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53話 迫る危険

『さて、本当に本題に入るよ! 天使スノー、これから話す事をよく聞きなさい。

漆黒の剣を単なる姑息な盗賊団だと思わない方がいい。奴らの全容は私を以てしても中々掴めずにいる。奴らの本部がどこにあるのかも、分からないのが現状だ』


何時になく真剣な顔をして話し始める大天使ツカサエル。元情報屋のネットワークを以てしても、漆黒の剣の情報を掴むのは容易ではないという事だった。


『そして残念だけど、連中があなた達を追っているのはほぼ間違いない。

私の掴んだ情報の中で、ユトグアに逗留している漆黒の剣のボスが、ラマニという部下に天使スノーの抹殺を命じたとの情報がある』


予想はしてたけど、やっぱりもう狙われてるのか。


怖い…とまではいかないけど、ただ面倒だと思ったのは本音だ。そもそも私が魔界の旅に出たのは、何も悪人の成敗でもなければ悪の組織の討伐なんて事でもない。


あくまで私的の旅、私自身の成長のためだ。


なのに、何であんな連中に命を狙われなければいけないのか。私は楽しく旅をしたかっただけなのに。


険しい顔をしながら大天使ツカサエルの映像を見ていた時、一旦映像をリーティアが止めた。


「スノー様、大丈夫ですか?」


私の様子に、リーティアが心配してくれたようだ。


「大丈夫よ。ありがとう」


少し声のトーンが下がったまま答える。すると横にいるチビ雪が励ましてきた。


「スノーお姉さま、いえ小雪様! 私が全力でお守りします! 

それに、逆にこれはチャンスですよ! 漆黒の剣を壊滅させれば、魔王としても大きな成長に繋がると思います!」


「スノー様、私も全力でお守りします。例えこの身に変えても」


「チビ雪ちゃん、スキアー…そうね、そう考えることにする! 

でもスキアー、覚悟を言ってくれたんだと思うけど、『この身に変えても』なんてあんまり言わないでよ!」


「はい、申し訳ありません」


チビ雪とスキアーに励まされて、続きの映像を見始めた。


『ラマニという男は獣人の魔族で、情報ではテイマーという事だ! そして気を付けなよ天使スノー。

あまり怖がらせたくないのだけど、実は私の知り合いの情報屋が一人、こいつの探りを入れて行方不明になった。残念だけど、これ以上の深入りは危険だと思って、さらなる情報を得る事はできなかった』


「そんな事って…私ちょっと悪い事しちゃったわね」


大天使ツカサエルの知り合いが行方不明になってしまったのは、自分の依頼のせいだと責任を感じた。


だが、それに対してリーティアがフォローする。


「そんな事はありません。恐らく大天使ツカサエルも、その知り合いの情報屋も、そういう稼業をしていれば危険は付き物だと分かっているはずです」


確かにそうだけど、中々そういうのって割り切れない性格なんだよな、私って。


『それと天使スノー、君の事だから責を感じているのかもしれないけど、気にしなくていいからね!

私は引退はしているけど例え元であっても、情報屋なんて何時どうなってもおかしくないのだから!』


「ねえ? これってライブ映像じゃないよね?」


「はい、録画ですよ」


本当に全てを見透かしたように、こっちの思考を言い当ててくる。


『それじゃあ天使スノー、お仲間の皆さん、私はこれで失礼するよ!

もし力になって欲しかったら何時でも連絡してよ! 私は何時でも力になってあげるからね! それじゃあ武運を天界から祈ってるよ!』


映像が終わると、また元の紙切れに戻った。


正直まだまだ漆黒の剣についての情報は得られなかったけど、少なくともラマニという獣人が私を狙ってるのが分かっただけでも大きな収穫だ。


しかもユトグアにボスがいるとなれば、何時どこで狙われてもおかしくない。今後は、なるべく目立つ行動は控えた方がいいかもしれない。


「あの、カジノに行ったカールがまだ戻って来てません」


チビ雪が心配そうに言ってきた。そう言えば夜も遅くなってきているのに、カールはまだ戻らない。


「カジノは今からという時間でもありますし、熱くなってまだやっているのかもしれませんね」


「その可能性は高いわね。巣魔火スマホにも出ないし」


カジノでは、通信系の魔道具は全て入り口で預けなければいけない。大天使ツカサエルからの情報がもたらされた今、やっぱりカールの事が心配になる。


「私カジノまで迎えに行って来ます」


「チビ雪ちゃん、待ちなさい。あなた一人じゃ危険よ。私も行くわ」


二人でカジノまで行く準備をする為、立ち上がった時だった。


「二人ともここで待っていてください。私が行って来ます」


リーティアが一人でカジノまで行くと言ってきた。


「あなた一人じゃ危険よ」


「そうだよ! それじゃあ、みんなで行った方が!」


「このパーティーの中で、漆黒の剣と関わってないのは私だけです。つまり私一人の方が動きやすい」


確かにリーティアの言う事は最もだ。それに今は大勢で動く方が返って目立ってしまうか。


「じゃあ、任せてもいいかしら?」


「はい、スノー様。カールをディメンション・ボックスに放り込んで帰ってきます」


「う、うん。一応お手柔らかにね」


カールの事はリーティアに任せて、私とチビ雪はホテルの部屋で再び二人きりとなる。


「お腹空いた…」


チビ雪がボソッと呟いた。確かに大天使ツカサエルの映像を見入ってたから忘れてたけど、まだ夕食を食べてないんだった。


「それなら一階の飲食店に行きましょうか。たまには二人でね!」


「はい! スノーお姉さま!」


「だけど今は、仮面を付けた方が目立ってしまうかも」


「漆黒の剣も仮面を付けた顔で覚えてるでしょうからね。かと言って素顔もマズいですし…それならホテルの中はサングラスでどうでしょう?」


「そうね、そっちの方が目立たないかもしれないね!」


ようやく準備も終え、部屋を出て一階へと下りる。旅に出てから初めてチビ雪と二人での外食となった。





――――





「よっしゃあ! また俺の勝ちだ!」


カールはこの日も絶好調だった。最初はカジノの目を少しでも誤魔化す為、スロットやルーレットでお茶を濁してから、夜になってカードゲームへと移った。


そしてブラックジャックで破竹の二十連勝。大幅なプラスに持って行って、上機嫌になっている。


だが、その様子を大勢の客の影に隠れて見つめる者がいた。


「クククク、ネズミ一匹見つけたよ! 何も知らずにアホ面下げてやがる!」


漆黒の剣のボスから命令を受けたラマニは、カールのいるカジノにいた。ラマニはカールを捕らえるチャンスを伺っている。本命の魔戦士スノーを誘き出すために。

最後までお読みいただきありがとうございます!



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