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57話 宣戦布告

スノーからの挑発を受けて、レストランの店主はラマニのいるビルにある地下街に訪れていた。


レストランであった出来事を報告するためだ。


「ラマニ様!」


「うん? 君はオードルじゃないか。どうしたんだい?」


ラマニは地下街にあるボードゲームカフェを貸し切り、部下達と一緒に遊んでいる。


漆黒の剣のメンバーではあるが、見た目通りに子供っぽいところもあり、よくゲームができる施設に入り浸って遊んでいる事が多い。


ラマニの付き添いの部下達が、訪れたオードルに一斉に目を向けた。


オードルは緊張した面持ちで話し始める。


「実はスノーが俺の店に現れたんです! 奴は俺の仲間をボコボコにして、そして…」


「そして…なんだい?」


「いやその、スノーはラマニ様に伝えとけと言っていた事があって」


オードルの歯切れの悪さに、ラマニが痺れを切らす。


「ハッキリ言えよ。僕は焦らされるのが嫌いなんだ」


「は、はい! 『私は逃げも隠れもしない。カジノで姑息な事しかできないお坊ちゃんは、ママのミルクでも飲んで寝てなさい』、奴はそう伝えろと…」


「…………」


スノーからの伝言を受けたラマニは、黙ったまま天を仰いだ。少しして片手を両目に置いて、何かを考えているような素振りをする。


「そうか、オードル。君はよくやったよ」


天を仰いでいたラマニが顔を落とし、ようやく一言呟いた。


そして立ち上がってオードルに近付いていく。


「はい、ありがとうございます。しかし我々に喧嘩を売るなど、スノーも間抜けな奴です!」


「ああ、そうだね。それじゃあ、お疲れさん」


ラマニが指を鳴らすと、部下二人がオードルをうつ伏せに倒して抑え付けた。


「な、何をするんです!?」


「君は何か勘違いしているけど、ただスノーにやられた挙句、さらに僕を侮辱したんだ」


「ぶ、侮辱したのはスノーで俺は」


「君がドジ踏まなかったら僕は侮辱されずに済んだ。つまり君も侮辱に加担したという事だよ」


するとラマニは懐から、呪法の印の入ったを取り出した。


「ら、ラマニ様!? それだけは!?」


「うるさい! 君も僕のオモチャにしてあるげるよ!」


ラマニが印の刻まれた璽をオードルの首筋に押し当てた。


「や、やめ! ぎゃあああ!!」


オードルが絶叫し抵抗をするが、完全に抑え付けられて身動きが取れない。


約十秒ほど璽を押し当てラマニは立ち上がり、オードルを抑え付けていた部下達も一緒に立ち会がる。


そして鞭を持つと一振り、倒れているオードルの背中を打ち命令する。


「さあオードル君、宿主の声に応えよ。これで僕の新しいオモチだ。早速君にも働いてもらうよ」


「はい…ラマニ様…」


首に印を押されたオードルは正気を失い、目は死人のように覇気がなくなっていた。完全にラマニの命令通りに動く人形と化す。


「絶対に…絶対に許さないよスノー! この僕をコケにしたんだ! この屈辱を何倍にもして返してやるよ!」


ラマニは鞭を力強く握り、左右に思いっきり引っ張って怒りを露わにする。


「おい! スノーの潜伏している場所を探し出せ! ちょっとした暇潰しのつもりだったが、もう容赦しないぜ!」


最初は、またスノー達が出没した時に適当に相手すればいいと考えていた。


だが本気になったラマニは、部下にスノーの居場所を探させる命令を下す。


「その必要はないわよ。お坊ちゃん」


「ん? 誰だ!」


突然ボドゲカフェに広がった女性の声。直後にカフェの入り口からスノーが入ってきた。


「オードルの奴め、後を付けられていたな」


入り口からスノー達、四人が入って来て、ラマニが苛立った表情を見せる。


「あなたがラマニね。初めまして、お坊ちゃん」


「クククク、君が僕を侮辱した愚かな小娘か! おかげで探す手間が省けたよ!」


ラマニは目を細め、手に持つ鞭をギリリと力強く握り締めた。


見た目は小さな子供の姿をした獣人族のラマニ。大天使ツカサエルからの情報では、ラマニはテイマーだと聞いているが。


「リーティア、何か罠は仕掛けられてる?」


「いいえ、少なくとも私の探知呪文では反応無しです」


「ここまで見張りも無し、罠もないって余程自身があるのでしょうか」


三人でコソコソと話していたら、カールが大声を出してラマニに向かって話し始める。


「おまえ、カジノで俺に酒を奢った奴だよな? あの時、本当は俺を監視していたのか?」


「ん? ああ、君はカジノで勝ちまくっていた男か。あれは僕の気まぐれだよ」


「気まぐれだと?」


「クククク、そうさ! 気まぐれさ!」


カールの問いに対して、ラマニは茶を濁すように答える。何か企んでいるのか。


「カール、お喋りはそこまでにして」


「ああ、分かってるよ姉御」


カールを静止していると、ラマニが部下五人に命令を出した。


「貴様ら! 奴らを殺せ! 僕を侮辱した奴らを決して生かして帰すな!」


ラマニの命令を受けた部下達が、一斉に襲い掛かってくる。


「スキアー!」


いつもの様に影に擬態させているスキアーが、足元から触手を伸ばして五人の敵を攻撃する。


「なんだこいつは!?」


「怯むな、冷静に対処しろ」


だがヌフールの部下の時と違い、この五人はよく訓練されているようだ。


スキアーの攻撃を上手く回避し、手でガードしている。


だけど時間稼ぎにはなった。


「くらえ! チェーン・ライトニング!」


スキアーの攻撃に気を取られていた五人に、詠唱をしていたチビ雪の呪文が放たれた。


「「「「ぎゃあああ!!」」」」


チビ雪の雷系呪文が四人に直撃、一人がそれを辛うじて回避した。


「くそ!」


「残念、これで終わりよ」


「な!?」


最後に残った一人は、私が即座に背後に回り剣で攻撃した。


「ぐあああ!!」


背中を斬り、敵はそのまま倒れ込む。致命傷は避けたけど、剣の柄で倒れた敵の後頭部を殴り完全に気絶させた。


「これでアンタと、レストランの店主の二人だけになったわね」


「さすが姉御とチビ雪ちゃんだ! 二人がいれば怖いもの無しだな!」


「カール、ちょっとうるさい」


私がツッコもうと思ったら、珍しくチビ雪が先にツッコんだ。これにはカールも両手で口を押えて黙る。


しかしラマニは一切の動揺が見られない。それどころか未だに薄ら笑いをしている。


そのラマニの様子に、警戒心がより強くなる。


(そもそも、こいつはテイマーって聞いてる。今のところテイマーらしい所はないんだけど)


単に部下に命令しただけで、特にそれ以上何もしないラマニにも強い違和感を覚えていた。

最後までお読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんで頂けたら、ブックマークや評価をして頂けると嬉しいです。


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