さて?どうしましょう?
さて?どうしようかしら?
転移を許したのはいいですが、目の前にはお会いしたこともない国王と王妃様らしき人が座っています。
周囲にも召喚を使った魔術師が複数人。
どうやら…ここはコロシアムの様ですね。
周囲をざっと見たところ…観戦できる所には満員なほど人々が集まっています。
とりあえず、即戦闘にならなくて良かったです。
だって今…ドレスですから。
血で汚したくないもの。
オートクチュールのマダムにお願いしたドレスですから、汚れたり破れたりでもしたら…本気で暴れてやります。
「おぉ……!召喚に成功したのか!!」
「はい!陛下!」
汚れたフードを被った魔術師が、国王とお話しています。
うーん…やっぱり見たことないお顔ですね。
他国の王族のお顔は把握していますから、知らないということは未知の国かしら?
「あ…あなた様が今代の聖女様であられますか?」
国王は上体を前のめりにしながら、興奮気味に質問しています。
でも何を言ってるんでしょうか?
聖女…?聖女とはなんでしょう?
教皇や枢機卿などの宗教の役職でしょうか?
「私はき…」
ちょっと言いかけましたが…やめました。
このまま身分を明かしてしまっては…吸える情報が少なくなりそうですね。
自国の中心地にいきなり敵の大将が現れたら襲いかねませんもの。
…まぁ、ざっと見たところ小物しかいないので倒せそうですけど。
「失礼…私、聖女だと思いますわ」
聖女って何か知らないですけど…
一応、相手に都合のいい解釈をさせて…骨の髄まで情報をいただいたら帰らせてもらいますわ。
「「「「「おおおおおおお!!!!!!!!」」」」」
急な大歓声にちょっとびっくりしました。
コロシアムで見ている人々が大歓声をあげたみたいです。
「聖女様!よく召喚に応えていただきましたっ!儂はアレクセイ・オラナード・イグラシア…イグラシア大王国…国王でございます!」
「王妃のフレリア・クレイス・オラナード・イグラシアです」
国王と王妃様のご挨拶を受け、私もカーテシーでご挨拶を。
「お初にお目にかかります陛下、王妃様…私はアリス・クロレンツ…ヴァレンハルムの子爵令嬢でございます」
潜入捜査時に使う偽名です。
団長になってからは一度も偽名を使う機会がありませんでしたが、暗記しています。
アリス・クロレンツはヴァレンハルムという国の子爵令嬢で次女で、学園に通う生徒という設定です。
「なるほど貴族であるか…やはり高貴なオーラが出ていらっしゃると思いました…ヴァレンハルムという国は一体どこにあられますかな?」
「…分かりません、失礼ですがイグラシア大王国という国も存じ上げないのです」
イグラシア大王国…本当にわからない国です。
ラインツ王国のある大陸や島国は5ヵ国あります。
ウェインバル帝国、ラインツ王国、ライン皇国、ウェインズ連合国、ファルランド島。
この5か国がある大陸の名前はウェイライン大陸と呼ばれています。
恐らく、ここは未知の大陸と未知の国。
私達が発見できてない新たな大陸と国々だと思います。
昔、執事のロニーに教えていただいただいた事は違ったようです。
私達の住むウェイライン大陸が全世界だとされいましたが…まさかこんな事があるのですね。
確か船で到達できない距離なら、発見できない可能性があります。
船造技術が高いとされるウェインズ連合国の加盟国…アストラル民国やファルランド島でも世界を回れないのですから、発見されてないのでしょうね。
「なるほど…あの本の伝承の様に異界から来たのは本当の様だ」
「異界…ですか?あの魔族や神々の住む世界と言われる?しかし、私の考察では…別の大陸から召喚されたのではないかと考察しているのですが…」
「儂の知らん大陸があるのか…?もし未知の大陸があるのであれば…侵略も視野に入れたい、このイグラシア大陸に支配できぬ島はない…聖女からもっと詳しい情報を探る必要があるだろう」
国王と魔術師がひそひそと耳打ちの会話をしていますが、私には聞こえます。
こういった諜報系の魔法はオートで発動できるので、耳打ちしている相手の方に意識を向けると丸聞こえです。
なるほど…この国王は野心家ですね。
話から察するに、イグラシア大王国がこの大陸を統治していると考えていいでしょう。
'大王国'と言われてるだけありそうです。
ふふ…面白いですね。
色々と情報を美味しくいただいて…お迎えさせていただくとしましょう。
「コホンッ…聖女アリス嬢、貴女を召喚した理由は一つ…我が国民達を救ってはくれないだろうか?」
国王は頭を下げてきます。
いきなり国民を救ってくれですか…もっと詳細な話を聞かせて欲しいですね
「…なぜ私の力が必要なのですか?国民を救うのは国のお仕事ではありませんか?」
「この国…イグラシア大王国にはかつて、魔王がおりました…世界を恐怖の底に沈めてきた魔王…グラバウズ。
その魔王を倒すべく生まれた勇者様と聖女様…その2人は力を合わせ、魔王グラバウズを倒しました。
…ですが、その魔王は死ぬ間際に強大な呪いをこの国にかけていったのです。
それは…大地を灰にし、草木を生やせない荒野にしたのです。
ですが…初代聖女様…アルメリア様の聖魔法によるご活躍で大地を回復なさったのです。
聖女の力は荒れた大地を戻す力があり、アルメリア様から引き継いだ聖女が何代も大地を草木の生える…緑ある大地に回復させて来ました。
…ですが、聖女は子を持つと力が弱くなります。前代の聖女…私が子を身籠ったのを機にご引退いたしました。
…そして、聖女を決める規則に従い、召喚魔法を使ってアリス様をこの場所にお呼びした次第でございます」
王妃様による、懇切丁寧で長いお説明ありがとうございます。
要約すると
魔王のせいで大陸全土が焦土と化したから聖女の魔法で大地を浄化してくださいお願いします。
ってことですね。
それでいて、聖女様が結婚して子供を宿すと力が半減するので引退させる。
なるほど~。
「でも…私にそんな大掛かりな魔法が使えるのでしょうか?魔法に関してはそれなりには自信はありますが、大地を浄化すると言ってもそんな膨大な魔力はさすがに有しておりませんもの」
私の適正は光属性ですが、神官じゃなく剣士職ですもの。
そんなにたいそーな魔法使えません。
10歳の頃、加護に光属性をいただいてはいます。
ウェイライン大陸で光属性の適正は本当に希少な加護で
判明した時にオルグス正教に熱心に勧誘されました。
…けど、歴代全員が騎士一筋のであるがローゼンハイム家とオルグス正教は仲が良くないので断り続けて来ました。
一応は国教なので、信仰はしていますが熱心じゃないですけどね。
私は騎士になりたかった訳ですから、絶対に選びませんでした。
お父様からしたら、騎士一家から聖職者が生まれるなんて卒倒ものだったのでしょうね。
断って騎士になったせいでオルグス正教の護衛任務の度に
[アイリス様は最高の癒し手になったのに…]
とか
[もったいない…せめて我々の手解きを受けていれば…]
って枢機卿にお会いする度に小言を言われる様になりましたけど。
「聖女様、それは大丈夫でございますよ!前代聖女…フレリア様から聖女の力を継承していただきますので!」
ウキウキした様に国王の近くに控える魔術師が
私に伝えてくれます。
「えっ…そんな引き続き業務みたいに簡単にできるものなんですか?」
「もちろん!」
「えぇ…それなら国内の適正のある方に引き継げばいいのでは?」
私の言葉に、国王夫妻と魔術師が目を見張らせていました。
あっ…失言でしたかね?
「あっいや…それはできません、何せ我が国の民の血では聖女の力を発揮できないのです!たとえ光魔法の適正があっても…魔王の呪いによって弱まってしまいます」
あら…大変なんですね…。
だからこういった召喚を使ってわざわざ呼び出すのですね
「それでは!聖女フレリア様!聖女の力の継承…お願いします!」
王妃様が玉座から立ち上がり、ゆっくりと私の方に近づき…私の手を握りました。
あっ…そういえば、あなたでしたね。
「…近くで見ると本当にかわいい子ね、私が殿方でしたら手込めにしちゃいたいわ」
「光栄ですわ」
王妃様と軽くお話した後、私は温かい魔力を感じていました。
聖女の力?というのが継承されているのでしょう。
しばらくして…王妃様が口を開きます
「うそ…?…え?…本当に…?」
王妃様が急に慌て始めたのです。
王妃様の慌てる姿に、周囲もざわつき始めます。
…そういえば、大勢が見てましたね、忘れてました。
王妃様は私の顔をまじまじと見た後、何かを空中に開きました。
透明な…板?
あれはなんでしょうか?未知の技術ですね…
あれ?もしかしてあれが使えたら騎士団の業務
が効率化できる気がします!
是が非でも持ち帰りたいですね!
「う…うそ…レベル999!?」
王妃様の声がコロシアムに響いて、全員が騒ぎ始めました。
「おいおい…マジかよ!」
「今代の聖女様が999!?」
「はぁ!?」
各々が大騒ぎしていても何がなんだか…
とりあえず、その謎技術が気になるので覗いて見ます。
[アリス・クロレンツ
Lv:999 職業:聖剣士 白魔法師
HP:10,000,000,000
MP:500,000,000
攻撃力:9999
防御力:9999
光属性:S
闇属性:A
火属性:A
水属性:A
氷属性:A
土属性:A
〈スキル〉
【勇者】
【大聖女】
【覇者】
【大賢者】
【絶対攻撃】
【絶対防御】
【絶対強者】
【絶対治癒】
【絶対反射】
【不老不死:16固定】]
はぇ~…凄いですね!ステータスの数値化ですか!?
これがあれば各適職ごとに騎士を分配できて、適した任務に割り振れますね!
ところで…不老不死って何ですか?
不老不死…すなわち死ねし、成長しないんですか!?
…ん?
んんん??
不老不死…?ん?
嘘!?私の慎ましやかな胸は…お母様みたいになれないってことですか!?
毎日欠かさず牛乳を飲んだりマッサージしてるのに…何の意味もないって事ですか!?
そんな… そんな…
「きゅう…」
「聖女様!?」
「アリス嬢!?」
衝撃の事実を知ってしまい、私は気絶しました。