過去
眩いばかりの光に包まれた。
この感覚は何度経験しても慣れない。今回も空間が歪んだような感覚に囚われ、上下左右が認識できなかった。自分の肉体は見えているが、五体の縮尺が有っているのかさえわからない。
周りに明るさはあるが物が見えるわけでもない。しかし、今回は何かの気配を感じた。おそらくオシショウサマの気配だろう。前回はオシショウサマを背負った形で転移陣に入ってしまったので、転移している時もオシショウサマが一緒だということはわかった。オシショウサマの姿が見えてはいたが、あれを見えていたと言っていいのかどうか。今も自分の姿が見えていると言っていいのかどうか。そもそも自分の目が見えているのかも疑わしいが、自分の体がここにあることがわかってはいる。
それと似たような感じで何かの体が近くにあることがわかる。それがオシショウサマが一緒に転移しているということだろう。
オシショウサマの気配のようなものがスーッと薄くなるのがわかった。おそらく、転移先に先に着いたのではないか。慣れたわけではないが、今回はいろいろ考えることができた。前回までは時間が動いているかすらもわからなかった。まあ、今でもわかっているとは言えないが。
その時、大きな衝撃を感じた。
衝撃と言っていいんだろう。オシショウサマの気配が消えた方向、いや、方向が有るのかはわからないが、何かそっちの方から何者かが向かってきたように感じた。何かエネルギーのようなもの。オシショウサマが逆流のように戻ってきてそれをエネルギーと感じているのかもしれない。
そのエネルギーのようなものがガンっと俺にぶつかった。いや、これもぶつかったような感じがした。そして俺は意識をうしなった。
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俺はリードスミス。
ノーマン王国で冒険者をやっている。元々は農民だが、自分に力をつけて冒険者になった。冒険者は冒険者ギルドに登録しさえすれば冒険者になれる。まあ、ギルドに入らなくても自分で冒険者だと言えば、いや、思えばもう冒険者だという考えもある。
一方、ギルド登録は一応の年齢制限や身元確認のようなものが有ったりはするが、基本誰でも冒険者になれる。最初はみんなGクラスから。薬草採取のような簡単な依頼をこなして実績を重ねクラスをあげる。GからFには誰でもなれる。依頼達成が可能なことがわかればFになれる。そしてFからがモンスター討伐の依頼だが、FからEも誰でも上がれる。当然最初はスライムやゴブリンのような弱いモンスターが相手だが、モンスターを倒せれば誰でもEクラスになれる。結局、全く冒険者に適性の無い者や女子供でなければEクラスになれるのだ。
だから、FクラスやGクラスの人数は少ない。この二クラスは冒険者を続けられるかどうかの篩のようなものなので、長くFクラスなんて人間は普通はいないのだ。
しかし、Eクラスから上はそれなりの人数が居る。それでも少し気の利いた奴、まあ、多少腕に自慢のある人間ならDクラスまでは上がれる。だからDクラスになって冒険者は一応一人前に見られる感じである。
そして、C,B、Aと上がって、その上に特殊だがSクラスがある。Sクラスは実力、実績ともに高く、何か特殊なモンスター討伐などの功績がないとなれない。俺の居る街(王国でも大きい部類の街だが)ラ―スターの冒険者ギルドではSクラスは3人しかいない。まあ、よくSクラスは化け物だなどと言われている。
ちなみに俺はBクラス。俺の年齢でBクラスはほとんどおらず、一応俺は凄腕冒険者と呼ばれている。それも実績を積んでもうじきAクラスになるだろうと言われているので、自分で凄腕冒険者だと言っているのである。
俺は活躍したと言っていいだろう。モンスターを殺しまくった。後少しでAクラスの仲間入りだ。俺は調子に乗っていたのかもしれない。
そしてダンジョン深層で無謀な奴らを助けたばっかりにヒュドラ達に追われ転移陣に飲み込まれちまったんだ。
「おいっリード起きろ、しっかりしろ」
誰かが俺を呼んでいた。