50話 次の刺客
ブックマークありがとうございます!
とても励みになります!
カジノで勝った後にホテルへと帰ると、バイトを終えたリーティアも帰って来ていた。チビ雪は泣き疲れたのか、すでにベッドの上で夢の中だ。
「おかえりなさい。カジノはどうでしたか?」
「ええ、バッチリ勝ったわ。かなり心臓に悪かったけどね」
勝つには勝ったけど、本当に危なっかしくてハラハラさせられた。だけどカールとしては、決して無謀な勝負ではなかったと言い張る。
「まあ私達の方はいいけど、リーティアはどうだった? 嫌なら辞めてもいいのよ?」
大天使ツカサエルなどと名乗る、気持ち悪い店長の営む天使カフェ。自分で紹介しておいてあれだけど、いくらお金が良くてもリーティアを働かせるのはどうかと思っていた。
「いえ、私は大丈夫ですよ。まだ一日しか働いてませんけど、むしろ楽しい仕事です」
「ホントに?」
「ホントです」
まあリーティアが良いというなら別に構わないけど。
「私このままシャワー浴びるね」
「はい、行ってらっしゃいませ」
「なら俺も一緒に」
「リーティア、そいつをディメンション・ボックスに」
「じょ、冗談だよ!」
何度も冷や汗をかかされたし、さっぱりする為にシャワーを浴びる。
二十分後にシャワー室から出ると、カールもすでに眠ってしまっていた。やはりカジノでの勝負は、カールも相当体力と神経を削ったのかもしれない。
「スノー様も寝ますか?」
「うーん、私はもう少し起きてようかな。ちょっとお腹も空いたしね」
髪の毛を乾かしながら、部屋の窓の側にある椅子に座った。ここからはユトグアの夜景が一望できて、何気にお気に入りの特等席だ。
するとリーティアも対面にある椅子に座り、ディメンション・ボックスから天使カフェで貰ったというお菓子を出してくれた。食べてみると意外にもこれがまた美味しい。
「大天使ツカサエルの手作りだそうですよ」
「そうなの!? こんな美味しいお菓子作れるなんて、ホント見掛けによらないわね」
リーティアは大好きなお酒を飲みながら、私の軽食に付き合ってくれる。
「仕事の後の一杯は堪らなく美味しいですね。この瞬間の為に生きてる様なものです」
「何おっさんみたいな事言ってるの」
私はお酒は飲めないので、水を飲みながらリーティアに付き合う。そこからは特にお互い喋るわけでもなく、夜景を見て貰ったお菓子を食べていた。
五分ほど無言でのんびりしていた時だった、リーティアが漆黒の剣について話しを切り出してきた。
「そう言えばスノー様、ユトグアに来るまでに出くわした漆黒の剣ですが」
「ん? あの盗賊団?」
「ええ、怖がらせるつもりはないのですが、奴ら恐らくスノー様を探してると思います」
まあ、それぐらいの事は覚悟していたけど、何でこのタイミングで話してきたんだろう。
「どうしたの急に。何か気になる事があったの?」
「実はなんですけど…大天使ツカサエルから伝えておくようにと言われて」
「え? 大天使ツカサエルからって何で?」
狼狽える私に、リーティアが補足をしてきた。
「あの、働いている時に私にだけこっそり教えてくれたんですけど。大天使ツカサエルは、元は情報屋をやっていたらしく。今回クエスト村から依頼してきたスノー様の事を少し調べてたみたいで」
あの店長、私が漆黒の剣と揉めてる事を知ってたのか。元とはいえ、かつての情報網は今も健在という事ね。
「ねえ、それならなんだけど。お金を払えば大天使ツカサエルに情報屋として動いてもらう事って可能かな?」
「それは分かりませんけど、明日聞くだけ聞いてみます」
「お願いね」
大天使ツカサエルの意外な正体を知る事になり、驚きつつも上手くいけば、こちらの大きな味方になるかもしれないと考えた。
「後そうだ、大天使ツカサエルはスノー様のスリーサイズの事も」
「ブッ! ちょ!? ちょっと待って!? そんな事まで知ってるの!?」
「冗談です」
「…………リーティア、次また詰まらない冗談を言ったら」
「はい、ごめんなさい!」
リーティアはそのままお酒を豪快に飲み干し、また新しいお酒のボトルを取りに行った。
全く、真剣な顔して笑えない冗談言わないでよ。
一瞬、変な汗をかきながら、大天使ツカサエルの作ったお菓子を食べていた。
――――
ユトグア中心部にある建物の地下。そこに数十人のゴロツキとも言える者達が集まっていた。
「ボス、ユトグア・シーザリオ・カジノに例の女魔戦士と思わしき奴を発見しました」
ここはユトグアにある漆黒の剣のアジト、あれから組織のボスがこのアジトに逗留していた。
「それは本当か? 見間違いではあるまいな?」
「カジノにいた我々の仲間の情報では、仮面の特徴がほぼ一致したと。さらにあの村にいたカールという男も一緒にいたとの情報もあります」
「なるほどな。顔を隠す仮面が返って仇になるとはな。それなら俺自らが久しぶりに出張ってやるか」
ボスの一言に周囲がざわついた。比較的大きな街のユトグアで事を起こすのはマズいと。魔王グリテアに目を付けられたら、今後の活動に支障をきたしかねない。
「ボスが暴れると手が付けられなくなる。ここはボクに任せてもらえないか?」
腰に長い鞭を持った、一見子供にも見える漆黒の剣のメンバー。頭からは獣のような丸い耳、頬からも数本の長い髭が生えている獣人。
その獣人のメンバーがニヤニヤと笑いながら自らボスに進言した。
「ラマニか、ではお前に任せる。スノーという女共々、全員皆殺しにしろ」
「クククク、仰せとあらばそうしますが、楽しめそうならボクのオモチャにしますよ」
ラマニは鞭を手に取ると一振りして床に叩きつけ、長い舌を出して鞭の付け根を舐め始めた。
他のメンバーが若干引く中、ボスは不敵に笑う。
「好きにしろ。だが失敗は許されんぞ」
ボスの命令を受け、鞭使いのラマニは数人の専属の部下を連れて動き出した。
最後までお読みいただきありがとうございます!
少しでも楽しんで頂けたら、ブックマークや評価をして頂けると嬉しいです。
よろしくお願いします




