15 俺の究明
気を取り直した俺たちは、探索を再開した。
「こ、これは……」
そして再開後最初の曲がり角で、謎の円形の穴がポッカリ空いているのを発見した。
直径一メートルくらいの穴だった。
「なんだこれ? 今までの道中ににこんなのなかったよな? 魔物の仕業とか?」
「い、いえ、ダンジョンにこんな不自然な穴は空かない。ダンジョンの壁や床は未知の素材でできていて、絶対に壊せないはずだから」
「え? じゃあなんでこんなことが……心霊現象?」
「……信じられないけど、もうハルタのあれだとしか」
あれってなんだ……俺が持ってるもの? 俺の取り柄なんて、ファイヤーボールの魔法ぐらいのもの……
「え……まさかこれって……俺の仕業?」
「そうだとしか考えられないわ」
「ファイヤーボール! ファイヤボ! ファイヤボ! ファイヤボ」
俺はファイヤーボールを連発した。
壁を貫通し、穴が出来上がった。
「ああ、やっぱり俺のファイヤーボールだったわ」
「…………」
テデダスのダンジョンは全九階層からなっているという話だったが、一階層に出てくる魔物は、さっきのトレントと、ローワームと言う芋虫型の魔物しか出てこないとのことだった。
だから難易度としてはめちゃくちゃ簡単だし、魔物から取れる素材もほとんどないに等しいため、初心者にすら不人気なダンジョンだと言うことだった。
「でも三階層までは正直こんな感じなんだけど、四階層からは一気に難易度が跳ね上がるわ」
「そうなのか?」
「ええ、まぁ行けば分かるんだけど、木が邪魔だし、敵も格段に手強くなってるから……」
よく分からなかったが、まぁ実際に今後行くことになるんだろうし、今しつこく聞く必要もないか。
結局進んでる間もなかなか魔物に出くわさなかったが、十分おきくらいにトレントや、ローワームと遭遇したりした。
ローワームは本当に枕くらいのサイズの小さな魔物で――それでも普通の芋虫と比べたらめちゃくちゃ巨大だけど――ただ気持ち悪いだけの緑色の魔物だった。
魔物はもう普通に戦うのは面倒だったので、出会った矢先に俺のファイヤーボールで消し去った。
当然、全部ワンパンだ。
それになんだろう、撃つごとに俺のファイヤーボールが研ぎ澄まされていく感覚と言うか……
たぶんもっと上手いことやれば色々なできそうな気もするんだけど、敵がこんだけ弱いんじゃな。
今のところは変に考えなくてもいいだろう。
そして、通路と通路の間にある無骨な小部屋にて、二匹同時出現したトレントを連続ショットで葬り去ったところで、今日の魔物の討伐数がちょうど十になった。
「手応えないな……」
「もうどうかしてるわよ……頭がおかしくなりそう……何を見せられてるのか一旦帰って寝る時に考えたいくらいよ」
「私は決めた。今後ハルタのことを調べ続ける。ハルタ専門諜報員として、神官と掛け持ちをする」
「火力枠として十分どころかもうさるか想像を越えた先にいってるわ。私は無神論者だけど、神の子の存在を信じそうになってきてる自分がいる」
「ハルタの究明が、世界の究明!」
二人がすごい褒め称えてくる。
初めて会ったときは二人ともあんなに白けた感じだったのに。
本当に調子のいいやつらだ。俺はあの時の冷めてる目を忘れないからな。
でも世の中、結局力がすべてかぁ……。いや、暴力がある程度許されるこの異世界に限ってのことなのか?
正直言えばこのファイヤーボールも俺が別に努力した訳でもないし、神様に適当に渡された力だ。
だからイキろうにもイキりきれない部分があるし、そんなに強いと言うのなら、あんまり公に出す力でもないんだと思う。
あくまで異世界人の俺からしたら、この力をほんのりと利用させて貰うくらいで、どこか辺境でのんびり暮らしていくっていうのが正解の生き方なのかもしれないな…………あれ? もしかしてそれも見越して微妙な街の近くに転生を? ……ありうる話だな。
「あと少しでボス部屋に着くわ」
そしてそれからしばらく。
テーナが切り出してきた。
その手元には地図が開かれてる。
「ボス部屋って?」
「各階層の最終エリアには基本ボスが沸くのよ。基本的にはその階層に出現する魔物より数段格上の魔物が沸くんだけどね。それを倒せば次の階層に進めるってわけ」
なるほど、最後の関門ってことか。
思えば一時間以上は歩いてるか? もうめちゃくちゃ疲れてます。
「でもテーナたちは以前もここ通過したことがあるんだろ? てことはボスはもう倒されてるってことか?」
「いえ、確かにその時は倒したけど、ボスは死んでも時間経過で新たな個体が復活するの。大体二十四時間に一回くらいかしら、まぁその辺はダンジョンによってもまちまちだけど」
「どういう仕組みなんだそれは」
「さぁ。でもそこがダンジョンの面白いところでしょ」
えぇ……それで納得してるのか? 仕組みとか気にならない……? まぁ細かいところを言い出したらそれこそ魔物がなんで沸くのかとか、キリもないんだろうろうけども……
「一説によるとダンジョンは人間を取り込むためにあると言われている。その為に、宝などの恩恵を用意し、人間をおびき寄せている」
「なるほどね、そんな見方もあるってことですか」
間もなくして、目の前に大きくて重厚そうな扉が見えてきた。
不思議な紋様が描かれてる開き戸だ。
何かの生物っぽい絵だけど……よく分からんな。
「この先にボスがいるわ」
「なるほどな、どうする? 普通に戦うのか?」
「いえ、もしかしたらボスが沸いてなくて素通りできる可能性もあるから、まずはちょっと様子を見てみましょう」
そっか、他の冒険者が直近で倒しちゃってる可能性もあるのか。一階層なら尚更あり得そうだ。
「でも今まで全然他の冒険者に出くわしてないぞ? 今日は誰も潜ってないって可能性も……」
……ギシャン
金属がぶつかるような、ひしゃげるような、そんな鈍い音が聞こえた気がした。
「え、今なんか……」
「中を見てみましょう」
テーナが大きな扉にに手を掛け、ゆっくりと前に開けようとする。
「背中押さないでよ?」
「押すわけないだろ」
ものすごく押したくなったが、我慢してテーナが扉を開くのを見守る。
「こ、これは……!」
先に隙間から中を見たテーナが驚愕した様子で目を見開く。
「な、なんだ、何があるんだ……!?」
流石に気になりすぎたので、俺もテーナの上から顔を出し、中を覗いてみる。
そこには化け物と戦う四人の人間の姿があった。
一人は地面に倒れていたが。




