47話 仕事探し
次の日の朝、ホテルのルームサービスを頼んで四人で朝食を食べていた時だった。
「あ、この仕事いいかも」
巣魔火を片手に路銀を稼ぐための仕事を探していた。何度も行儀が悪いとチビ雪に注意されながらクエスト村を覗いていたら、何となく良さげなクエストを発見したのだ。
「スノーお姉さま、また危険な事に首を突っ込むのはダメですよ」
「またって何よ。少なくともカールの村の件はこいつのせいでしょ」
「おいおい姉御! そりゃねーよ!」
「ところで、どんなお仕事なんですか?」
リーティアが仕事の内容を聞いてきたので、巣魔火の画面を見せて教えた。
そこは今ユトグアで流行っているカフェのバイト募集だった。
「あの、いくら何でもスノーお姉さまは一応魔王ですし、流石にカフェでのバイトは…」
チビ雪が渋い顔をする。だけど、それぐらい分かっている。誰も私がやるとは言っていないのだ。
「チビ雪ちゃん、募集条項の、ここの文言を読んでみなさい」
「えっと…『天使になりたい悪魔さん大募集!!』って…何ですか! これは!」
「これは今流行りの、天使カフェですね」
「そんなカフェがあるのか! 俺も行ってみたいぜ!」
天使と言えば天界、天界と言えば魔界の対になる世界と言っても過言ではない。当然昔の魔族であれば、天使なんて憎悪の対象でしかなかったのだが。
日本人が魔界に「萌え」という文化を広めた事で、一気に魔族の見る目が変わってしまった。魔族が有り得ない天使の格好をする、謂わばギャップ萌えというものが流行っている。
そして今回は悪魔限定の募集だ、つまり。
「もしかしてリーティアにやれと言っているんですか!?」
「チビ雪ちゃん、正解!」
「何を考えているんですか!」
「だって報酬も日払いで、勤務時間も六時間で二万ミラも貰えるんだよ? 危なくもないし良いと思うんだけどな」
私とチビ雪との間で、押し問答が続いていた。それを見ていたカールが珍しく正論を言ってきた。
「やるかやらないかは、本人が決める事じゃないのか?」
「…………う、うん。その通りね」
「リーティアは絶対反対ですよね? 悪魔がましてや天使の格好をするなんて、永遠の屈辱と言っても過言ではないはずです」
「ほらチビ雪ちゃん。変に熱くならないの」
外野が騒いでいるが、その間ずっと黙ったままのリーティア。やっぱり気乗りしないかと思って、この話しを終わらせようとした。
「ほら、やっぱり嫌なんですよ!」
「チビ雪ちゃんは何か天使に恨みでもあるの?」
「そ、そういう訳では。天使なんて見た事もないですし」
「じゃあなん…」
「やります」
突然の一言に、三人で一斉にリーティアの方を見た。すると何やらモジモジと恥ずかしそうにしている。
もしかして本当はやりたかったけど、中々言い出せずにいただけ?
「カ、カフェで働くの、ちょっと夢だったんです。あと…コスプレって言うんですか。あれにも興味がありますし」
顔を真っ赤にして全員と目を逸らしながら話すリーティアだが、それを聞いて大事なことを思い出した。
そう、この悪魔は超が付く程のオタクだった。父上が生きていたら、速攻で意気投合してただろうなぁ。
とりあえず本人がやると言ったので、早速クエスト村を介してバイト募集に応募した。早ければ明日か明後日ぐらいには決まると見込んでいる。
「これが決まれば、しばらくユトグアでのんびり出来るわね!」
「でもリーティアだけ働かせて、私達は好きにしてるというのも」
「チビ雪さん、私の事は気にしないでください。私は契約に従っているだけで、スノー様の命令は絶対ですから」
そんな風に言われると、何か私が嫌な上司みたいじゃない。
「まあ悪魔の契約なんて無くても、私はやると言っていましたけどね」
その上でリーティアは、私達は自由に過ごしてていいと言う。
「私とチビ雪ちゃんは大変な夜を過ごしたんだし、ここに居る間ぐらいいいじゃない」
「それって俺のせいって言いたいのか!」
誰もそう言ってないのに、本当イチイチうるさい奴だ!
何とか天使カフェでのバイトの話しも一旦終わり、朝食も済んで少し部屋でゆっくりと寛ぐ。
と、ここでもう一つ大事な話しがあった。ガーデン・マノスを出てからというもの、すでに二度も戦いを経験する事になった。
平和になった魔界と言われていても、それは以前の魔界に比べたらの話しなのだと痛感した。
もちろん魔界大革命以前の魔界は知らないんだけどね!
だけど旅を続ける以上、戦う為の戦力というのは必要だった。
「ところでなんだけどさ、アンタって何か戦う術はあるの?」
「ん、俺か? いや、俺はただのしがない一般魔族だからなー」
「つまり役立たずって事?」
「そんな言い方ないだろ! 俺だってやれば出来るはずさ!」
「何ができるの?」
「そうだな、指先から炎を出せるぞ! ほら、こんな具合に!」
カールは自慢気に右手の人差し指を上に突き立て、指の先端から小さな炎を出した。物凄い初歩的な呪文を使う事で、生活に役立てる事ができる。魔族であれば誰でも出来る芸当だ。
私はそれすら出来ないから、あんまり偉そうなこと言えないけど。
少なくとも戦いでは役に立たない事が判明した。雑用係として以外には、ライターぐらいにしかならないという訳だ。それならチビ雪とリーティアがいれば事足りる。
「カール、短い間だったけど」
「お、おい! 何神妙な顔してクビにしようとしてんだ!」
「だってあなた、ただのごく潰しじゃない」
「あのスノーお姉さま、そこまでハッキリ言うのはちょっと酷いのでは…」
「じゃあチビ雪ちゃんは、どう思ってるの?」
「ええっと…それは…」
「おい! チビ雪ちゃんまで! 繊細な俺は泣いちゃうぞ!?」
ワナワナと震えながらカールが何やら頭を捻らせているようだ。すると何かが閃いたのか、顔をグッと上げて喋り出す。
「なら俺はカジノで頑張って来るよ! 一番の稼ぎ頭になればパーティに置いてくれるかい?」
こいつはいきなり何を言い出すのだ。確かに大きな街にはカジノはあるんだけど、基本は胴元が儲かる様になっているのが基本だ。それで儲けるなどという戯言を。
「あなたね…」
私が呆れてカールに詰め寄ろうとした時だった。リーティアが意外な事を口走る。
「スノー様、一度カジノに行かせてからでも遅くないのでは? 恐らくですが、カールさんはカジノに向いてると思いますよ」
「え?」
リーティアの言葉に驚きながら、カールが天使を見るかのような目でリーティアを見ているけど。
「もしダメだったら、私が悪魔の契約に従い…ウフフふふふ」
一瞬でカールが悪魔を見るような目でリーティアを見つめ直していた。
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