サイクロプス出現
ヒノタマという灯りが四つ五つと浮かびながら近づいてくる。その薄明りで登ってくる者の姿が浮かび上がった。
「サイクロプスかっ」
その一つ目の巨体はまごうことなくサイクロプス。我が国のサイクロプスはほぼ裸同然の姿で腰巻を付けている程度だが、この国のサイクロプスは礼儀正しいのか上等そうな着衣を身に着けていた。上等と言ってもこの国の神官の衣装を想像させるような体に巻くタイプの衣服を腰ひもで縛っていた。背丈は3メートルは超えているだろう。サイクロプスは元々頑丈な体つきだが、この国のそれは腰回りが太い肥満体のように見える。
それが三体、手にはメイスのような太い鉄棒を持っていた。
三体ともメイスを杖代わりに坂を上ってくる。登りきると厄介なので俺は上からファイアーボールを撃ちこんだ。
ゴウッという音と共に人の頭ほどのファイアーボールを三発。それぞれの顔面に撃ち込んだ。
「グワッ」
全て命中し、暫く藻掻いていたが、落ちることもなく再びのぼりはじめた。
俺は三体にライトニングを叩きつける。バリバリッという音と共に雷撃がサイクロプスを襲う。今度の衝撃には耐えられなかったようで、二体は坂を転がり落ちていった。
一体は落ちこそしなかったが、その場にうずくまり苦しんでいた。
俺はその一体めがけて、飛行術で跳びかかった。サイクロプスが立ち上げるのに合わせて剣を上段から斬りつけた。サイクロプスの左肩から袈裟懸けに斬り下ろし、のけ反った喉元にとどめの突きを見舞った。
サイクロプスがガラガラッと瓦礫を巻き込みながら落ちていく。
残りの二体を追撃しようとしたが、既に逃げにかかっていた。勝手のわからない場所でもあり深追いはせず、俺は飛行術で山上に戻った。
「お見事でございます」
上ではシロウが満足そうに頷いていた。
「火炎の術と稲妻の術は聞いたことはありますが、素晴らしい威力でした。やはり私の目に狂いはなかったようです」
しかし、ジンベエは未だ油断できないといった表情を浮かべていた。
「リード殿の魔術の威力は驚嘆するものですが、敵の妖怪もまだ来るでしょう」
「今まではどうだったんだ」
「こちら側で魔術が使えるものは四郎様お一人。リード殿ほどの威力ではないかもしれませんが、一つ目入道を追い返すことには成功しておりました。しかし、敵方の妖怪は何度も来ます。私達も槍や刀で応戦しておりましたが、そろそろ限界かと心配しておりました」
「私の魔術では敵を惑わすくらいなので、中々魔術だけで妖怪を倒すまではいきませんでしたが、リード様はまず一体一つ目入道を倒されました。ほかの二体も慌てて逃げだしたので、今までになかった成果でございます」
山上は多少篝火を焚いているので薄明るいが、柵の向こうは真っ暗闇だ。すると再びポツッポツッと山裾に灯りが灯った。殆ど見通しは効かないが、どこかでヒューッという風切りのような音が聞こえてきた。
「今度は一反木綿のようですね」