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2 城門と親切

 とぼとぼと道を進んでいくと、前方に城壁のようなものが見えてきた。


「おお、あれってひょっとして街じゃないか? 一応街の近くには転生させてくれてたんだな……」


 まじでホッとしたぜ。

 一瞬自然界でサバイバル生活をしなきゃいけないかと思ったからな。

 とりあえず街に入って体勢を整えよう。

 まぁ最悪ホームレス生活をすればいいのだが、できれば普通の生活はできるようになりたい。

 はぁ、苦労しそうだなぁ。


 とりあえず城壁に近づいていくと、城門のような所にたどり着いた。

 何人か他の人たちも並んでいる。

 異世界っぽい服装の人たちだなぁ。やっぱりここは異世界なんだ……


「あれ……でも並んだのはいいけど、そのまま無事入れるのかな? なにか見せなくちゃいけなかったりしないか?」


 俺は不安になってきた。

 仕方ない、勇気を出して前の人に聞いてみるか。鎧を着こんだいかにも重戦士って感じの人に見える。背はちょっと低いけど。

 まぁ一人っぽいし話しかけるにはもってこいだ。


「あの、すみません」


「ん? なに?」


 適当に話しかけたが、振り返られ顔が見えると、なんと若い女の子だった。

 嘘、結構ちゃんとしたごつい鎧着てたから女の子って分からなかったわ。

 やばい、女の子との会話のカードデッキは持ち合わせてないぞ。前世で女子と絡む機会なんてほぼなかったから、こんな時どうすればいいのか。


「いや、落ち着け俺。男だろうが女だろうが聞く内容に代わりはない」


「あの……なに?」


「あ、いや、すみません。ここをくぐろうと思ったら、なにか身分を証明するものとか必要だったりするんでしょうか?」


 思ったよりもちゃんと尋ねられた。

 よし、ナイスだ俺。やればできるじゃないか。


「え? それはもちろん身分証がいると思うけど……まさか持ってないの?」


 女の子は呆れたように尋ねてくる。

 兜で隠れて頭全部は見えないが、顔の見えるところだけ見てもかなり整ってるような気がする。ピンクの唇に、赤い瞳孔……まだ大分若いんじゃないかな?


「……あの、聞いてる?」


「ああっ、すみません。その、恥ずかしながら持ってないですね……」


「この街に来るのは初めてってことよね? どこから来たの?」


「ええっと、それはまぁ深い深い事情があると言いますか」


 ここで正直に異世界から来ましたとか言ってもどんな受け取り方をされるか分からない。もうちょっとこの世界について知ってからオープンにしていくのが無難だろう。


「事情ってなに? なんか怪しいわね」


「そんなこともないと思いますけどね、はは。でもそうなると困ったな、もうこの街には入れないってことか」


「一応手続きをした上でお金を払えば入れて貰えると思うわよ」


「……お金も持ってないんですよね……」


 どのみち無理な話だった。


「ホントにどっから来たのよ……はぁ、まあ仕方ないわね。もしお金があれば入れるってなったら私が払ってあげるわよ」


「え? そんな、いいんですか?」


「まぁそんな悪い人には見えなそうだし……怪しいのは怪しいけど。それに歳も私とそう変わらないでしよ? 大して強くもなさそうだし、うん、問題ないと思う」


 やった、なんか知らないけどお金を貸してくれるみたいだ。マジで天使かなにかなのかこの子? もう特別にキスしてあげたい気分だ。


「ありがとうごさいます」


「まぁ困った時はお互いさまってやつよ」



 そうして程なくして俺の順番が回ってきた。

 手続きとか言っていたが、思ったよりもあっさりとお金だけ払って通過することができた。

 見た目があんまり怪しくなさそうってのもあるのかな? 一人だし何か悪さとかもできなさそうだよな。まぁ、なんにせよ良かった。



「ありがとうございます、助かりました」


 お金を払って貰ったので、少女と一緒に入る形となった。

 ちゃんとお礼を言っておく。


「別にいいわよ、そんな大した額でもなかったし。それでこのテデダスで何をする予定なの?」


「え? 予定? まぁ適当にお金とか稼いで生活する感じかな?」


 隠す必要もなかったので、本心を言ってみた。

 テデダスってのはこの場所の名前だったりするのかな。


「何それ……その日暮らしすぎるでしょ。ホントどっから来たのよ」


 そうだこの際ついでにこの親切な子に聞けるところまで聞いておこう。


「あの、おこがましいとは思うんですが、この街でオススメのバイトとかあったりしないでしょうか……?」


「お金を稼ぎたいってことよね? そうね……酒場でウエイトレスとか? ごめんなさい、正直他の職業のことはよく分かんないわ。私も二年前までは村で暮らしてて、こっちに来てからは冒険者しかしてないから」


「冒険者……? そんな職業があるんですか?」


「それも知らないの? 魔物とかを倒して報酬を得たりする仕事なんだけど……世界各地にあるはずなんだけどね」


 もう前提知識を知らなすぎてボロボロだ。はぁもいい! 今さら繕うのも面倒だ。そういう頭のおかしい非常識キャラでごり押そう。


「そうなんですね! 全然知りませんでした! もうそこでもいいんで、とりあえず俺も紹介して貰えませんか!?」


「ええ、冒険者ギルドに入るつもり? うーん、悪いけど完全な実力主義みたいなところあるから……失礼だけどあなたじゃ厳しいんじゃないかしら」


 なんか、舐められてるぞ俺。

 そんなのでいいのか? でも喧嘩の一つもしたことないし、痛いのも嫌だ。あれ? 俺終わってる? でも待てよ? そう言えばなにか能力貰ってたような……

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