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61話 全ては手の平の上

普段の姿に戻ったリーティアが、何事もなかったかのように接してくる。


顔に合った青紫色の蛇のタトゥーも消えていた。


「それではスノー様、チビ雪さん。ホテルに帰りましょうか」


ディメンション・ボックスを開き、抜け殻となったラマニの体を収納すると、カールを抱えて帰ろうとする。


「いやいやいやいや、ちょっと待ってリーティア! いえ、リーティア様!」


「スノー様、私に敬語は不要ですよ。むしろ私の主はスノー様ですし」


そうは言っても、あんなのを見せられて今まで通り接するなんて出来ない。


こっちの心情を察したのか


「スノー様、色々聞きたい事があるのでしょうが、それはホテルに戻ってからにしましょう」


「え、ええ。そうね、分かったわ」


とりあえずリーティアの事は後にするとして、ホテルに戻る事になった。


ボドゲカフェの事は、大天使ツカサエルに連絡し後片付けをお願いしておく事にする。





――――




ここはユトグアのカジノにある地下室、実はそこがユトグアにある漆黒の剣のアジトになっていた。


漆黒の剣のボスが逗留するアジトに、ある包みが送られてきた。


「ボス、我々のアジトに何やら送られて来たのですが」


「中を開けろ」


「し、しかし…」


「命令だ。開けろ」


部下に命令して、謎の包みを開けさせる。部下は罠かもしれないと、開けるのに慎重だ。


「こ、これは!?」


包みを開けると、そこには自分の鞭で縛られた抜け殻のラマニが入っていた。


息はしているが、最早白目を剥いて完全に動く屍となっている。


「ボス! ラマニが中から!」


「見れば分かるわ。相手をオモチャにするはずが、自分がオモチャにされて帰って来るとは。正に滑稽だな」


漆黒の剣のボスは傍らにいるペットの頭を撫でると、片手を顎に置いて少し考え始める。


「これは我々への宣戦布告です。ここはスノー一味を一網打尽にしてやるべきかと」


部下の一人が熱くなって進言すると、他の者達もそうすべきだと訴え始める。


だがボスは撤退を指示した。


「ラマニをここまで出来る奴がいるとなれば、こちらもタダでは済まん。それに、奴らにここのアジトが割れている」


「し、しかしボス!」


「命令だ。ユトグアのアジトを放棄する。しばらくスノー達から手を引くぞ」


そう命令したボスは、腰に装備した二つの大きな銃のうち一つを取り出して構えた。


ニヤリと笑うと、ラマニの頭に一発撃ち込みトドメを刺す。


「いずれ必ず葬ってやる。スノー!」


漆黒の剣のボスは怒りとも楽しさとも見える笑いを浮かべ、その場から立ち去っていった。




――――




ラマニ達との戦いを終えてからホテル、インテリアル・パレスに到着したスノー達は、一旦ホテルの部屋に戻り休息を取っていた。


「ただいま帰りました。スノー様」


ラマニ達と戦った次の日の早朝、まだ少し薄暗い時間にリーティアはホテルに戻ってきた。


リーティアはホテルに着いた途端、一人どこかへ出掛けていったのだ。


私の方はホテルに戻ってから一睡もできず、シャワーを浴びてから一人でずっと考え込んでいた。


チビ雪は途中で寝てしまい、カールはずっと意識を失ったままだ。


そしてリーティアが帰って来たのは朝になってからだった。


「リーティア! 一体どこに行ってたの! 心配したじゃない! それに一杯聞きたい事あるんだから!」


「申し訳ありません。ちょっと野暮用というやつです」


朝帰りをしたリーティアを問い詰めると、普段通りに飄々と答える。


その時の大きな声で、チビ雪も起きてきた。


「あ、リーティア様。おかえりなさい」


「ああもう…チビ雪さんまで、私に敬語はやめてください」


昨日のあんな光景を見たら、誰だってそうなる。というか、まさか悪魔族の王と言われる魔王グリテアと争った程の大悪魔だったなんて。


こっちが頭の整理が付いていないのを察したリーティアが、分かった分かったといった表情で、三人分のコーヒーを淹れて椅子に座った。


「そしたら、何から話せばいいでしょうか?」


「そうね、あなたが何故、私の下に入ったのかを聞いてもいいかしら? どう考えても、私みたいな小娘に仕えるような存在じゃないわよね」


「うーん、困りましたね。私はただ単に興味本位で」


「リーティア!」


思わずテーブルをバン! と叩いて、大声を上げてしまった。横でチビ雪がビクッとなっている。


「はあ、分かりました。素直に話します」


リーティア程の大悪魔が、単に興味本位で付いてくるとは思えない。


「実は、口止めされてたんですけどね。魔王クライドより、あなたを見守って欲しいと頼まれていたんです」


「え!? 魔王クライドから!?」


予想もしてなかった答えが返ってきた。そもそも二人は知り合いだったのか。


ここでチビ雪が話し出す。


「あの実は私、学校の授業で習った事があります。かつて魔界が三つの勢力に分断されていた時、魔王クライド様、魔王グリテア様、そして大悪魔リーティア様の三人で覇権を争っていたって」


「チビ雪さん流石ですね。でも、さっきも言いましたけど、私の事は呼び捨てで構いません。

それで話しを戻すと、まあ五百年以上も前の話しですけど。つまりクライドとは、腐れ縁という奴ですね!」


チビ雪が魔導士学校で習ってたのなら、何でリーティアの正体に気付かなかったんだろ。


「まさかチビ雪ちゃん、知ってて黙ってた訳じゃないよね?」


「違いますよ! 大悪魔リーティア様…リーティアは、途中で行方不明になって忽然と歴史の表舞台から消えてしまうんです!

まさか目の前にいたのが歴史上に登場する、あの青紫蛇ヴィオレット・シュランゲの大悪魔リーティアだなんて思いませんよ! 名前が同じぐらいだなーとしか!」


もの凄く慌てて言い返してくるチビ雪。


「スノー様、チビ雪さんを責めては可哀想ですよ。こんなアニメオタクの悪魔が、あの歴史上の大悪魔だとは誰も思いもしませんよ!」


当のリーティアは笑い話でもするように、手で口元を隠しながら薄ら笑いをしながら話す。


全然笑えないし、聞けば聞くほどリーティアが私の元にいるのが有り得ない存在だと思わされる。


さらに軽く笑いながらリーティアは続けた。


「でも興味本位だったのも本当ですよ。スノー様…魔王小雪様がどれ程のものなのか。異世界の人間とのハーフ魔族のあなたが、この魔界でどこまでやっていけるのか興味が湧いたんです。その上で私はあなたを試しました」


「試す?」


「ええ。首狩り騎士事件、覚えてますよね?」


リーティアが満面の笑みを浮かべる。


最初は意味が分からなかったけど、徐々にあの依頼がリーティアが裏で糸を引いていた事に気付く。


「じゃあ何!? あれはリーティアがローエンに私の事を教えたの!?」


「ええ、そうですよ。あの程度の小物相手にやられるようじゃ、どのみち魔界を巡る旅など出来ませんし」


まさか、ヴィントナーにいた時から私はずっとリーティアの掌の上だったのか。


「我は小物…」


統魔の指輪からスキアーが少し出て来て、自分が小物と言われた事に少し傷付いているようだ。


「あ、言葉足らずでしたね。小物と言ったのはローエン親子の事ですよ。スキアーさんを救う為にも、誰かがやらなければいけなかったので」


とどのつまり、あの首狩り騎士事件はリーティアなりの試験だったという訳だ。


でも、まだ分からない事がある。


「あなた、前に戦闘は役に立たないって言ってたわよね。あれって大噓だったのね」


どう考えても、この中で一番強いのは間違いない。チビ雪も横で大きく頷いている。


「あれは嘘ではありません。私は自ら力を封印したので、普段の力はスノー様やチビ雪様よりも弱いですよ」


「自分で力を封印したって、どういう事なの?」


「疲れてしまったんですよ。どこに行っても大悪魔リーティア様と崇められ恐れられ、強大な力があるが故に、面倒事にも巻き込まれてしまう。だから私は、自分の主の許可なく力を出せないように制限を掛けたんです」


少し昔を懐かしむように、リーティアは肩ひじを付いて窓の外を見ながら話を続ける。


「そもそも私は自由気ままに生きるのが好きなんです。魔界の覇権を争ったのも、自分が生きやすい世界にしてやろうと思っただけで。

だから私には、クライドやグリテアのように従える勢力など持ってませんでした。誰かの上に立つと面倒じゃないですか、関係性とか上下関係とか色々と。だから私には魔王の肩書はありません」


リーティアが少し溜め息をついてコーヒーを啜る。


「もしかして、リーティアが歴史の表舞台から姿を消したのって、単にめんどくさくなったからなの!?」


「はい。正解です、チビ雪さん。自分が生きやすい魔界にしてやろうと思ったら、どんどん生き辛い世の中になっていったので。変に有名になると困ったものです」


いやいや、気まぐれで父上を支援した魔王クライドもそうだったけど、アンタもアンタで何て軽いノリで…。


でもその気持ちは、少し分からなくもない。何故なら私もガーデン・マノスで魔王に戴冠してからは、正にそんな生活に少しウンザリしていたから。


「ところで主の許可なしに力を開放できないって言ってたけど、それってあなたの主が私ってこと?」


「そうですよ。悪魔の契約書にサインしたではないですか。あれは私の主になる契約書です」


「でも私あの時『スノー』って偽名で書いてるよ? それでも有効なの?」


「本人直筆のサインなら、偽名であっても勝手に本名に書き変わるんですよ。ウフフフ」


リーティアが取り出した悪魔の契約書をよく見せてもらうと、確かにサインの欄が『小雪』と書き変わっていた。悪魔の契約書って恐ろしい…。


「私があなたの主って、何か変な感じ。かつて魔界の覇権を争った程の大悪魔なのに」


「いいんですよ、私はもう魔界の覇権になど微塵も興味はありません。それよりも楽しいものを沢山知りましたし」


「例えばなに?」


「漫画やアニメですよ!!」


普段は気怠そうにしているリーティアが、漫画やアニメの事になると目を見開いてテンションが高くなる。


さらに右手を突き上げて力強く語り出した。


「あんなに面白いものが、この世にあったなんて! それを知らなかった分際で、何が魔界の覇権か! 何が大悪魔リーティアか! 日本の漫画やアニメに比べたら、そんな物は有象無象のチンケな存在なのですよ!! この気持ち、分かりますかスノー様!!」


「う、うん。分かった! リーティアもう分かったから!」


見た事もないテンションになって話し出すリーティアを落ち着かせ、話しはまだ続いた。


「なら今後はあなたに任せれば、何かあっても楽になるわね。よろしく頼むわよ」


「あ、それは無理ですよ。力を開放できるのは一日一回まで、それも五分間の時間制限付きです」


「…………嘘よね?」


「本当です。契約に誓って」


「あなた、何でそんな煩わしい制限付けちゃってるの!? 意味わかんないんだけど!?」


「私はもう大悪魔リーティアではなく、ただの女魔族リーティアとして生きたいんです。自分の好きな事に没頭できれば、それで十分なんですよ!」


リーティアが右の拳を力強く握り、ガッツポーズをする。一回力を開放してからキャラが変わってきたのか、こいつは。


だけど、そこはもう仕方ないと諦める事にして、ルームサービスを頼んで一旦食事にする事にした。

最後までお読みいただきありがとうございます!


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