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69話 変身グッズ

まさかのカジノで大勝ちをして、三人で血相を変えてカジノを出た。あまりの大金だったので、カジノ前で魔動車タクシーを捕まえてホテルまで帰る事になる。


チビ雪は相当焦ったのか、途中からイミテーションが崩れ始めていて、カジノの中で今にも本当の姿に戻りそうなぐらいになっていた。


魔動車タクシーの中では誰も喋らず、妙な空気が流れていたが。


そしてホテルの前に無事到着すると、タクシー代を払って急いで部屋へと戻った。


部屋に入って第一声。


「凄いわねー! チビ雪ちゃん!!」


「全くだぜ!! スロットで大当たりするなんて!!」


私とカールが絶叫する中、元の姿に戻ったチビ雪がヘナヘナと床に崩れ落ちる。


「も、もうカジノは懲り懲りです」


一人で野次馬に囲まれて大当たりを繰り返したのが、余程怖かったらしい。


まあ元々はチビ雪が入れる場所じゃないから、どのみち今後は連れて行くつもりはなかったけど。


「ところで姉御、このお金どうする?」


カジノから専用のバッグに詰められた一千万ミラを超える大金。


とりあえずパーティでお財布係の、リーティアが戻って来たら渡す事にしよう。


そしてルームサービスを頼み、料理が来るまでにシャワーを浴びて汗を流した。


シャワーを浴びている間にルームサービスが届き、チビ雪とカールがテーブルに並べておいてくれていた。


「いただきます」


「「いただきまーす」」


三人で先に夕食を食べ始める。


カジノに行ってたのもあって、かなり遅い夕食となった。


「そういえばリーティアの奴、まだ戻って来てないんだな」


「確かにそうね。もう戻って来てると思ってたけど」


時間はもう二十一時を回っている。こんな時間まで天使カフェはやっていないはずなのに。


「ちょっと心配になるわね」


「大丈夫じゃないか? リーティアなら、ここにいる誰よりも心配ないだろ」


「まあそうかもしれないけど、万が一って事もあるし」


カールと二人でリーティアの話しをするが、チビ雪がずっと押し黙ったままだ。


「ていうかチビ雪ちゃん、やけに静かだけど、どうかしたの?」


「あんまり食も進んでなさそうだし、具合でも悪いのか?」


「いえ、そういう訳では」


歯切れの悪いチビ雪は、一旦フォークを皿に置いて椅子を立った。


「食欲があまりないので、シャワーを浴びてきます」


「うん、分かったわ。もしかしてカジノでの出来事をまだ引きずってる?」


そう聞かれて浴室に向かったチビ雪の動きが止まった。そして後ろを振り返ったチビ雪は、少し涙目になって答える。


「だって、あんなに野次馬に囲まれるなんて思わなかったし…何人ものおじさんから凄い声かけられたし…メダルは止まらないし…何でもっと早く助けに来てくれなかったんですか…」


「ええー、行きたいって言ったの自分じゃん」


「でもチビ雪ちゃんを一人にしたのは、姉御のミスだったかもな」


「何で私が責められるの!?」


その間も、チビ雪は目に涙を溜めて見つめてくる。そんな目で見ないでよ。


「わ、分かった分かった! 私が悪かったわよ! とりあえずシャワーを浴びて気分転換してきなさい」


シャワーを浴びるよう促し、トボトボと歩きながらチビ雪は浴室へと入っていった。


やっぱりカジノはチビ雪にとっては、あまりに刺激が強過ぎたのかもしれない。


その直後、部屋のドアが開きリーティアが帰って来る。


「ただいま帰りました」


「おかえり、リーティア」


「今日は一段と遅かったな」


「ええ、ちょっと買い物をしていたもので」


ディメンション・ボックスを開き、リーティアは買ってきた物を見せてくれる。


それは子供用のオモチャだった。腕に装着して『変身!』と唱えると、中央のギミックが回転しながら光るだけのもの。


「なんだそれ?」


「これは最近、魔界で放送されているアニメの変身グッズです。実際に変身できる訳じゃありませんが」


「え? そんなモノ何に使うの?」


「ウフフフ、秘密です」


何だか楽しそうに笑っているけど、それを持ったままリーティアは隣の部屋へと入っていく。


そしてドアを閉める前の、僅かな隙間から顔を覗かせ、


「私がここの部屋から出てくるまでは、決して部屋を開けてはいけません」


意味深な言葉だけを残してドアを閉めた。


それを言われると、余計に覗きたくなってくるの分かって言ってるのかな。


「なあ、姉御! ちょっとだけ覗いてみようぜ!」


「あんたは少しは警戒心というものがないの? 絶対すぐにバレるに決まってんじゃん」


「でもあれはフリだろ? つまり覗けって事だろ!」


怖いもの見たさのカールは、ゆっくりと隣部屋のドアに近付き、ドアノブに手をかける。


「ああもう! 仕方ない!」


正直私も、ああ言われると気になって仕方ない。


カールと並んで、息を殺しながら静かにドアを開けて覗き込んだ。


「へーん! しーん!!」


そこには、あの変身グッズを右腕に嵌めて変身ポーズを取るリーティアの姿が。


思わず声を出して笑いそうになるのを、必死に我慢する。


ところが、


「見ましたね? あれ程見るなと言っておいたのに」


向こう側を見ていたリーティアが、ゆっくりと後ろを振り返った。


どうやら、とっくに気付かれていたようだ。


カールと慌ててドアから離れる。少ししてから、ドアがゆっくりと開いた。


ドアが開いて立っていたのは、満面の笑顔のリーティア。


「ち、違うの!? こいつが覗きたいって!」


「お、おい!? 覗いたのは姉御も一緒だろ!」


二人して苦し紛れの言い訳をするが、リーティアの表情は変わらない。


慌てる私達に対して、リーティアは少しずつ近づいてくる。


「わ、わあああ!! ごめんなさい!!」


「許してください!! すみませんでしたー!!」


カールと二人で正座して、手を合わせて必死に謝る。


近付いたリーティアは、正座する私達の目の前に立った。そして右手を口元へと持って行き、思わぬ反応を示す。


「ぷっ! クスクス、ウフフフ!」


口元を抑えて堪え切れないように笑いを噴き出した。突然の事で、意味が分からないでいると。


「冗談ですよ、ああ言えば必ず覗くだろうなと思ってたので。二人の反応が予想通り過ぎて、思わず笑ってしまいました」


うーん、どうやら完全に掌の上で遊ばれていたらしい。


大体この悪魔のは冗談に見えないんだよな。


「でも次は本当に覗かないでくださいね。これからカールさんの武器の創作に取り掛かるので」


「もしかして、そのオモチャって俺の武器のためか!?」


「そうですよ。明日の朝には出来ると思っていますが、私は創作中に邪魔をされるのが嫌いなので、次は冗談では済みませんよ」


リーティアの問いかけに大きく頷いて、再び隣部屋に入っていった。一体あれで、どんな武器を作ろうというのか。


気にはなるが、これ以上は本当に怖いので覗くのは止めておいた。


「まさかだけど、俺の武器って変身できる物だったりして」


「それなら私も作ってもらいたいな」


「姉御は何に変身したいんだ?」


「それは昔見てたアニメの…って、な、何でもない!」


「なんだよ! そこまで言ったら言わないとダメだろ!」


「いいえ、言わない! 言わないったら言わない!」


結局この日は、カジノで稼いだ大金をリーティアに渡しそびれたのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんで頂けたら、ブックマークや評価をして頂けると嬉しいです。


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