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56話 囮

私は今、一人でとある飲食店で夕食を食べている。もちろん一人で外食というのは初めての事だ。


だけど、これには理由がある。


「ご馳走様、お金ここに置いておくわね」


食事代をテーブルに置き、店を出ようとした時だった。


「お客さん、ちょっとお待ちを」


リーティアの作成した似顔絵を基に、ラマニの潜伏先までは分からなかったものの、ここのレストランに何度も出入りしている事を特定した。


本当は大天使ツカサエルに似顔絵を送って頼もうかとも思ったけど、すでに一度情報を貰ってるのと、その時に知り合いの情報屋が行方不明になったことを聞かされていたので、自分達だけで頑張って突き止めたのだ。


そしてこの店の主人も、連中の息のかかった者だという事は調べが付いていた。


つまり、今やってるのは私自身が囮となって連中と事を起こすこと。ここで騒ぎを起こせばラマニの下へ行く事ができると判断したのだ。


チビ雪が大反対したけどね。でも、自分で言うのも何だけど餌は大きい方が食いつきは絶対に良いはず。


「お金は足りてますよね?」


「そうじゃない。あんたをここから生かして帰す訳にはいかないんでね」


店主の合図と共に、他のテーブルに座っていた客達が一斉に立ち上がって私を取り囲んだ。


客に扮した連中の手先だった訳だ。


「ラマニ様の手を煩わせる事もない。ここで死んでもらう」


だけど、そんな事は分かり切っていた事だった。


「そう、なら私も遠慮なくやらせてもらうわ。スキアー!」


スキアーの名前を叫ぶと、影に擬態したスキアーが何本もの触手を伸ばして取り囲んだ者達へ攻撃を開始する。


「ぐあああ!!」


「ぎあああ!!」


その攻撃に連中は成すすべなく撃退されていき、全く私に近付けない状態になる。


だが気のせいだろうか、以前よりもスキアーの攻撃力が上がってる気がする。


「何をしている! 呪文を使え!」


店主の命令に従い、攻撃呪文を使える奴らが詠唱を始めた。


「そうはさせない。私がただ突っ立ってるだけだと思うな!」


帯刀していたミスリルソードMK-Ⅱを抜き、すぐさま攻撃呪文を放とうとしている連中のところに斬り込んだ。


「ぎゃあ!」


「いてぇぇ!!」


呪文の詠唱で無防備だった所をあっという間に斬られ、痛みと流血でその場に蹲る。


一応、致命傷は避けるには避けたけど、かなりの深手は負わせた。二度と歯向かえないように。


「ば、バカな!? 全滅だと!?」


「さてと、これであなただけね、店主さん」


「く、くそ!」


諦めの悪い店主は、カウンターの下から大きな重火器を取り出した。


レストランのくせに、何て物を隠し持ってるの!


「こいつで木っ端微塵にしてやる!」


ヤケになった店主が、とんでもない化け物銃をこちらに向けて撃とうとしてきたが。


「バカね。こんな狭い店内でだと、こっちが斬り込む方が早いわ」


一瞬で店主の間合いへと入り、化け物銃を真っ二つに切り裂いた。


でも正直これには驚いた。本当は化け物銃を使えない様にと思っての斬撃だったのに、紙を切る様にスパッと斬ってしまった。


「凄い、見た目は全然変わらないのに、本当に激安のミスリルソードと思えないぐらいの切れ味。しかも一切の刃こぼれもしてない」


リーティアが直してくれたミスリルソードは、彼女が言った通り以前よりも強度も切れ味も大幅に強化されてるようだ。


「う、嘘だろ!?」


狼狽える店主の首筋に剣を押し当て、こちらからの要求を突き付けた。


「ラマニに伝えなさい。私は逃げも隠れもしない。カジノで姑息な事しかできないお坊ちゃんは、ママのミルクでも飲んで寝てなさいとね」


「な、何故ラマニ様の事を!?」


「そんな事はどうでもいい」


「く! ふざけるな! 俺がそんな事を伝える訳がないだろ!」


「じゃあ死ね」


「ま、待て!? わ、分かった、伝える! だが後悔する事になる! 必ずな!」


悪党特有の捨て台詞を聞いてから、剣をゆっくりと下ろした。そして鞘に納めて出口へと向かう。


「それじゃあ、ご馳走様! 料理は中々美味しかったわ!」


というのは嘘で、毒がもってある事を警戒して食べるふりして床に全て落とし、スキアーに処理してもらってたんだけどね。


スキアーは体が魔力の集まりだから毒は効かないらしい。


「くそ!」


店主が大きな声をあげて、カウンターを殴った。その様子を見て薄らと笑顔を見せて店を出た。


後は、万が一の時の為にチビ雪たちが待機している場所へと向かうだけ。


「あのスノー様、非常に申し上げにくいのですが」


「ん? スキアーどうしたの?」


「あの料理、実は毒はもってなかったです」


「え!? そうだったの!?」


その瞬間、お腹が鳴った。本当は食べたいのを我慢して、やり過ごしていたのだ。


私を殺そうとしてるなら、何であの店主は毒をもらなかったのか…。


「早くみんなと合流して、ご飯食べましょう…」


何度も鳴るお腹を抑えながら、チビ雪たちが待つ場所へと向かい、レストランを監視できる通りの向かいにある場所で隠れていた仲間たちと合流する。


「スノーお姉さま! ご無事で!」


「ただいまチビ雪ちゃん。あんな奴ら余裕よ!」


「油断は禁物ですよ! 私は見ていてハラハラしちゃって」


チビ雪はよほど気が気じゃなかったのか、珍しく汗びっしょりになっていた。


「でもこれで、奴らを誘き出す事ができると思います」


「そうね。これだけ派手にやったんだもの。動いてくれないと困るわ」


レストランを見張れる場所に潜みながら、全員で店主が動き出すのを待つ。


それから軽食を食べながら、一時間ぐらいした時だった、店主が店から出て来て移動を開始した。恐らく、私が店に現れた事を報告する為だろう。


「尾行なら私に任せてください。皆さんは巣魔火スマホの位置情報を基に、私の少し後を追ってください」


全員で尾行するとバレる危険性があるので、リーティアが変化呪文・イミテーションを使って一人店主の後を付ける。


私達はリーティアを見失わないように、後ろから巣魔火スマホ頼りに後を追った。

最後までお読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんで頂けたら、ブックマークや評価をして頂けると嬉しいです。


よろしくお願いします

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