籠城戦
ダンダンと何かが爆ぜるような音は火薬の爆発音のようだ。
「あの音は」
「種子島でございますな。昼間はああやって弾を撃ちこんでまいります。いや、この城は堅牢。種子島の弾もそう易々とは届きません」
ジンベエが明るく答えるが強がっているようでもない。わからない単語がいくつもあるが、おそらく火薬を破裂させてタマというものを撃ち込んでくるのだろう。開け放している窓から見える景色では、この場所はそれなりの高さのようだ。下からタマを撃ち込んでもそれほど心配はないのかもしれない。
「それよりも夜でございますな」
ジンベエの言葉にシロウが頷く。
「そうです。夜になると幕府軍は妖怪を呼び出して攻め込んでまいります。私の魔術でどうにか撃退してきましたが、多勢に無勢。そこでリード様達のご助力をお願いするのでございます」
「夜か。今は何時頃なんだ」
シロウは少し首を傾げ。
「時間でございますか。そろそろ申の刻でございましょう」
よくわからないが、この国の時刻の表し方のようだ。外の様子から、昼はとうに過ぎて、夕方に差し掛かっているようである。モンスターが攻撃してくるのは夜らしいので、まだ時間は有るのだろう。
暫くするとオシショウサマが気が付いた。落ち着いた人だったが、驚愕の表情を浮かべている。無理もない。
「こ、ここはいったい」
シロウが丁寧に事情を説明していった。
「何と言うことでしょう。私は一刻も早く経典を手に入れなければならないのに」
オシショウサマは本当に頭を抱えてしまった。落ち着くには暫く時間が必要なようだ。
俺はシロウ達から現状の説明を受けていった。ここがオシショウサマの国トウよりもかなり東であること(俺が聞いた国名とは違うようだが、オシショウサマの名前もこの国には違う呼び名で伝わっているので、言葉の違いが有るのだろう。)、ここはヒノモトと呼ばれる王国の南方にあるシマバラと言う地方、そして攻撃軍はヒノモトの王、ショウグンの軍隊であり強大なことなどを聞いた。八方塞がりの様である。
「話を聞いただけだが、勝ち目はないんじゃないか」
シロウは俺の目を真っ直ぐに見た。
「おっしゃる通り勝ち目はないでしょう」
「では、何故戦うんだ」
シロウは軽く微笑んだ。
「私達の信仰を示すためです。私達のこの身は滅びるかもしれません。しかし、私達の信仰を示すことでゼス様が我らをパライソに導いてくださるのです」
よくわからないが、死ぬ覚悟はできているということだろうか。創造主ゼスというのは俺の国の神々のような位置づけだと思われるが、死後の国を用意してくれているということらしい。
オシショウサマはふさぎ込んだまま、陽が沈んでいった。辺りは少しづつ薄闇に包まれてくる。俺はシロウやジンベエ達の案内で建物から出て、少し離れたところの柵まで来た。柵から先はなだらかに下っており、ここは山城らしい。
暫くすると下から何か上がってきた。暗闇にポツッポツッと灯りがいくつか浮き出てきた。
「火の玉でございますな」