幕間、新たな才能
きっかけは、学生対抗の剣魔杯だった。
両親に連れられて特別に席を用意してもらい、試合が始まるのを待っていた。
今まで冒険者の大会を何度か見たことはあるが、特に興味がそそるなんてことはなかった。
まあ、大体オレより弱い人ばっかりだし。
それより、腕を掴まれていて、身体がゆれている。
「ベルク、これ終わったら王都で買物に行こう? ねえ、いいよね?」
「気がむいたらね。メリル」
「リーリア地方の新しいネックレスが入荷したんだよね。それが凄い可愛くて!」
「はいはい、気がむいたらね」
「それでね、それでね――」
メリルはオレの幼馴染で、親同士が仲良いからいつも一緒にいる。
華奢だが背はオレと同じぐらい(そんな高くないけど低くもない)。
オレの父はデカいから、いずれ追い抜かすけど。
メリルの手足は細い。腕力もない。けど、魔法の才能は悔しいけどオレよりある。
ルドリア貴族幼園も首席で卒業、おかげでオレは二位だった。これは恨んでる。
綺麗なパープルの色はいつも見ても綺麗だ。
俺は短めの金髪で、めずらしくもなんともない。
そんなことを考えながら、いつもみたいにボーっと大会を見ようとしていた。
けど、度肝を抜かれた。
――オレより強い奴がいるなんて。
『勝者、ヴァイス・ファンセント。ノブレス魔法学園!』
そこまで年齢は変わらないはずだけど、すげえデッカくみえた。
それに――。
『勝者、シンティア・ビオレッタ。ノブレス魔法学園!』
他の連中も……凄い。
圧倒的だ。なんだあの氷魔法。
「……すごい」
すると隣で、メリルがぼそりと呟いた。
彼女が驚いている顔なんて久しぶりに見た。
偉そうにするタイプじゃないけど、他人に興味がないからだ。まあオレもそうだが。
いや、それより……。
すごい、すごすぎる。
どうしてあんな動きができるんだろう。
え、もうあそこに? うわ、なんだあれ。
……属性は闇か。
すごい。なるほど。
もしかして……遅く視えてるのかな。
今のは……なんだ。光との複合?
なるほど、自動防御か。無属性だからオレには無理かな。
すご。毎日訓練積んでるんだろうな。
うわ。もしかして術式破壊を技に組み込んでるのか。
あの人もすげえ。
アレンって平民か?
……技を模倣できる……力かな?
――おもしろい。
「父さん」
「どうしたベルク」
「やっぱりオレ、ノブレスに行こうかな。推薦受けることにする」
「おお! そうか、父さんも鼻が高いぞ!」
――楽しみだ。
「……すごい」
オレの隣で、メリルもなんか笑顔だった。
ちょっと、いつもよりかわいかった。
◇
馬車に揺られながら、オレは白い制服に身を包んでいた。
カッコイイ。うん、あの人も着てるのかな。
てか――。
「メリル、似合ってないな」
「えーそう? 凄い可愛くない? ほら、太ももとか綺麗でしょ?」
「ちょっと太った?」
「筋肉です! 乙女の気持ちがわかってないなあ」
「はいはい。てか、メリルは王都宮廷魔法使いになる予定だったんじゃ?」
「いつでもなれるからいいの」
「はいはい」
メリルは、オレと同じ白制服に身を包んでいた。
悔しいが……似合う。
ちょっとだけ不安だ。
てか、わざわざオレの後をついてこなくていいのに。
学校なんかはいらなくても彼女の魔法の腕前は、既に周知されている。
宮廷魔法使いから直接勧誘が来てるくらいだ。
……でも、悪くない。
メリルと一緒にの学校は、楽しいだろうな。
「ベルク、どうしたの? なんか考え事?」
「これから全員ぶったおそうと思ってな」
「ふふふ、楽しみだね」
「ああ、メリル。オレは今度こそ一位を取るぞ。――お前には負けない」
「あたしも。やるからには本気で」
その目、その声は真剣そのものだった。
こういう時のメリルは強いし、凄い。
気を抜かないようにしないとな。
馬車を降りると、重厚な門がオレたちを迎えてくれた。
今日から寮で生活だ。
不自由とかしないかな? ま、大丈夫か。
そのとき、オレの横を歩いていた人に気づき、思わず目を見開いた。
「ヴァイス、桜が綺麗ですね」
「ああ、この時期はいいな」
「ヴァイス様に似合います!」
大会で見かけた女性、シンティアさんもいる。
その横は、確かリリスさんだ。
……すげえ、本物だ。
って、このチャンスを逃すわけには――。
「先輩!!!! 待ってください!」
後ろから声をかけると、憧れの先輩が、振り返る。
「あ、あの、オレ、大会で先輩の試合みて、すげえかっけーって! ほんで、ノブレスに来たいってなって! それで!」
「あ?」
「だから、その、すげえっす。マジで! ヴァイス先輩みたいになりたいんす!」
「――喋りかけんな」
「え?」
あれなんか、冷たくな……い?
え、なんか怖い?
いや、確かに大会でも怖かったけど。
――いや、これは叱咤激励だ。
お前ら下級生はまだまだこれから、ノブレスとしての先は長い。
俺たちが通った道は険しくも苦しい、だから頑張れよ。だから、静かに黙って前に進め。
「そういうことっすね! わかりました!」
「お前何を言って――」
ヴァイス先輩がオレに言葉を返してくれようと瞬間、横から――メリルが叫んだ。
「シンティア先輩!!!!!」
え?
「誰でしょうか?」
「あ、あたし、大会で試合みて、すごい、すごい可愛いなって! かっこいいし、可愛いし、なんていうか綺麗で! 凄いです! 隣はリリスさんですよね、それにヴァイスさんも。で、でもシンティアさんは生のほうが凄いキレイです! あ、握手してください!」
「ありがとうございます。――もちろんいいですわ」
少し困惑しているかに思えたが、シンティア先輩は、メリルに両手を添えた。
クソ……いいな。
そうか! そういう手も!
「ヴァイス先輩、俺も握手――」
「殺すぞ。――行くぞ、シンティア、リリス」
「はい。じゃあまたね、メリルさん」
「はい! ヴァイス様!」
あれ、今殺すぞって言われた?
え、初対面だよね?
いや……俺と握手したければ、俺と戦いたければ、俺に触れたければ高見まで昇ってこいってことだ。
そうだ。そういうことだ!
さすが先輩。厳しいけど、助言もしてくれるんだな。
しかしメリルのやつ、突然ノブレスに行きたいってそういうことか。
「ああ、シンティア先輩かわかっこいきれい……」
「メリル、顔が赤いぞ」
「え? そ、そう?」
「めちゃくちゃ。てか――かっけえな先輩」
「うん、すごい可愛かった」
「――よっしゃメリル、先輩たちに構ってもらえるようにトップ取ろうぜ!」
「そうだね! あたしも頑張る!」
さて、ヴァイス先輩は下級生首位で中級生なったって聞いた。
――オレも絶対取ってやる。






