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72話 因縁の場所

ホテルのベランダを壊してから三日後。修理するため少しの間、部屋を出るように言われてしまった。


こればっかりは仕方がない。全部私とカールが悪いのだ。しかしベランダの修理がどれだけ掛かるか分からないし、ここはもうお世話になったインテリアル・パレスをチェックアウトする事に。


チビ雪にとっては気に入ったホテルを出なければならなくなったので、かなりご立腹だったけど仕方がないのだ。


「チビ雪ちゃん、何時までも膨れてないで機嫌直しなさいよ」


「そうだぜ、折角の可愛い顔が台無しだ! あそこ以上に良いホテルだって、すぐに見つかるって!」


「二人に言われたくないです!」


ずっとプクーっと頬を膨らませて怒り続けている。こういう所は、やっぱり子供なんだな。


チビ雪を横目に、四人で街を歩きながら次のホテルを探そうとするが。


「うーん。でも正直言うと、そろそろ街を出てもいいかなって思ってるんだよね」


ユトグアに滞在して、それなりに時間も経ったし、これを機に旅を再開してもいいのかもなとも考えていた。


「確かにな。このままユトグアに居たら根を張ってしまいそうだしな」


「とりあえず今晩泊まるためのホテルを探す事にして、その後の事を決めましょう」


「ああ、それが良いと思うぜ!」


カールが同意してくれるが、二人が黙ったままだ。チビ雪はともかくリーティアもずっと黙っているので意見を求めた。


「リーティア、あなたはどう思う?」


「私はスノー様の命令に従うだけですよ」


思った通りの返事がきた。


じゃあこのまま好きにさせてもらおうと思った時、突然リーティアが有り得ない事を言い出す。


「どうせなら、大天使ツカサエルに数日お世話になるのはどうですか?」


「は? いきなり何言い出すの?」


「実は昨日のバイトでホテルであった事を話したら、『それなら私のところへおいで!』と言われたので」


いきなり大天使ツカサエルのものまねしないでよ、笑いそうになったじゃない!


それに、さっきは私の命令に従うって言ってたのに急に意見を出してきた。


しかも大天使ツカサエルにお世話になるって。


「もし街を出るにしても私もすぐにバイトを辞めれないですし、大天使ツカサエルならタダで泊まれる所を貸してくれますよ」


「いやでも、お金はカジノのお金がまだ残ってるし」


「あれは私のお金だからダメです!」


ここで急にチビ雪がカジノで勝ったお金は自分のだと言い出す。だけど、あのお金は旅の資金を元手に稼ぐ為にやっていた事。


いくらなんでも、そんなワガママ許すわけにはいかない。


「チビ雪ちゃん! 私に怒っているのは分かっているけど、それは許されないわよ!」


「誰も自分の為に使うなんて言ってないです! でも無駄な出費をしてしまったのはスノーお姉さまとカールが原因だし、これ以上の無駄な出費はさせません!」


街の真ん中で喧嘩を始めてしまい、周囲から怪奇な目で見られる。


チビ雪の言いたい事も分かるけど、そうは言っても泊まる場所は必要だ。


すると喧嘩をする私達の間にスッと入ってきたリーティアが止めに入り、さっきの話しを続けた。


「スノー様、ここは大天使ツカサエルにお世話になりましょう。少しの間だけです。旅に出るタイミングはスノー様が決めて頂いて構いません。チビ雪さんも、それでいいですね?」


「うん、私はそれでいい」


不機嫌なままチビ雪は答え、私の方はこれ以上みっともないところを見せる訳にもいかないし、渋々同意することになった。


リーティアがその場で大天使ツカサエルに電話をして確認を取ると、すぐに指定の場所に来るように言われた。


その場所は、以前私が差別を受けたあのレストランだ。


「ねえ、場所変えられないの? その店は行きたくないんだけど」


「それが、大天使ツカサエルが今そこにいるみたいです」


「じゃあみんなで行って来て。私は外にいる」


「お世話になるのに、顔を出さないのは失礼じゃないですか? 一応パーティのリーダーなんだし」


「チビ雪ちゃん、さっきから本当に噛み付いてくるわね。いい加減にしないと、私もそろそろ本気で怒るわよ?」


仮面の下からでも分かるぐらいに、鋭い視線をチビ雪に向ける。


それに対してチビ雪も睨み返してくる。


「まあまあ姉御、落ちついて。チビ雪ちゃんもその辺にしろよ! 俺にも責任はあるし、姉御だけを責めるのは違うと思うぜ! とりあえずみんなで店に行こう」


気まずい空気となる中、カールとリーティアの二人に止められて、あの問題のレストランへと向かった。


レストランの入るショッピングモールに入り、四人で向かうが足取りは重い。


「ねえ、やっぱり三人だけで行って来てよ。私は行きたくない」


我慢できずに足を止めてしまった。初めて受けた差別は、自分でも思ってた以上にショックが大きかったようだ。


あのレストランが近付くにつれて、少し吐き気を感じるぐらいに抵抗感が全身を襲った。


「分かりました。それではスノー様は店の外でお待ちください。大天使ツカサエルに場所を変えてもらうように言ってきます」


どうやらリーティアも察してくれたらしい。


レストランから少し離れた所で一人待機することにして、他の三人でレストランへと入っていった。


待つこと約三分。


レストランからリーティアが出て来て、一緒に店に入るように言ってきた。


「スノー様、不安かもしれませんが大丈夫です。一緒に行きましょう。大天使ツカサエルが待っています」


「もし、もし少しでも気分が悪くなる事があったら、私はすぐに出るからね」


「ええ、それで構いません」


嫌々ながらも、リーティアの後を付いて行くように一緒に店へと入った。


「いらっしゃいませ。あ、貴女は!」


接客対応をした女性店員が私の顔を見て、すぐに反応をしてきた。


そして私も見覚えがある。あの時、頑なに私だけに水を出す事を拒んだ店員だ。忘れられる訳がない。


「リーティア、私やっぱり…」


我慢できずに出ようと思った時だった。


「あ、あの! あの時は大変失礼なことを! 本当に申し訳ございませんでした!」


「…………え? え?」


店員の予想だにしていない対応に、完全に固まってしまった。


あの時と同じ店員とは思えない程に態度が変わり、腰を九十度折り曲げて頭を下げてきた。


「あそこに座っている三人のテーブルです。彼女にも水をお願いします」


「は、はい! 只今!」


リーティアに言われるがまま店員は、奥へと引っ込み水を用意してきた。


「それではお客様、あちらのテーブルに!」


「え、ええ」


大天使ツカサエルとカール、そしてチビ雪が待つテーブルへと案内され席へと座った。


「どうぞ、お水です。もし、おかわりがあれば何時でもお申し付けください」


「またお金を取るの?」


「い、いえ! 滅相もございません! もちろんサービスです!」


そう言って店員は頭を下げて戻っていった。


あの店員だけではなく、レストラン全体の雰囲気も随分変わってる。それに店長の姿も見当たらない。


「やあ! 久しぶりだね! 天使スノー! 急に呼びつけて済まなかったね!」


「え? ああ、大丈夫です」


「それに、ここは天使スノーにとって因縁の場所だったんだろ? 今日はお詫びとして私が奢るよ! 好きな物を頼んで!」


「あ、ありがとうございます」


大天使ツカサエル、天使カフェの時のような頭の輪っかや羽は流石にないけど、小太りのおじさんなのは変わらないのね。


でも、この店の変わり様、一体何があったんだろ。


「俺も最初驚いたんだけど。どうやら店長が変わったらしい」


「そうなの?」


「そうですよ。聞いた所によると、たまたま訪れた領主に悪態を垂れたみたいです」


「へー、そうなんだ」


リーティアとカールから説明を受けたけど、その前で大天使ツカサエルが笑いを堪えている。


どうもその笑いが気になったんだけど、次第にリーティアがかけた呪いの事を思い出した。


「も、もしかして! それってリーティアが店長にかけた」


「大きな声で言ってはダメです」


口の前で人差し指を立てたリーティアに、少し声を絞る様に促される。


「あ! ごめん。じゃあ、やっぱりそうなんだ?」


「ええ、効果絶大でしょ?」


「本当ね」


「つまらない話しはその辺にして! さあ料理を頼んで!」


大天使ツカサエルからメニューを渡されて、とりあえず全員で料理を頼む事に。


その後は雰囲気が変わったレストランからは特に差別を受ける事はなく、それどころかお詫びとして色々サービスとして料理などが提供されてしまい、返って申し訳ない感じになってしまう。

最後までお読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんで頂けたら、ブックマークや評価をして頂けると嬉しいです。


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