表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/15

8 カツアゲ、ユルサナイ

 次の日の朝。

 つまり異世界二日目、カチカチのベッドで目覚めた俺は朝食をとり、ギルドへと向かった。



 一応今日から明日に掛けての宿泊代も払っておく。部屋は確保しとかないと、また宿を探し直すはめになるとダルいからな。


 明日があるさ亭を出る際、看板娘らしい女の子の「いってらっしゃいませー」の音声がバックグラウンドで流れる。

 なんか知らないけど今日も帰ってこようって思える。

 昨日と髪型変わってたな。






 朝の異世界の道をのんびり歩きながらギルドへとたどり着いた。


「うーん、とりあえず着いたのはいいけど、テーナがなんか話があるとかいう感じだったよな? 待っとけばいいのか?」


 待ち合わせなどは特にしていないが、確かにそんなことを言ってた気がする。

 とりあえずギルドに入り、内部に併設せれている酒場で待つことにした。


「朝だからか、人は多いな。でも酒場の席は結構空いてるな、適当に座って待とうっと――いでッ!」


 何かに引っ掛かり、躓いてしまった。

 俺もドジッ子だなぁ。


 何に引っ掛かったのか見てみると、そこには何者かの足が投げ出されていた。


「おお、すまねぇなあ。悪気はなかったんだ」


 その足の持ち主が、席に着きながら、ニタニタとこちらを見ていた。大柄の体躯の男だった。頭の刈り上げ部分に切れ込みが入っており、頬に入れ墨も入っている。周りには取り巻きのような者たちもいた。


「……なにか用ですか?」


「いやいや、なんの用もねぇよ? なに勘違いしてんの? お前昨日入ってきたっつう新人だろ? お前なんかに誰も興味持つわけねぇだろうが」


「自意識過剰ってやつでしょこれ? そうでしょ!」


「へへ、だっせぇ」


 男たちはなんか知らないがゲラゲラ笑っていた。

 ああ……なんか絡みたくない奴らに絡まれちゃったかも……どうしよ……でもこういう時はもう立ち去るに限るよな。


「そうですか、じゃあ僕はこの辺で……」


「おいおい待てこら」


 足をかけてきた男がこちらに歩いてきて肩を組んでくる。

 うう、なんだよ……


「お前魔法使いなんだってな?」


「え、なんでそんなことを」


「それにブラッドキャットを討伐したとか? ハッ、笑っちまったぜ、どんなハッタリ使ったんだよ? ああ? 入ってきたばっかの野郎がそんな真似できるわけねぇだろうが。しかも魔法使いだとか、ハッ、尚更あり得ねぇ」


 そんなこと言われてもなぁ。

 確かにあのファイヤーボールはインチキじみた強さだったとは思うけど……事実なのは事実だし……


「吐けよ、認めろよ、討伐証明部位を改竄したんだろう? それとも手柄を横取りしたか? ああん? 吐けってごらぁ」


 腹を拳でがしがしされる。

 痛い……腹筋全然ないから俺……

 ああどうしよ、俺このままなぶり続けられるのかな……? 異世界おっかねぇよ、いっそのことファイヤーボールぶちこんでやろうか? いや、それじゃあ流石に過剰防衛だ、俺が悪者になってしまう。ああ、なんでつくづく俺はファイヤーボールなんていう能力にしてしまったんだ……応用がまるで効かない……


「バーモットさん、一旦外に連れ出しやしょう」


「そうだな」


「ええ、いや、それは……そ、そうだ! 確か冒険者同士の暴力がらみの諍いはギルドの規定で禁止されてたはずじゃ!」


「うっせぇなッ! んなもんで逃げられると思ってんのかよ、聞かねぇならこぅだ」


 俺は大男に思いっきりボディブローを食らってしまった。

 ぐへぇ、い、痛ぇ……!! はらわたが……ヤバい……うう……このままじゃヤバい、かくなる上は、


「いやだあああああ!! 誰かたすけてぐれええええええ!」


 俺は最終手段を行使することを決意し、わめき散らした。できる限り大声を出し、暴れる。


「おい! 黙れ! うるせぇ、くそ!」


「こいつ恥もへったくれもねぇのか!?」


「無敵すぎる……!!」


 男たちは面食らっていた。




 シュン! がきーン!




 直後、何かが飛んできて、俺を掴んでる男の顔付近にヒットした。

 それはジョッキだったようで、僅かに入っていた酒のようなものが男にぶっかかり、下に落ちた。うわ、俺にもちょっと散ったんだが……!


「クッ! 痛ぇえな!!」


「痛ぇなじゃないわよ。朝っぱらから堂々と何をしてるの」


 飛んできた方向にいたのは一人の女の子だった。赤茶色のセミロングを靡かせた、有無を言わさぬほどの美少女だ。

 背後にはもう一人女の子の姿が見える。


「チッ、テメぇかよ……おい、ずらかるぞ」


「へ? は、はい!」


 男たちは俺をおいて出入り口から外に出ていってしまった。

 お、え? 助かった感じ……? よかったあ……でも腹痛い……うぅ……


「はぁ、全く。なんであれを放ってるのよ。まぁいいわ。で? あなたは何朝っぱらから絡まれてるわけ?」


 その美少女は馴れ馴れしく俺に話しかけてきた。え? 俺と面識がある? 俺にはないぞ。人違いなんじゃないか。でもなんか声に聞き覚えはあるような……


「あの、失礼ながらどなたでしょうか?」


「嘘でしょ!? テーナよ! 記憶が一日で消えるわけ!?」


 驚いた様子でツッコまれた。

 え? テーナってあの鎧姿の? え、この美少女があのテーナってことか?



「えええええええ!!!!!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ