73話 次の目的地
「私の店で働く従業員達の中には、訳アリの者達も多くてね! だから私は彼女たちが住込みで働けるように不動産を持っているのさ!」
大天使ツカサエルに数日泊まる場所を提供してもらう事を交渉しているけど、どうやら従業員用の部屋を貸してくれるという事らしい。
一応タダで貸してくれると言ってくれたけど、流石に気が引けるので店の手伝いをする事になった。
「じゃあ俺も天使の格好をするのか!」
カールが何故か少しテンションを上げて話すが。
「残念だがキミは天使はダメだよ! キミには代わりの仕事をしてもらうよ!」
「何でだよ! 俺に天使は務まらないってか!」
「逆に、何でそんなに天使になりたいの」
とりあえずカール以外は店で天使となって手伝う事になり、カールは店の雑用係となった。かなり不満そうだったけど。
レストランでの話し合いが終わった後、大天使ツカサエルに借りる部屋を案内され。
そこは天使カフェの裏にある三階建てのマンション。ちょうど一部屋だけ空いてたらしい。
二階にある一番奥の部屋の前に来ると、大天使ツカサエルが鍵を開けてドアを開けた。
「うわー! 凄い!」
部屋を見た第一声、チビ雪が大声を上げた。
インテリアル・パレスにも引けを取らない程の広さと綺麗な部屋だったから。
「従業員用にしては随分豪華ね」
「お店で働いてくれる天使たちは私の宝みたいなもんさ! だから不自由しない環境を提供しているんだよ!」
見た目はアレだけど、凄く従業員思いの良いおじさんなのは分かった。
「大天使ツカサエル、ありがとうございます。数日お世話になります」
全員でお礼を言うと、四人で部屋へと入る。
「あ! そうだ後、言わなければいけない事が」
ラマニに操られていた大天使ツカサエルの知り合いの情報屋、最期は本来の力を開放したリーティアに葬られた事を伝えなければと思った。
「分かっているよ、天使リーティアが送ってくれたんだろ?」
「え? 知ってたんですか?」
「ああ、天使リーティアから直接連絡があったからね! でも天使スノー、何も気にする事はないよ! 私はむしろ感謝しているくらいだ! 最期に友人を助けてくれてありがとう! 礼を言っておくよ!」
あれは救ったと言えるのだろうか。何ともいたたまれない気持ちになってしまったけど、あまりしつこく掘り返すのもどうかと思い話しは終わりにする事にした。改めて感謝だけ伝えて。
「それじゃあ私は店に戻るよ! 何かあったら気軽に連絡をおくれ!」
大天使ツカサエルはドアを閉じて部屋を後にした。
ただ部屋の中はベッドが二つしかなく、どうするか話し合った結果リーティアは寝ないからいいとして、ベッドは私とチビ雪で使う事にしてカールはソファーで雑魚寝する事になる。
「俺だけソファーかよ!」
「仕方ないじゃない。嫌なら床で寝れば」
「こんなのは不当だ! 待遇の改善を」
「それよりもスノー様、今後の予定について話し合っては如何ですか?」
私とカールの喧嘩を遮るように、リーティアが割って入った。
「それもそうね」
「お、おい! 俺の話しを聞け―!」
確かに泊まれる部屋も決まったしカールを無視して、ここで今後の計画を決めておこうとミーティングに入る。
その前にチビ雪が私に話しを切り出してきた。
「あの、さっきはごめんなさい。変に感情的になってしまって」
謝罪をしてきたチビ雪の頭に手をポンとおくと、もういいからと笑顔を返す。
さて、仲直りもできたところで今後の計画を練る。
「まずここから先ですが魔道列車を使えば、魔都市クランレアドまでは二日あれば到着します」
「魔都市クランレアド、魔王グリテア様がいる街ですか」
「チビ雪ちゃんは会った事がないんだっけ?」
「はい、私がマサオ様に引き取られてからは一度しかガーデン・マノスに来られた事がないので。その時もマサオ様が対応して、私はホワイトガーデンに入る事もありませんでした。小雪様は会った事あるんですか?」
「ええ、一度だけね」
随分前だけど魔王グリテアは、ガーデン・マノスに来訪してきた時に実は一度だけ会った事がある。
「凄いな姉御、俺は顔も知らないってのに」
「これでも一応、魔王の娘ですから! ていうか巣魔火で調べれば顔ぐらい出てくるわよ」
巣魔火で検索して出てきた魔王グリテアの画像をカールに見せた。
「フーン、何百年も生きてるから、どんなおっさんなのかと思ったら。言っちゃ悪いが何というか青二才というか。ロン毛の如何にも女にモテてます的なオーラを醸し出した嫌な感じだな」
「ええー、カッコいいじゃないですか。私は好きですよ! 実際に会った事ないですけど、リアルはもっとカッコいいんだろうなー!」
巣魔火の画面に映る魔王グリテアの画像は、肩にかけて少しパーマを充てたような茶髪の長い髪の毛で、スーツでキリっとした出で立ち。目鼻立ちも良く、正統派のイケメンといった感じ。
チビ雪は実際に会った事あるのは魔王クライドだけだけど、何年か前に初めて魔王グリテアの画像を見た時から少し一目惚れしてるご様子。
「マジか、チビ雪ちゃんはこんなのが良いのか?」
「こんなのとは失礼じゃない!」
二人で、どうでもいい喧嘩を始めてしまった。
だけど私は一度だけ会った時に父上に紹介されたような気がするけど、ただ私も三歳か四歳ぐらいと、まだ小さい時だったので見た目は正直あまり覚えていない。
でも何だろうな、こんな見た目だったっけかな?
実は魔王グリテアの写真は、以前からちょっと引っ掛かるんだよな。
それに何故か一緒に遊んでたような記憶が片隅に薄らとあるんだけど。
でも私まだかなり小さい時だったし、たぶん夢か昔見たアニメと記憶がごっちゃになってるのかも。
ていうか魔王グリテアの事は、リーティアに聞けば早いか。
「リーティアは当然、魔王グリテアの事はよく知ってるのよね?」
「はい、現在は中央大陸東側を統べるゲームオ…グリテアのことは嫌でも」
「ん? 今なんか言い掛けなかった?」
「いえ、何でもないです」
何だろう、リーティアが少し不満そうな顔をしてる。まあ元々魔界の覇権を争った程の間柄だし、色々と思うところはあるのかもしれない。
とりあえず魔王グリテアの話しは置いとくとして、今後の予定の話しの続きを再開する。
「魔都市クランレアドまで一気に行ってもいいんだけど、実は個人的に行きたい所があるのよね」
「どこですか?」
「それは海! 私まだ海を見た事ないから!」
「ああー! 私もです!」
私とチビ雪で海の見える街に行きたいと意見が一致した。
「となれば、ここからさらに東に行くか、南に進路を変えるかですね」
「南に向かうと、かなり遠回りになってしまうから東に向かいましょうか。どんな街があるの?」
リーティアが地図を開いて確認をする。
「東に向かって一番近い海に面している町は、港町ワースという所です。ユトグアからだと歩いて一週間は掛かりますね。早くてですが」
「魔道列車は使えない?」
「途中までなら使えますよ。ユトグアとワースの間に、リグレットという街まで魔道列車が整備されています。実はリグレットには私の友達がいるんです」
「じゃあそこまでは列車を使って、リグレットからは歩いてワースまで行きましょうか!」
「うん! 賛成ー!」
「俺も何だかんだ海を見た事ないから異論はないぜ!」
こうして次の目的地が決まった。魔道列車も乗る機会がなかったし、今回はお金もあるから無理せず魔道列車を使って行く事になる。
ユトグアを出るのは三日後と決め、それまでは大天使ツカサエルにお世話になる事になった。
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