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75話 リグレット到着

「やった! また私の勝ちー!」


魔道列車に乗ってユトグアを出発し、列車内では駅弁を食べた後にトランプで遊んでいた。やっているのはインディアンポーカーというゲームだ。


インディアンポーカーで私は三連勝をして、非常に気分よく楽しんでいた。


「あーダメだ! こんな運任せだと俺でも勝てないよ。まあ、みんなで遊ぶなら楽しいからいいけどな!」


インディアンポーカーは最初の一枚だけを額に当て、相手のカードが見える状態で自分のカードが強いか弱いかを予想して遊ぶゲーム。


自分のカードが見えない分、相手との駆け引きが上手いカールでも予想する事が困難になる。


カードを配るのもリーティアが全てやっていた為、カールはイカサマのしようもないので公平に行う事ができた。


「次は私が勝ちます!」


「じゃあチビ雪さんに良いカードが行くようにしますね」


「リーティア! そういうのはダメよ!」


「そうだ! これはフェアにいかないと楽しくなくなる!」


「冗談ですよ。あ、ビアあるだけ全部ください」


リーティアはワゴン販売が通るたびにお酒を買っていたけど、とうとう全部買い占めるつもりだ。


ワゴン販売のお姉さんが、かなり困った顔をしている。


「リーティア、ちょっと呑み過ぎじゃない?」


「これが列車旅の醍醐味ですよ。景色を眺めながら、人目をはばからずお酒を飲む。これが至高の旅になるというものです」


いやいや、それ完全に吞兵衛の考えだから。


するとワゴン販売のお姉さんがリーティアに余計な気を利かしてきた。


「あのお客様、ビアはこれで終わりになるのですが、宜しければ他のお酒をご用意いたしましょうか?」


それを聞いたリーティアは、当然目を輝かせて持って来るように注文をする。


「お酒とアニメの事になると、この悪魔ダメですね」


「チビ雪さん、容赦ないですね。正にその通りです!」


とうとう開き直りやがったよ。でも酒代はリーティアが天使カフェで働いたお金で買っているから、私達がどうこう言う事はできないけど。


ワゴン販売のお姉さんが戻って来ると、ワインのボトルを使い捨てのグラスと共にリーティアに渡した。


「ありがとう。ついでに、そこのお菓子もください」


おつまみになるお菓子も買って、正に呑む為に万全の状態になる。


「早く再開しようぜ! このまま負けたままだと俺の名が廃るってもんだ!」


「少し待ってください。ゴクゴク、ジュルルー」


新しく買ったビアを一気に半分以上呑んでから、リーティアはカードを配り始める。今はこれが、あの大悪魔リーティアとはとても思えない。


ただの飲んだくれのおっさんだ…。


その後もリグレットに到着するまで、四人でインディアンポーカーで盛り上がった。


列車は各駅で停車しながら、今日の最終駅になるリグレット駅へと到着した。列車からホームへ降りると、すでに暗くなっていて人もまばらの状態だ。


「あー、流石に疲れた。朝に出発して、もう夜も二十二時を回ってるなんて」


「約十四時間の長旅でしたね。でも歩きだったら、今頃どの辺りを歩いてた事やら」


「そう考えると、今回は列車を使って正解だったな!」


インディアンポーカーで盛り上がったのも途中まで。夕方より少し前には遊び疲れてリーティア以外は全員寝てしまっていた。それからもリーティアは一人で呑み続けていたみたいだけど。


「早く今晩の宿を探しましょう。リグレットは田舎町ですから、ヴィントナーやユトグア程は宿泊できる場所はありません」


リグレットはユトグアと港町ワースを結ぶ中継地としての役割以外は、あまり立地が良いとは言えない場所になる。大陸横断鉄道の駅ができた事で以前よりはマシになったとはいえ、まだまだ発展途上の町だ。


「急いで泊まれる所を探すわよ! 野宿なんて御免なんだから!」


駅の外に出ると、すでに町の明かりは全くと言っていい程なく町ゆく人もまばらだ。


その光景を見て急激に不安に襲われた。


「やばいぜ姉御! この町もう寝てやがる!」


「嘘でしょ!? まだ二十二時よ! 夜はこれからじゃないの!」


「私もこんな暗い町は、カールの村以来です! 奴隷時代でも見た事ありません!」


「おい! チビ雪ちゃん! どさくさに紛れて俺の故郷をディスらないでくれ!」


カールはともかく、私もチビ雪も都会生活が長かったから、こんなに明かりのない町はかなり珍しかった。


「三人とも、騒いでないで探しますよ」


「「「はい」」」


ずっとお酒を飲んでたくせに、何故か一番冷静なリーティアに諭され、明かりの少ないリグレットの町を彷徨う事になる。


だけど案の定、泊まれる宿は中々見つからない。


すでにチェックイン時間が過ぎているか満室になっているかで、門前払いを喰らい続ける。明らかに宿の数が少ないのも、見つからない要因になっていた。


「駅から離れると、どんどん暗くなっていくね。まるで私達以外誰もいないゴーストタウンみたいに思えてくるわ」


少し大袈裟な言い方だけど、ガーデン・マノス出身の私にとっては驚きが大きかったのだ。


「これでも明るい方ですよ。昔の魔界は都会と言われる街でも、明かりが全然ないのが当たり前でしたからね。最近じゃ私も近代文明に慣れてきて、正直落ち着かないですけど」


「うわー、私その時代に生まれなくて良かった」


「やれやれ、これだから現代魔王様は。私の時代は、これぐらいで音を上げる魔族なんていなかったですよ。ホントこれだから最近の子は」


「リーティア、姑みたいな言い方しないで!」


酔ってるのか知らないけど、リーティアがめんどくさい絡み方をしてきた。


それを見たチビ雪が、つい余計なことを言ってしまう。


「何か年寄りみたいですね!」


「ウフフフふふふ。チビ雪さん、今何か言いましたか?」


リーティアは笑顔を見せた後、カッと目を見開いてチビ雪を凝視した。


当然チビ雪は顔を真っ青にして、体をガタガタ震わせて必死に謝る。


「な、な、な、何も言ってないです!!! ごめんなさい! ごめんなさい!! ごめんなさい!!!」


あまりに怖かったのか、チビ雪は私のマントにしがみ付き、後ろでガタガタ震えながら一緒に歩く。


「リーティア、あまりチビ雪ちゃんを怖がらせないで。あなたの正体知ってから、冗談に思えないんだから」


「ごめんなさいね。年寄りと言われて、つい」


どうやらリーティアに『年寄り』は禁句だったようだ。これからは気を付けよう。


チビ雪をなだめながらリグレットの町を歩いていると、ようやく一軒宿らしき建物を見つけた。


「私が聞いてきます。ここで待っていてください」


リーティアが一人で宿へと入っていき、部屋が空いているかを確認する。


待つこと約一分、出入り口からリーティアが出て来て、空き部屋がある事を伝えてきた。


「なんか、あまりテンションが上がらない宿ですね」


「そうね、これならテントの方がマシかも」


「まあ、そう言うなよ二人とも! 早く行こうぜ!」


出来ればパスしたいようなボロ宿だったけど、背に腹は代えられないので仕方なく泊まる事になった。

最後までお読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんで頂けたら、ブックマークや評価をして頂けると嬉しいです。


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