62話 先代魔王マサオの功績
ラマニとの戦いでリーティアが、かつて魔界の三大勢力の一つ、大悪魔リーティアだった事が判明した。
あまりに衝撃的な事実に、私とチビ雪の二人で色々とリーティアに質問が続いていた。
話しが長引いてきたので、一旦食事を取ってから改めて質問を続ける。
「でも場合によっては、魔王クライドからの依頼を断るつもりだったのよね?」
「ええ、何なら最初は微塵も貴女に興味なくて、クライドへの返信も無視してたぐらいです」
「ハッキリ言うわね……まあ、あなた程の大悪魔なら私なんて、そんなものでしょうけど」
「でも初めて見た時に、ちょっぴり興味が出てきたんですよ」
「それって堅造くんと二人で服を買いに行った時のこと?」
「そうです。まさか偶然にも、私の店に来るなんて思ってもいませんでしたからね。
でも貴女を初めて見た時に、意外と面白そうな小娘だと思いました。だから三つの防具を貴女に渡したんですよ」
「面白そうな小娘って……」
本音を語り出すリーティアの一言一言がキツい言い方だ。確かに事実だから仕方ないんだけど。
でも、そう言いながらもリーティアは私に付いて来る事を選んだ。
だけど、一つ引っ掛かることがある。
「リーティアからの試験に合格して、私に付いてきたのよね? でも、それなら私と主従関係を結ぶ必要はなかったんじゃないの? 自分で言うのもなんだけど、私みたいな小娘を主に選ぶなんて」
「確かにキッカケはクライドからの依頼ですが、付いて行くと決めたのは私の意志です。今は貴女への興味本位だけですし、実際に一緒に旅に出て間違いではなかったと思ってますよ。
あの契約書を結ばせたのは万が一、私の力が必要になった時の保険としてです」
「そっか、でも今回に関しては本当に助かったわ。ありがとう、リーティア」
「リーティアありがとう!」
チビ雪と二人で感謝を伝える。ラマニとの戦いは、単純に倒すだけなら私とチビ雪の二人でも出来たかもしれない。でも、それだとカールを救えなかった。
そう考えると、リーティアに全員が救われたと言っても過言ではない。
すると、リーティアが口元に人差し指を置いて釘を刺す。
「小雪様、チビ雪さん、一応言っておきますが、私の力をあまりアテにしないでくださいね。これは二人の成長の旅なのです。私はあくまで旅の補佐役、必要以上に首は突っ込みませんからね。
今回はカールさんが人質に取られたので仕方なく出張りましたが」
「分かったわ。確かにリーティアの言う通りだと思う」
「うん! 私ももっと強くなる!」
一通りリーティアから話しを聞き出して、三人でゆっくりとコーヒーを飲む。今までと何ら変わらない雰囲気で。
「ところで、ラマニがやられた事で漆黒の剣がまた新たな刺客を送って来るかもしれないわね」
「そうですね。用心が必要です」
「あーそれなら大丈夫だと思いますよ。しばらくは手は出してこないでしょう」
リーティアがコーヒーを啜りながら淡々と答える。
「何でそう言い切れるの?」
「私が奴らのアジトにお土産を送っておきましたから」
「もしかしてホテルに到着して、すぐにどこかに行ってたのは奴らのアジトに?」
「ええ、連中のボスがいるアジトは分かってたので。自分の鞭で縛り上げられたラマニを小包にして、ボスにプレゼントしておきました。
慎重派のボスなら、あれを見たら間違いなく撤退するでしょうから」
「ちょっと待って、ボスがいるアジト知ってたの!?」
「ええ、大天使ツカサエルから聞いてました」
「私聞いてないんだけど?」
「そりゃそうです。私が教えてませんもの」
私とチビ雪が呆気に取られる。そして、ふと思い出した。
「ああー! もしかしてカールを迎えに行った時に、大天使ツカサエルから連絡があったのって!」
「そうです。漆黒の剣のボスの居場所を伝える連絡でした。私の巣魔火は探知不可能に細工をしてあるので、緊急の連絡の時は私に来るように大天使ツカサエルに伝えてあったんです」
ホント、どこまでも抜かりない悪魔だ。
しかし隠していたというのは、少し不満が出る。
「私と小雪様が、そんなに信用できませんか!」
珍しくチビ雪がリーティアに噛み付いた。
「ごめんなさいね。でも信用できない訳ではなく、敢えて教えなかったんですよ。教えたらボスのいるアジトに突貫しそうですし」
クスクスと笑いながらリーティアが言う。
そう言われて黙る私とチビ雪。
リーティアの言う通り、ボスの居所を知っていたら、そのまま殴り込みに行ってたかもしれない。
「こう言っては何ですけど、あなた方二人はまだボスと戦うには力不足だと判断しました。恐らく漆黒の剣のボスは、ラマニのような小物とは違います」
「ボスの事も本当は知っているんじゃないの?」
「いいえ、知りません」
「リーティア、私の目を見て」
「契約に誓って」
嘘ばっかり、目が笑ってるんだよ。これもこれで、リーティアは私やチビ雪への試練と捉えているのかもしれない。
一応は一件落着とはなったけど、もう一つ気になる事があった。
「ねえリーティア、ラマニの鞭は破壊しなくてよかったの? あれも他者を操る物でしょ?」
チビ雪がラマニの鞭が一緒にボスの下へ送られた事を問う。ラマニは宿主の璽を使った後、あの鞭で印を押された者を操っていた。
だが、その質問にリーティアは少し呆れたような、ため息交じりの苦笑いをした。
「大丈夫ですよ。宿主の璽は押印しただけで命令が可能なんです。
あの鞭は全く関係ありません。正にあのお坊ちゃんが、勝手に璽を押した相手を操る小道具として使ってただけですよ」
言われてみればそうだ。リーティアに宿主の印を押されたラマニは、そのまま人形と化してしまった。
それに離れていた部下五人も、直接鞭を打たなくても普通に命令できていた。
「なのに鞭を持っていたなんて、あのラマニって奴キモイですね」
チビ雪が辛辣な言葉を投げ捨てた。
「そうでしょう。だから私も思わず頭に来てしまったんですよ。失敗作だったとはいえ、私の作った魔道具があんなのに使われていると思うと」
「まあ、気持ちは分からなくもないわね」
二人でリーティアに同意した。
それにしても、リーティアって本当に色々な物を作ってるんだな。
「ねえ、リーティアって他にどんな物を作ってるの?」
「そうですね、剣なんかも作りますよ。例えばあれとか」
リーティアがコーヒーを啜りながら指差した方向には、私の魔剣スノーフェアリーが置かれていた。
思わず目を疑った。
一旦椅子から立ち上がり、リーティアの後ろに立って指の先に目線を合わせて、片目を瞑って先を見据える。
「…………やっぱり、指の差す方向にはスノーフェアリーが、あるわね」
「はい、ありますよ」
「はい、ありますよ……じゃないわよ! え、え!? 嘘でしょ!?」
「嘘ついてどうするんですか。あれは私が作った物です。クライドから何も聞いてないんですか?」
「聞いてない、というより途中から別の話しになって、魔剣の事は詳しく聞いてなかったんだった」
自分の魔力の秘密についての話しになり、結局はそれ以上の事は魔王クライドから何も聞けなかった。
まさかスノーフェアリーまでリーティアが作っていたなんて。
「小雪様の御父君、マサオ様にはお世話になりましたからね。魔剣は、そのお返しとしてタダで作ったんですよ。ウフフフ」
「父上とも知り合いだったの!?」
「ええ、小雪様が生まれる前です。マサオ様にはアニメや漫画を沢山見させて頂きました! 私に世界はまだまだ広いという事を教えてくれたのです!」
かなり大袈裟な気がするが、ある意味では父上がリーティアを変えたのか。
何気に父上、私の知らない所で凄い事やってたのね…。
次々に驚く事実を聞き過ぎて頭がパンクしそうになりそうになったとこで、前日から意識がなかったカールがようやく目を覚ましてきた。
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