトゥーラの攻撃を誘った。


 ぐんぐんと伸びてくる視えない刃。

 

 ヴァイスやアレンと違って、たいそうな目は持っていない。


 だが自信があるものもある。それは――耳だ。


「――ハッ、当たんねえよ!」


 たとえ視えなくとも、風切り音は消せない。

 寸前で回避、とはいえ頬に赤い血が一閃走る。ま、こんなもん屁でもねえ。


 合わせて空からカルタがふたたび魔力砲を放ってきた。

 ――待ってたぜ。


「――悪いな」


 俺は、トゥーラのすぐそばまで駆け寄り、思い切り持ち上げると、空に投げ捨てた。

 その瞬間、トゥーラは防御を発動させる。


 だがそれは1人じゃなく、セシルもだ。

 森から手をかざしている。


「――見つけたぜ」


 カルタの魔力砲は、トゥーラだけで受け止めきれるほど弱くない。

 魔法の杖がないとはいえそれはわかっている。


 セシルまでぐんぐんと近づいていく。

 すると途端に体勢が崩れた。足元が泥になり、ぐらりと揺れる。


「はっ、おもしれェ!」


 だがそんなもんじゃ、俺は崩せない。

 そのまま右拳を突き出し、衝撃波を放った。いつもの魔法具がない分威力は弱いが、セシルは防御に魔力を割いている。

 いまならまともにくらえば大ダメージを負う。


「でも、流石に当たらないわ!」


 かろうじてセシルは回避するも、二の矢(・・・)が襲う。


「――セシルさん、これはパートナー試験ですよ」

「なっ――」


『セシル・アントワープ二回目の脱落。デューク・ビリリアンにプレートが移動します』


 俺とリリスは他のペアと違って魔法での遠距離攻撃は強くない。


 だが互いに身体能力が高く、小さなチャンスをものにできる。


 更に好きに動いている分、相手は行動も読めないはず。


「よくもセシルを――」


 不自然な壁(アンナチュラル)を足場に、トゥーラは空から距離を詰めてきた。

 遠距離攻撃ではなく、近距離戦を俺に挑むとはいい度胸だ。


 武器はロングソードを持っている。

 普段使っているモノじゃないだろうが、鋭利な分、魔力も通しやすい。


 同時に後ろから魔狼の叫び声がした。

 さすがオリンだ。勝機を見逃さない。


 リリスの助けは来ない。なぜならこの瞬間、油断しているであろうカルタを狙っているからだ。


「二度も負けられぬよ――」

「――はっ、残念だな!」


 トゥーラの近距離攻撃は、凄まじいものだった。

 全てを回避するなんてことはできない。肉を切らせて骨を断つ。

 致命傷を寸前で回避した後、あえて左腕を前に突き出して犠牲にし、剣を受け止めた。それにはトゥーラも驚いていた。


 同時に後ろから襲いかかってくる魔狼には、後頭部で頭突きを食らわせてやった。

 

 はっ、犬っころで俺を倒そうなんて百年はえぇ!


 そのままトゥーラの腹部に、拳で一撃を与える。

 深く、深く突き刺さる。


「――はっ、なんという……威力よ……」

「だろ?」


 防御術式を貫通し、そのまま一撃でトゥーラを落とす。

 もしトゥーラの武器が愛刀なら苦労していただろう。


 だがその些細な差が勝負を分けた。


 そのまま音を聞き分ける。

 森の上部でオリンの息遣いが聞こえ、そのまま駆けた。


 10体以上もの使役が俺に襲いかかってくるも、そのすべてを回避。


「ひゃああ!?」

「ああ――でも、わかってるぜ」


 見つけた瞬間、ピピンが下から頭突きをしてきた。

 俺はバカだが、同じ手は食らわない。しかし驚いたことに、オリンは杖もなしに空高く舞い上がった。


 カルタとのパートナーは伊達じゃないってか。


 だがまだ発展途上、相手が悪かったな。


「悪いなオリン、そこは俺の範囲だ」


 そのまま衝撃波を放ち、オリンを落とす。

 同時に空で凄まじい魔力のぶつかり合いを感じた。


 やがてアナウンスが流れ、カルタがリリスにやられたことを知る。

 

 元の場所に戻ると、すぐにリリスが駆け寄ってくれた。

 トゥーラにやられた左腕を癒してくれる。


「さすがです! デュークさん!」

「そっちもな。――どうやってカルタを落としたんだ?」

「石を空に投げ、それに乗って登っていきました。初めての試みでしたが、なんとかうまくいきましたよ! ギリギリでしたが!」 


 とんでもないことをサラッと言い放つ。

 ったく、さすがヴァイスと一緒にいるだけあるな。


「デュークさん。今回私は、あなたを絶対に勝たせたいです。頑張りましょう」

「ああ」


 ああ、今回は絶対に勝つ。

 勝たなきゃいけない。


 俺は――俺自身を乗り越える為に。

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