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65話 思いがけない差別

リーティアがカールの武器を作る事になり、四人でユトグアの街へと繰り出す事になった。


よくよく考えると、全員で街に買い物に出るのは初めての事だ。


漆黒の剣に邪魔をされ続けて、ユトグアに着いてからも落ち着かない日が多かったせいもあるけど。


「たまには、こうやってみんなで買い物もいいわね」


「はい! 何だかワクワクします!」


ユトグアの中心街に訪れ、大型ショッピングモールで久しぶりのショッピングを楽しむ。


ガーデン・マノス以来のショッピングモールで私もチビ雪もテンションが上がり、カールの武器の素材集めをそっちのけで駆け回っていた。




――――




「あの二人、俺の武器の素材集めだって事、すっかり忘れてるよ…」


「まあいいじゃないですか。お二人とも戦闘になると毎回頑張ってきたのです。今日ぐらいは好きにさせてあげて、素材集めは私達でやりましょう」


「確かにそれもそうだな! リーティア、今日はよろしく頼むよ!」


はしゃぐ二人を横目に、リーティアとカールは素材集めのために目的の店を回り始める。


「どんな素材を集めればいいんだ?」


「カールさんの武器については、ちょっと変化球でいきたいと思ってます。まず向かうのは、あそこです」


リーティアが指差したのは、なんと巣魔火スマホが売られているブースだった。


「え? 巣魔火スマホを買うのか!?」


「そうですよ。それがカールさんの武器のコアになります」


巣魔火スマホが武器のコアに? 一体どんな武器を作るつもりなんだ」


「ウフフ、それは出来てからのお楽しみです!」


リーティアは、どこかしらワクワクしたような高揚を見せて笑った。


巣魔火スマホを購入したリーティアは、その後もカールと共に必要な素材集めを続けて行く。


しばらくカールと必要な材料を買い揃えた所でお昼が近付き、そこで連絡を取り合ってレストランの前で合流した。


「二人とも凄いたくさん買い物されたんですね」


スノーとチビ雪は、大量の買い物袋を重たそうに両手に持っている。


「ちょっと調子に乗り過ぎたかも」


「スノーお姉さまが、あれもこれもと買うから」


「何で私のせいなの! チビ雪ちゃんも手に一杯持ってるじゃない!」


「わ、私はちゃんと考えて買ったんです!」


「じゃあ私だって、ちゃんと考えて買いましたー!」


スノーとチビ雪は、子供の喧嘩を周りをはばからず始めてしまう。


その光景が何とも微笑ましい。


「おい二人とも、喧嘩はそれぐらいにして飯にしようぜ!」


カールに止められて、喧嘩は収まる。その瞬間にお腹が鳴った。


「お二人のお荷物を、私のディメンション・ボックスに入れておきましょう」


「ありがとうリーティア、本当に助かるわ」


ディメンション・ボックスに買い物した荷物を全て放り込み、四人でレストランがあるフロアへと向かう。




――――




昼食を取るため、四人でフードコートへと訪れた。そこで、大衆向けのレストランへと入った。


店の従業員に案内され、四人掛けのテーブルに座る。


座ってからしばらくすると、お店の従業員が水を持って来たのだが。


「サービスの水をお持ちしました」


店員が持って来た水は、何故か三つしかない。


しかも他の三人の前に水を置き、私だけに水が置かれなかった。


「ねえ、水もう一杯もらえるかしら?」


「申し訳ありませんが、あなたは有料になります」


「は? 意味が分からないんだけど?」


店員が表情一つ変えずに、水代を請求してきた。


いや、水代を払えと言うのなら払ってもいい。だけど『私だけ』というのは納得がいかない。


他の客を見ていても、全員サービスで出されているようだし。


「何で私だけ水代を払わないといけないの? いいから水を持って来て」


「残念ですが、それはできません」


「何で出来ないの? 納得のいく説明をしてちょうだい」


私と店員が揉め始めた事で、周囲がザワザワし始める。


しかし店の対応に納得がいかないのは私だけではない。


「一人だけ水代を払えっておかしくないですか!」


「そうだぜ! だったら俺達にだって請求しないとフェアじゃない!」


「そう言われても、これは店の方針なので私に言われても困ります」


チビ雪とカールも抗議するが、店員の態度が変わる事はなかった。


するとリーティアが店員に要望をする。


「貴女では話になりません。店長を呼んで来てください」


いつも通りの気怠さはあるものの、しばらくの付き合いでリーティアの言葉に怒りが含まれているのは感じた。


そう言われた店員は、少し不機嫌な顔をして店の奥にいる店長を呼びに向かった。


「一体私が何したっていうのよ」


「スノーお姉さま、もうこんな店出ましょう」


「そうだな、俺もこんな店で食う気は失せたぜ」


「とりあえず店長の説明を聞きましょう。後は私に任せてください」


店長の対応は全てリーティアがやると言い、三人は全て任せる事にする。


少しして、店の奥から店長が出てきた。


「お客様、何かご不満でも?」


店の奥からは、スキンヘッドで眼つきの鋭いガラの悪い店長が出てきた。


大柄で着ている服が二の腕の太さで、はち切れんばかりになっている。


だけどリーティアは、そんなガラの悪い店長を見ても全く臆する事はない。


「はい、何故この方だけ水を出さないのか説明頂けますか?」


「簡単な事です。この者が魔族ではないからです。俺の店では、魔族にしかサービスはしない方針なので」


どうやら私がハーフ魔族だという事を見抜いていたらしい。四人の中で、純粋な魔族じゃないのは私だけだ。


純粋な魔族は基本的に体に特徴がある者がほとんど。

一見人間に似ていても、頭から角を生やすか耳が尖っているなど何かしら違うところがある。


でも私の体は瞳の色以外は日本人に似ている。つまりは魔族の特徴がほぼないと言ってもいい。


だから分かる者にはハーフ魔族だと一発でバレる。


それでもだ、だからといってこんな扱いを受けるのは納得できるわけがない。


「彼女が純粋な魔族ではないから無料で水は出せないと?」


「そう言ってるだろ。言葉が分からないのか?」


確かに魔界では純粋な魔族しか認めないという、魔族至上主義は残っている事は聞いていた。


ガーデン・マノスから離れれば離れるほど、そういう考えが蔓延るようにもなると。


しかし実際に、こんな差別を受けると少しショックを隠し切れない。


「リーティア、もういいわ。店を出ましょう。どのみち、こんな気分じゃ美味しく食べる事なんて無理だし」


「じゃあお会計を」


「はあ!? 何も食べてないのに、何でお金を払わないといけないの!」


店長がレシートをその場で発行して、三つ分の水代を請求してきた。


「これって私達へのサービスの水だよね! だったら無料じゃないの!」


「いくら何でも横暴だ! こんな事が許されてたまるかよ!」


カールもチビ雪も怒りを露わにするが、店長の対応は変わらない。


「払わないというのであれば、無銭飲食として然るべき対応をさせていただきます」


いくら何でもメチャクチャ過ぎる。ただ買い物を楽しんでただけなのに、何でこんな思いをしないといけないのか。


だけど、ここでいくら粘った所で店長の対応が変わる事はなさそうだ。もう面倒になり、水代を払ってしまって店を出ようと思った。


だがリーティアが食い下がる。


「店長さん、こんな横暴は許されないはずです。後悔する事になりますよ?」


「ほう、それは脅しですかな。お嬢さん」


「脅しではありません。後悔すると言ったら後悔します。必ずね」


リーティアは店長に対して淡々と答えた後、ニッコリと笑って返した。


一緒に旅をしてきた私達には分かる、そのリーティアの笑顔がメチャクチャ怖いことを。


「や、やべぇぜ、姉御! リーティア絶対キレてる!」


「わ、分かってるわよ! とりあえず今は黙っておきましょう」


小声でカールと話しながら、その場を見守った。チビ雪はガタガタ震えている。恐らくリーティアの笑顔が怖いから。


しばらく店長を見つめた後、リーティアは満面の笑顔で店長を見据えたまま財布を取り出し、そこから水代三つ分のお金を出してテーブルに置いた。


そして店長が手に持つレシートを取り上げると口元に持って行き、少しペロッと舐めたあと店長の胸ポケットに仕舞う。


「何のマネですかな? お嬢さん」


「お金は払ったので、レシートは不要という事ですよ。頭の悪い木偶デクの坊さん」


「なっ…」


軽い挑発に店長があからさまに表情が変わる。他人を差別する割に、自分は煽られ耐性がないようだ。


「さあみなさん、こんなお店出ましょう」


「え、ええ」


一通りのやり取りが終わりリーティアに諭されて、そのままレストランを出て行く。


店長が睨みつけるなか店を出た後、完全に外食する気が失せてしまい。


食料品売り場で食料を購入してホテルで食べる事にした。

最後までお読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんで頂けたら、ブックマークや評価をして頂けると嬉しいです。


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