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13 ダンジョンモンスター

 落とし穴かと思ったら、階段のようなものが下に続いている感じだった。


「なんかめちゃくちゃ怖いんですけど」


 どよんとした空気を感じ思わずひよってしまう。


「じゃあ置いていこうテーナ」


「いや、それは流石にかわいそうじゃない?」


「だってこう言ってるし」


「そこまで怖いわけじゃない!」


 なんだか置いていかれようとしていた。

 ひどい、ちょっと言ってみただけじゃん。

 トイレ行けない子供じゃないんだからそこまでビビってるわけじゃない。





 二人の後ろに隠れながら下に降りると、広々とした通路が広がっていた。

 人口っぽいような天然っぽいような……。

 やっぱり壁のおかげで明るい。



「魔物の姿は……ないな」


「まぁ一階層は結構狩られちゃってるから。誰しも最初に通る場所なわけで」


 確かに言われてみればそうか。


「一階層の魔物は大した強さじゃないから大丈夫だとは思うけど、一応私が前に出るわ。ハルタは隙を見て魔法を撃って貰える? くれぐれも私に当てないでね」


 テーナにジト目で釘を刺された。


「任せろ」


 当たり前だろ、そんなの。





「ちなみにこのダンジョンって何階層まであるんだ?」


 五分くらい無駄に入り組んだ通路を歩くも、何にも出くわさない。

 俺は暇だったので歩きながらもつい尋ねてしまう。

 魔物とか本当にいるのだろうか。

 あと余談だが通路が複雑すぎて、完全に帰り道を見失ってしまった。もし置いていかれでもしたら確実に餓死してしまう。


「全九階層らしいわ。現状私たちは五階層の途中までは進んでるんだけど」


「へー、すごいな、そうなると結構探索進んでるんじゃないか。他の組とかはどうなんだ?」


「分からない。でもそんな実力者は見かけてないから、進んでたとしても私たちくらいじゃないかな」


「そもそもテデダスの街が過疎地すぎて誰も寄り付いてない。私たちが独占できるはず」


 とはビリムの言葉だ。

 なるほどな。てか俺そんな微妙な街の近くに転生させられたのか……もっとスポット考えてくれよ……どこかの神様さん。



「いたわ」



 と、ここで急にテーナが警戒の声をあげた。

 ぼうっとしていたので、マジかと思い、慌てて気を引き締める。



「え……」



 最初はなにも気付かなかったが、だんだん通路の奥の方から何かが近づいてくるのが分かった。



「あ、あれは……!」



 そこからのっしのっしと現れたのは……



「木?」



 そうとしか思えない一匹の生物だった。

 見た感じは本当に幹の太い木という感じなのだ。


「あれがトレントって言う魔物よ」


 まだ距離があるうちに、テーナが教えてくれる。


「トレント……?」


「ええ、Fランクの魔物で、木にちなんだ攻撃をしてくるわ」


 なるほど、やっぱり魔物だったんだ。


 確かに言われてみれば、根っ子の部分が蠢いて歩いていたり、枝が腕に見えたりして、どことなく人間味を感じれる部分もあった。

 ていうか、ヤバい、結構接近してきたぞ……



「陣形を組んで……!」



 突如としてビリムが後ろから抑揚のない声で指示を出す。


「え?」


 じ、陣形? な、なんだそれは……! 聞いてないんですけど……


「分かったわ!」


 テーナは指示に対し、テキパキと前に出ていた。

 え? 皆は分かってる? や、ヤバい、俺はどうすれば……!? 何かした方がいい?


 あれ、でもビリムは動いていない。


 俺はこのままでいいのか? ビリムのちょっと前にいるけどこのままでいいのか!?



「来るわよ!」



 前を張るテーナが叫ぶ。

 なんだと思っていると、少し前方で立ち止まったトレントがもぞもぞとし始めた。

 そして次の瞬間。




 シュシュシュシュシュん!!




 枝葉から大量の葉っぱを飛ばしてきた。

 え! なんだあれ!? 葉っぱカッター!?


「伏せて!」


 テーナが叫ぶので、俺は反射でかがむ。

 前を見てみると、テーナは取り出した剣で飛んできた葉っぱを次々に打ち落としていた。

 み、見えない……凄い速さだ……!



 打ち落とせない葉っぱが、俺の少し横を通過していく。

 ひー! 怖い!

 だが主要な葉っぱは打ち落としているようで、俺たちの方に直で飛んでくる葉っぱはなかった。




 そして気付けば敵の攻撃は止んでいて、静寂が訪れていた。


「ふぅ、まぁいい練習にはなったわね。さぁハルタ今よ! 攻撃を撃ち込みなさい!」


 テーナが剣を鞘に戻し、俺に指示をとばしてくる。


「え? お、おお! って、これはどういう……」


「今のはトレントの必殺技みたいなもので、使用した後は一分くらい動けなくなるの。だから今は硬直状態で無防備ってわけ」


 な、なるほど。そういうことか……確かにトレントはまだ倒れていないが、頭の葉っぱが大分減っているように見える。

 てかこれで動けなくなるってトレント弱くないか?


「だからまぁ試し撃ちにはちょうどいいわ。あなたのファイヤーボール見せてあげなさい」


「……お手並み拝見」


 テーナが促してくる。

 ビリムも腕を組んで偉そうに見ていた。


 えー……なんだこの展開。

 俺こんな無防備なやつに攻撃するの?

 なんかやだなぁ。どうせならもっと痺れる展開で撃ちたかったんですけど……


「はぁ、まぁでも仕方ないか……」


 勘違いしちゃいけないのが、まだ俺はこのパーティーに認められているわけじゃない。

 ある意味で俺は今試されてるんだ。


 このBランク冒険者パーティーに所属するに相応しい魔法使いかどうか……



 俺はコクりと唾を呑み込むと同時に、ぐっと拳に力が入るのを感じる。



 まぁ別にどうしても所属したいかと言われればそういうわけでもないけど……だがやはり男として舐められる訳にもいかない。

 いいだろう。俺のファイヤーボールを、ここで見せてやるよ。



 俺はゆっくりと右手を前に突き出した。



 …………感じる…………ダンジョンのヒヤリとした空気。かすかな呼吸。



 集中できてる。絶対大丈夫だ。



 俺は右手に感覚を集中させた。

 俺の髪がふわりと優しく浮き上がる。




 ボン




 手の平に炎の球が生まれた。

 前に撃ったときは切羽詰まっていたけれど、落ち着いてる今なら分かる。

 ファイヤーボールは俺と繋がってる。

 俺の意思に連動し、いかようにも換えられる。

 そんな自信で彩られている。

 このファイヤーボールの燃える赤は、自信の象徴の赤色だ!



「いけ」



 俺は自然体のまま、ファイヤーボールを解き放った。



 直径一メートル強に膨らんだファイヤーボールが、まっすぐトレントに吸い込まれていく。



 ファイヤーボールはトレントを喰らいつくし、通路後方へと抜けていった。


 トレントの姿はなくなっていた。


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