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80話 仲間意識

夕方にメーデの営む喫茶ゴルゴンに戻ると、相変わらず閑古鳥が鳴く店内。


メーデの方も私達が戻ってきたのと、どうせ誰も来ないという事で早めに閉店する事にした。


そして市場で買ってきたコカトリスの肉を取り出して、今晩のおかずにする事にする。


「十キロってまた大量に買ってきたねー!」


「半分は燻製にして旅の保存食にしよう思ってる」


「なら私の方で燻製にしておくねー! 残りは今から調理に入らせてもらうわー!」


メーデの店は二階が家になっており、私達は二階の部屋へと案内された。料理ができるまで、部屋で寛いでていいという。


「なんか申し訳ないですし、私手伝ってこようかな」


チビ雪が気を利かしてメーデの手伝いをしようかと迷い出すが、リーティアが全て任せておけばいいと止めた。


何でもメーデはとにかく料理好きで、むしろ楽しんでやっているから気にする必要はないらしい。


「私も彼女に料理を習いましたからね。昔は一切料理ができませんでした」


「へーそうなんだ。どういう経緯で会ったの?」


「それは……」


「あ、言いたくなかったら無理に言わなくていいわよ」


あの二人の昔の姿を見たら、恐らくロクな出会い方してないような想像は難なくできた。


「まあ、もうここまで来たら隠す事もないと思うので言いますけど。私が一人でバーで呑んでいたら、横から絡んで来たのがメーデでした。私の酒を勝手に呑んで、それから」


「う、うん。それから?」


「なんか嫌な予感がするぜ」


「私もです!」


「後はご想像の通り、大喧嘩になりました。バーどころか、その町全体を戦場と化してしまうぐらいに。

ああ、今となっては何てくだらない事であんな喧嘩を」


リーティアが恥ずかしそうに両手で顔を覆った。本当に昔は荒くれ者だったんだな。


「じゃあ大喧嘩の後に仲良くなったの?」


「いえチビ雪さん。そんな硬派な展開にはなりません。その後も会う度に喧嘩になりました。最初はメチャクチャ仲が悪かったんですよ。

転機となったのはそうですね、クライドやグリテアが魔界の覇権を争い始めたくらいでしょうか。あんな奴らに魔界の覇権を握られるぐらいなら、私が覇権を握って好き勝手できる世界を作ってやるわ! ってイキがってたらメーデも賛同してきて。そこで何となく意気投合しました」


「なんかスゲーな。今の魔界じゃ考えられないぜ」


「そうね、魔王クライドも魔王グリテアも、今じゃ表向きは仲良くやってるみたいだし」


またリーティアから昔ばなしを聞いていたら、下からメーデの呼ぶ声が聞こえた。夕食の準備ができたから、店内を貸し切ってパーティーをしようと言ってきた。


言われるがまま下に下りると、とても一人で作ったとは思えないほどの豪勢な料理が並んでいた。


お酒も用意されていて、完全に騒ぐ気満々になっている。


「今日は久しぶりに旧友に会えたし! リーティアが私以外の友達を連れてきたし! そしてあなた達の旅の無事を祈って乾杯しましょうー!」


「全くあなたは。いくら何でも大袈裟過ぎるよ。こんな豪勢な料理にしなくても」


「固いこと言わないでよ! 私もあなたに会ってテンション上がったんだから!」


「だ、だからそれが大袈裟だと…」


リーティアが顔を赤らめて、あからさまに照れている。どうやらメーデの前では、完全に素に戻ってしまうのかもしれないな。


それにリーティアも何だかんだ言ってるけど、ここに来ようと言ったのはリーティアだったし。


昔は色々あったのかもしれないけど、五百年以上も交友を続けられる友達なんて普通に凄いと思う。そういう友達がいるのは素直に羨ましいと思ってしまった。


「せっかく用意してくれたんだし、私達も有難くいただきましょう!」


「はい! スノーお姉さまも、たまにはいい事言いますね!」


「たまにはって、どういう意味かな? チビ雪ちゃん!」


「いたたたた! 頬をひっふぁらないでください!」


からかってきたチビ雪の頬を両手で摘まんで引っ張る。


「いいなぁ、みんなにはお互いに冗談言えるような相手がいて。俺は帰れる故郷もなくなったし、そういう仲間もいないしな」


何故か少し寂しそうにするカールだけど、そんな言い方されるとまるで私達が仲間じゃないみたいだ。


確かに出会い方はアレだったけど、今となっては十分仲間と言ってもいいんじゃないかと思う。


「カール、何寂しいこと言ってんの。パーティー始まる前に勝手にしんみりしないでよ」


「そうだよ! 冗談言い合える仲間ならここに居るじゃん!」


「ああ、そうだな! すまん! 俺らしくないこと言っちまって! みんな楽しもう!」


「それじゃあ飲み物は全員持ったかなー? じゃあ! 今日の出会いを祝して! 乾杯!」


「「「「かんぱーい!!!」」」」


メーデが乾杯の音頭を取り、いよいよ宴がスタートした。


「プッハー! こうやってみんなで飲む酒は最高じゃー!」


メーデも酒好きなのか、乾杯して最初の一杯を秒で飲み干してしまった。


「なにこれ、美味しいー!」


「ホントですね! ガーデン・マノスでも、これだけの料理は中々食べられないですよ!」


「二人とも私の料理、気に入ってくれたみたいで嬉しいよー! 遠慮せずどんどん食べてねー!」


並んだ料理がとにかく凄くて、そしてどれを食べても美味しい。私とチビ雪は一心不乱に料理を頬張っていた。


その横ではリーティアとカール、そしてメーデがお酒を浴びるように呑んでいる。


「そう言えば、あなたと呑むのって何年ぶりだっけー?」


「私の記憶が確かなら、十年ぶりぐらいじゃない」


「へー、二人ともそんなに会ってなかったんだな」


「会うには会ってたけど、飲むってなると中々ねー!」


「ええ、私もメーデも酒好きで二人で呑むと、その店に置いてあるお酒を飲み潰してしまう事もあったので」


「マジかよ、二人とも規格外だな」


パーティーがスタートして各々が好きな様に過ごす。


途中からチビ雪が、また懲りずにカールにトランプを挑み始め、珍しくリーティアもそれに参戦して遊び始めた。


私の方はカウンター席に座ってドリンクを飲みながらまったりとしていたら、お酒のグラスを持ったメーデが隣に座ってきた。


「ちょっといいかなー? お互いハブられたぼっち同士仲良くしましょうー!」


「わ、私は別にハブられた訳じゃなくて! 単に遊ぶ気分じゃなかったというか!」


変に焦って言い返すが、グラスをカウンターテーブルにコトンと置いてメーデが静かに語り出す。


「ねえ、リーティアの事よろしくお願いねー」


「え? それってどういう事ですか?」


「ああ見えて寂しがり屋なのよー、昔から私以外に誰も付いてくる者もいなかったし。本人は強がって面倒だからなんて言ってるけどねー」


「そうかな、私よりも全然しっかりしてると思うけど。たまに変なところはあるけどね」


「たぶんだけど、リーティアも貴女だから一緒に行ってもいいと思ったんだと思うよー。魔王小雪さん!」


「ああ、やっぱり気付いてたんですね。でもまあ、うん。何だかんだでここまで一緒に旅してきた仲だし私も凄く助けられたし、勿論これからも大事な仲間としてやって行くつもりですよ」


私の言葉を聞いたメーデが優しく微笑む。頭の蛇は少し私を威嚇してきたけど。


でも何だろう、よく考えると仲間という言葉を使ったのって初めてかも。自分の中でむず痒い変な気持ちになりながら、宴は夜遅くまで続いていった。

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