故郷へ
外ではたーん、たーんと音が聞こえてくる。種子島の音だと思うが、今はもう夜だろう。狙いが付くのだろうか。月夜なら見通しがきくと言うことか。そう言えば火を放たれたち言っていたな。すると外はかなり明るいのかもしれない。
「シロウ殿、俺たち二人をまた跳ばしてもらえるのか」
「はい、もう一度送らせていただきます」
「できるかどうか聞きたいんだが、どこにでも跳ばせるのかな」
「そうですね、まあ、いろんな時空に送ることができると思いますが」
「実は俺はオシショウサマの国に間違って跳ばされて、そこからここにまた跳ばされたんだ。俺の国に戻すことはできないかな」
シロウは少し考え込んでいた。
「そうですね。できるのではないかと思います。リード様の元々の座標を探り、そこに送ることはできると思います」
「そうか・・・」
俺はウーコンの方を向いた。
「ウーコン。お前国に戻りたいか」
「ん?」
「俺は自分の国に戻って冒険者を続けるつもりだが、おまえも来ないか」
「俺がリードの国に?」
「ああ、ウーコンならモンスターを倒す冒険者は天職じゃないかと思うぜ。まあ、猿人に対する偏見はあるが、おまえなら大丈夫だろう」
ウーコンも少し思案顔になったが、暫くするとパッと顔をあげた。
「いいな。いい話だな。俺はオシショウサマ達のことも名残惜しいし、故郷に残した猿共に会えなくなるのも寂しいが、冒険者ってのはやっぱり面白そうだな。行くぜ、俺は」
俺達は二人で大きく頷きあった。
「シロウ殿。そういうわけだ。俺たち二人とも、俺の国に跳ばしてもらいたい」
「心得ました。斉天大聖様を我が術でお運びするのは光栄の極みです。お任せください」
俺達が転移の準備をしているうちに外は増々騒がしくなってきた。
「ここに小屋が有るぞっ」
がんがんと戸を蹴る音がしたと思うと、出入り口の扉が蹴破られた。
「いたぞ」
「鉄砲隊撃てい」
たちまち、ダンッダンッと数丁の種子島が火を噴いた。
俺は無詠唱で風の盾で弾を防いだ。寸暇を置かずファイアーボールを撃ちこむ。
「うわあ」
「あちちちっち」
寄せ手の兵達は火達磨になって転がるが、入り口が派手に壊れて外からは丸見えだ。再び風の盾を構えた。
「シロウ殿、すまねえが手早く頼む」
「わかりました」
シロウが呪文を唱える。その向こうから、以前も見たサイクロプスの姿が見えた。ウーコンなら一捻りかもしれないが、相手をする時間も惜しいし、シロウの呪文の外には出たくない。
俺はライトニングを撃ちこんでサイクロプスを弾き飛ばし、風の魔法で竜巻を起こしその辺の兵を吹き飛ばした。
そうしているうちに時空が歪んできたのがわかった。
「無事パライソに行けることをいのっているぞっ」
俺が叫ぶのと、あたりの景色が消えていくのが同時だった。俺達はまたもや上下左右もわからない空間に投げ出された。近くにウーコンが居ることはわかる。自分の姿も多分見えている。転移も慣れてきたのかな。
俺は目を瞑った。
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「冒険者東へ」はこれにて終了し「冒険者故郷へ」に続きます。




